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「姉上は、一体どこまで連れて行ったんだ……?」
陛下への報告を終え、真っ先に姉上の私室に向ったオレだったのだが、そこには姉上も咲枝もいなかった。好奇心旺盛な姉上のことだ、きっと色々な場所に咲枝を連れ出し、その反応を楽しんでいるのだろう。と、そう思っていたのだが……。
――バタバタバタッ!
「どうだ?」
「ダメだ、向こうへ回れ!」
(………………?)
兵たちの様子が騒がしい。このような皇族区域の奥深くまで、侵入者でも許したというのだろうか。何があったか尋ねに行こうとしたところで、オレは突如、廊下の曲がり角から現れた影とぶつかってしまった。
「あっ、ごめんなさ……」
現れたのは、なんと咲枝その人だった。しかしその目がオレの姿を認めるや否や、驚愕の色を示した彼女は、そのまま反対側へと逃げようとする。
「っ? 待てっ!」
オレが咄嗟に掴んだ腕はしかし、咲枝によって必死に振り解かれようとしている。もがく咲枝に、オレは必死になって問い詰めた。
「おいっ、どうした?」
「やっ、離して! 最初っからこうするつもりだったクセに……だったら、素直にそう言ってくれればよかったのにっ!」
「? なんの話をしている」
「惚けないで! 紅さんと一緒に、わたしのこと捕まえに来たんでしょ! わたし何もしてないって言ってるのに……何も知らないって言ってるのに!」
「ちょっと待て……一体何故そのようなこと……」
「わかってるんだから! 女王さまに言われて来たんでしょ? わたしのこと、危ない奴だから閉じ込めとけって!」
「! 陛下が、そのようなことを?」
おかしい。オレは咲枝のことをそれほど詳しく説明した訳ではないし、またそれを求められもしなかった。にもかかわらずのこの対応の速さは、まるで彼女がオレの船で何をしたかを知っているかのようだ。
(……侍女の密告に、そこまで含まれていたのか!)
一つの可能性に思い至ったオレは、いまだ暴れる咲枝を見つめ、決心した。
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