04-03 全くもって些細な問題だな
昨日のモスバーガー代がチャラどころか、二千円もお釣りがくるぞ。いや、あれは映研世界だからこっちじゃ関係な……それにしたって三千円か。……三千円だぞ! ……いやいや、なに考えてるんだ磯野。たかが三千円のために人間としての
しかし、
……いやまて、女子大生の
とか考えながらも、気がついてみると俺は榛名の右足の親指に、腰をかがめながら鼻を近づけようとしていた。
と、そこへ、バタンとドアのひらく音が。
「おまえら……なに……やってんだ?」
できることなら振りかえりたくない声のほうへ顔を向けると、柳井さんと千代田怜がひらいたドアのまえで固まっていた。
「バッカじゃないの!?」
たしかにドアをあけたら、いまにも女の足の臭いを嗅ごうとして
だがな怜よ、
しかしだ、男ならともかく、
「バッカじゃないの」
千代田怜は、もう一度、吐き捨てるように、言った。
「榛名もいつもそんな格好してるから、臭そうとか言われるんじゃない。少しは身だしなみに気をつけなさいよ」
「なんだよ、千代田も臭いとか言うのか? 臭くないって。ほれ嗅いでみ」
そう言って、榛名は怜に向かって足を
怜は、その足を
「いたい、いたい、いたい」
「千代田、世の中には嗅ぐべき足が臭ければ臭いほど、ご褒美と感じる
と、俺がさっき頭に
「え、ご褒美だったの……? 磯野、なんかごめん」
「いや、ホント違うから。その顔やめてマジで」
怜の冗談だか本気だかわからないリアクションと、俺たち二人のなんとも言えない空気を捨て置いたまま、柳井さんは、すでにパソコンに向かっていた榛名の横から画面をのぞき込んだ。
「榛名、おまえなにやってんだ?」
「チュートリアル進めてるよ」
「そりゃ見ればわかるだろ。なんで俺のアカのままプレイしてる?」
「いまこの瞬間も拡がり続ける銀河系の広大さに比べれば、まったくもって
柳井さんはおもむろにヘッドロック。
「榛名おまえ、なに勝手にダウンロードコンテンツ詰め込めるだけ詰め込んでんだよ。まだバニラでさえ触ったことないのに」
「いたい、いたい、やめて」
こいつらのやり取り見てると、俺の身に起こっている問題が悪い冗談のように思えてしまう。
このなんともいえないのどかな空間は、非常事態であるはずの俺の心に妙な安心感を与えてしまう。
……いかんいかん。こんなところで、のんびりなどしてられんのだ。
この二つの世界の入れ替わりを止めるにはどうすればいい?
昨日の入れ替わりは、やはり、なにかのきっかけや、法則がある気がする。
じゃあ、そのきっかけはなんだろう。
入れ替わりの瞬間の、色の薄い世界のわずかな匂い、感触。あれがヒントなのかもしれない。やはり、あの色の薄い世界に迷い込んだことが関係しているんだろうな。
それなら、八月七日のちばちゃんとの出会いと、あの汚れた大学ノートを見たときの
そういえば、「もう一人の俺」は、事態を
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