人工知能と暮らす夢を見た

@himatub1

第1話自立型電池駆動ロボット

木漏れ日が私の背中に当たった。

今日の午前は終わりを迎え、じりじりとしたコンクリートが太陽に向かって反射している。

時は21世紀半ば、人類は自立型ロボットを開発し、常用化させた。

商店街を歩いている私は、ロボットが日傘付きのテーブルの中にいる客にコーヒーを淹れているのを見た。

「コーヒーをどうぞ。」

ロボットの中心あたりにあるタブレットが音を出し、それが私たちの耳に伝わる。

それが私たちには人間の言葉と聞こえているが、実際には言葉に聞こえているだけでただの合成音声なのである。

今度はヘリコプターを見た。

現代ではヘリコプターの中に運転手がいるなどという概念は存在せず、ロボットが運転している。

ヘリコプターのプロペラの音はもう無いので、この商店街の中では誰一人ヘリコプターには目を向けない。


本当にいい時代になったのか、と私は思った。

今は仕事という仕事がなくなっているから、皆は普通に毎日遊んでいる。

だらけてても、待っているだけで食事は来る、風呂も沸かしてくれる、テレビ番組を予約してくれる。

兄弟は皆実家に帰ってしまった。

この狭い日本に一人ぼっちになってしまった私は、ひっそりと店に入るのである。


カフェ 俺


洋風のドアをゆっくりと開けて、私は中へ入った。

ふんわりとした温かい空気が肌に伝わり、やっぱりここは人間がやっているのだなと感じた。

カフェの中は横に広い。

上に窓が付いてるので、外のまばゆい光が店内に入っていく。

「こんにちは。」

カフェのオーナーはここを一人でやっている。もう長いこと50年はやっていると言える。跡継ぎはアルバイトにやらせると言っていたが、アルバイトをするなどというはいなかった。

長男に跡継ぎをさせるのは虐待だという新たな法律ができ、皆はアルバイトに跡継ぎをさせるか、もうロボットにしてしまうかのどちらかを選ばざるを得なかった。

だけど実質、答えは一択しかない。


「レモン酒たのむ。」

私はいつもの、などという言葉はとても恥ずかしくて言えない。

だが、私はこの店に入って最初に飲むのはレモン酒だけである。

この店に最初に来てから30年、今更ながら、よく潰れないなぁと思う。

「今は電気の大幅な効率化が出来ているから、この店ももう電動化したら?」

隣の客が言ったが、店主は答えなかった。


数分後、私はレモン酒を少しずつ飲んでいった。

実に美味しい。ほのかに感じる苦味とまろやかな酸味が奥深く際立っている。

継ぎ足して、継ぎ足して、レモン酒を作っている。


古臭いか?それがいいんだ。

今日は家に配給のロボットが来る。

もう、人類は働かなくていい時代になってしまった。


50歳を越えてからは、家にロボットが最低1つは無いといけないらしい。




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