最終話:黒の男爵、誕生

夜の十時前。僕はとある美術館の屋上にいた。

腕時計を見る。あと五秒だ・・四・・三・・二・・一、

時間だ。

十時きっかりに僕の後方で花火が一発上がった。大きな、白い光が僕を照らし出す。

屋上から見下ろした。外で美術館を警備していた警察官達がこちらに気付いて驚きの声を上げている。

赤の男爵は今のうちに潜り込んだだろう。


真田刑事の姿も見えた。僕を見上げて不敵に笑う。

「現れたな」

僕も笑い返した。


ふと思い浮かべる。

学長。赤の男爵。学校の先生達。真田刑事。父や母、田中や友人達。


僕を頼りにしてくれる人達。

僕を愛してくれる人達。

僕を認めてくれる人達。


皆、みんなに感謝をこめて。


赤の男爵が言っていた。

影が実体よりも輝く事があると。


告げる。

前よりも、堂々と、自信を持って。


僕の名を、僕の存在を。


僕はマントを翻した。

「黒の男爵、参上!! 」


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黒の男爵 浅野新 @a_rata

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