04.二つの世界 未だ残る数々の疑問ともう一つの人生の記憶に苛まされる中、礒野は再びオカ研世界へ迷い込んでしまう。
04-01 なんでわざわざ部室までやりに来るんだよ
もう一度、時間を見る。
午後七時三分。
SNSアプリのトーク一覧を表示し映研グループを探すが、どこにも見当たらなかった。その間も、オカ研グループからの通知の赤い数字がどんどん増えていく。
おい、待てよ。いまのいままで現実の世界にいたはずなんだ。
……それが、どうしてこうなる?
もしオカ研世界に切り替わったとしたら、さっきの
いや、待て待て……そんなことが本当にあるのか?
もう一度目を閉じたら、映研グループに戻っていないだろうか。
意識をほかに向けたら、さっきのはただの錯覚だった、なんてことにならないだろうか。
そんな俺の望みもむなしく、スマホの画面には
……もう夢だなんて言ってられないだろうこれは。
世界の切り替わる瞬間が、寝ていたり、
だが、さっきのは違う。
俺の意識が
だとしたら……そうか、夢ではないのなら、このオカ研世界は、
――現実に存在する、もう一つの世界なんじゃないのか?
いままでだったら、ご冗談でしょう? 磯野さん。などと、
――そう、これは現実だ。
だとすれば、俺が見つけ出さなきゃいけないのは、
――元いた世界である映研世界と、いまいるオカ研世界、この二つの世界の
だが、その方法を見つけるにはどうすればいい?
さっきの世界の切り替わる瞬間のあの匂い、あの感じ、あれはやはり
あの色の薄い世界がきっかけとなって、元いた世界とオカ研世界の入れ替わりが起こっているんだとしたら、もう一度あの世界に訪れて「なにか」をしないといけないのかもしれない。だがなにかってなにを? まったく
――あの色の薄い世界にどうやったらたどり着ける?
翌日、八月十日 午前十時半過ぎ。
少年野球をしていたという霧島榛名は、いい
榛名の球をグローブで受け、それなりに
この世界の記憶では、昨年の夏に霧島
それから一年、榛名は俺にとっていいキャッチボール相手になった。おたがい気が向いたら、その日グラウンドを使っている運動部に
それはいい。
なんで朝っぱらから、俺は榛名とキャッチボールしているのか?
入れ替わりがあった翌朝、俺は元の世界に戻れたか気になり早起きをしてしまった。しかし、そこがオカ研世界のままだと
それなら家にいてもしょうがない、ということで大学へと向かい、午前十時には
管理室によると
つまり、そういうことだ。
そして
そもそもなぜ霧島榛名は、俺とキャッチボールをするくらいに暇を持て余しているのに、朝っぱらから部室に来ていたのか。
昨日の千代田伶とのどうでもいいやり取りで、部室のパソコンを使うためらしいというのは明らかになっていたのだが、とりあえず、以下のやり取り。
「よう」
「お、
「おまえこそパソコン使うのに、なんでこんな早く来るんだよ」
「まあねー」
答えにならない返事をしてニヤニヤする霧島榛名。
「気持ち悪いヤツだな」
「昨日、会長がSteamからゲームインストールしてただろ? あれ」
横を見ると
「もうパソコン動いてるだろ。やらなくていいのか?」
「ゲーム
「ふだんどおりだな。だけど、家にもゲーミングPCあるんだろ? なんでわざわざ部室までやりに来るんだよ」
俺の問いに、榛名はフフッと笑いぼそりと一言。
「会長のアカウントでやるのがいいんだよ」
わけがわからん。
まあ学校であえてゲームをするという、そこはかとない
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