「……異世界人が現れた、とな?」

 男は、その大きな体躯を従者の方へ振り向かせながら言った。室内が暗いせいもあって、その表情は窺い知ることができない。向き直られた従者は跪きながら答えた。

「は。貴族艇旭晨に潜入していた密偵によりますと、魔物を使役する黒い女が例の皇子とともに確認されたとか。付近では姉皇女の姿も目撃されております」

「ふっ、揃いも揃って夜会へお出かけか? ……その者には引き続き皇子らの監視を命じておけ。そちには別の命を与える。例の作戦決行だ……ぬかるなよ?」

「御意」

 新たな命を受け、従者は男の執務室を出て行った。一人になったところで、男――竜蹄の将軍はにたりと笑った。顎に手を当て、満足そうに撫で擦りながら独りごちる。

「予言通りだな……あの娘もなかなかどうして役に立つ。だが、全てがお前の思惑通りには行くまいよ? 誰(すい)」

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