第14話

どくん。どくん。

無事、ヘリコプターの内部に乗り込んだ後も、心臓が早鐘のように打っていた。

僕の事をかっこいいと思ってくれる人がいる。

例えそれが敵側の人間でも。

僕の事を認めてくれる人が。

丘から遠く離れた場所でヘリコプターは着陸し、迎えに来ていた車に乗って学校に戻った。

学長室には既に赤の男爵も到着していて、学長と歓談していた。机の脇には盗んだ品物が置いてある。

学長が僕を見て微笑みかけた。

「やあブラック、ご苦労様。今回も文句なし、素晴らしかったよ。これでレッドも安心して活動できるよ」

 僕はシルクハットを脱いだ。

「あ・・・はい・・」

 赤の男爵が僕をじっと見つめる。

「何か、あったのですか? 」


 少しためらったが、僕は学長達に真田刑事とのやり取りを話した。

 男爵は腕組みをし、少し間をおいて口を開いた。

「・・・影武者の存在がばれるのは、時間の問題だと思っていました。例えそうでも、相手を撹乱させられるのは間違いがないから、何も問題はないんですが。・・でもまさか、敢えて君を狙ってくるとは・・・相手もお目が高いですね」

「え? 」

「影が実体よりも輝く事があるって事ですよ」

 どういう事ですか、と聞く暇も与えず男爵は続ける。

「君はこれから堂々と黒の男爵を名乗ればいい。真田刑事の言う通り男爵は二人いるんですよ、赤と、黒と。光も影もない。どちらも主役です。やって頂く事は従来通り私のサポートですが、場合によっては君がメインになる事もあると思います」

 いいですよね学長、と男爵が声をかけると、学長は満面の笑みで頷いた。

「君はもう影ではないから、」

 赤の男爵はそう言うと、自分のシルクハットを脱ぎ、顔面のマスクに手をかけた。

「男爵仲間としてご挨拶しなくてはいけないな」

そうして彼がマスクを外すと、その下に現れた顔は__。


「えっ・・・、生徒会長!? 」

端正な顔、軽やかな物腰。一度見たら忘れるわけがない。

驚いて口をぱくぱくさせている僕に、生徒会長はにっこり笑いかけた。

「改めてよろしく、黒の男爵」



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