04-07 磯野がね、なんかおかしい
「磯野さん、もう一度書き込もうとしたら、また同じことが起こりませんか?」
ちばちゃんから興味
俺はうなずき、ボールペンを持つ。
柳井さんと千代田怜も注目してくる。
霧島榛名は、相変わらずパソコン画面をのぞき込みながら、キーボードとマウスをせわしなく操作していた。FPSでもやっているのか? いや、それより――
「そんなに注目されたら書きづらいだろ」
「なんでもいいからさっさと書きなよ。あかさたな、とかでいいから」
「そうだな。とにかく書いてみろ」
あかさたなって……。
投げやりな二人の指示に、俺はしかたなく思いつくままにペンを走らせた。
――あいうえお
なにも起こらない。
正確に
つまり紙に書くと文字が書き記されるという、原因と結果、いわゆるアリストテレスの
「変ですね。さっきはバッて感じですごかったのに」
ちばちゃんはバッという表現が気に入ったらしい。このあえて
……まあ、超常現象なんてそう何度も起こったらたまらんわな。
そんなことを思いながらも、この数日、俺の身に降りかかっている数々の理解不可能な現象を思い出して、どうしようもないため息が出た。
二人は、特にちばちゃんに対して、なんと声かければいいか
と、部室のドアがひらく。
「お疲れです。あれ? みんなでなにやってるんですか?」
竹内千尋は、
「あ、竹内さん、こんにちはー」
「磯野がね、なんかおかしい」
「怜、おまえ、もっとほかに言いようがあるだろ」
「じゃあ、磯野がおかしい」
「あのなあ」
「磯野に超常現象が起こったらしい」
柳井さんのなんとも
柳井さんの言葉を聞いた竹内千尋は、
「
「今回のはちばちゃんも目撃してるからな、本物だ」
「すごかったですよ! 磯野さんが書き込もうとしたら文字が浮かび上がって!」
ちばちゃんはそう言いながら大げさにうんうんうなずいて、ことの
「へーそうなんだ! ところでみんなお昼食べた? まだなら
盛り上がるちばちゃんに対して、
ちばちゃんを見ると、
こいつはまったくの
本人的にはただマイペースなだけなんだろうが、たまにクリティカルヒットを繰り出してくる。だが、そう言われるとたしかに腹が減ったな。
「千尋! あんたちょっとは気を遣うってことをしなさいよ!」
「え、怜どうしたの急に」
思いっきりの
三人の様子に、柳井さんもさすがに苦笑いを浮かべながら、
「いったん昼にして食べ終わってからまたいろいろ
「あー……わたしはいい。相手のスポッターが
ゲームの話かよ。
「みんな、学食行っちゃうんですか?」
ちばちゃんは弁当箱を持って、さびしそうにみんなを見まわした。
「ちばちゃんまだ食べかけなんでしょ? お弁当持っていっしょに学食行こう?」
怜にそう言われたちばちゃんは、パッと笑顔になった。なんだこの天使。俺は二次元の世界に生きているのか。
「榛名、あんたもほどほどにしなさいよ」
そう言って怜は立ちあがると、それが合図になってほかのみんなも腰をあげた。
榛名はキーボードを離した左手を振り、俺たちを見送った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます