03ー02 さっきはすまなかった
いやいや油断するな。ただの
もう一度、ちばちゃんを見る。
正直な感想を言おう。
――最高にかわいい。
ううむ、俺はこの子を誤解しているのか?
俺に降りかかった奇妙な出来事の
しかし、この時間に部室にきた理由はわからないとはいえ、彼女と出くわしたのはただの偶然じゃないのか? さっき俺を見て後ずさったのも、特に深い意味はなかったんじゃないか?
そうだよ。だって、こんなにかわいいじゃん!
ちばちゃんは慌てているのか、受け取った鞄を肩にかけようとしていたが、肩かけがねじれてしまいそれを直すのに
グー。
突然、
ちがう。俺じゃない。
ちばちゃんは顔を真っ赤にして
なんというか……たいへん申し訳ない。
いや、俺はなにも悪いことはしていない。とはいえ、アイドルがトイレに行くのを目撃してしまったような、そんなタブーに踏み込んでしまったような感覚に襲われてしまう。
空気を……そうだ、空気をかえろ磯野。なにか……なにか話題を――
「朝飯……食った?」
おい! なに思いっきりトドメ刺してるんだよ! ダメだろこれ!
何度目になるのだろう、涙に
「いえ……まだ……」
大学の
店までの距離を、一〇分ほどかけて俺とちばちゃんは歩く。会話は無い。気まずい。非常に気まずいのだが、仕方がないとも思う。お腹をならしたちばちゃんきっかけのあの状況から、どうやって会話で盛り上がれというのだ。
二メートルの距離を維持して俺のうしろをついてくるセーラー服の少女。
まだ朝とはいえ、すでに夏の
と、いうわけで、俺たちは
ちばちゃんの前にはモスバーガーのセットに紅茶、俺の前にはモスチーズバーガーにコーラがあった。はたから見れば、ガタイのいい大学生と制服姿の怯えた女子高生が、不器用な感じで向かい合っている図。
それでも大学生と女子高生なんだから、
……そんなことはどうでもいい。
いま
……いや、冷静に考えれば
さりとて、俺が転落から助けたと思っていたその
まあ、彼女のさっきの
とりあえず、飯をおごって
「……気にせず食べてくれ」
俺の言葉にちばちゃんは子リスのようにぶるっと体を
だがこの様子を見ると、やはり彼女はなにかを意図して俺に
「さっきはすまなかった」
俺のあえて言葉
ちばちゃんはひと口食べたあとのハンバーガーを皿に置くと、うつむいて左手で耳もとの髪をかきあげた。困ったときの
少女は、そっとささやくようにつぶやく。
「……いえ、わたしこそ……ありがとうございました」
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