3
沐漣が謁見の間を辞して数瞬。今度は紅つきの侍女で、沐漣の船に同船させていた者から、詠花のもとに密告が入った。
「……結晶石を吸い込むだって?」
「は、それに何やら魔物を操っていたとか。あの禍々しい容姿にその力……侍女の一人が、魔界の徒ではないかと申しておりました。何より、その体から聖気を感じられません」
「聖気を持たずに自我を有し、聖を吸い取り魔を引き寄せる……ふん、まるで災殃(さいおう)因果律だね」
玉座の手すりに肘をかけると、その手に顎を乗せ何事かを考える詠花。暫くすると、彼女は兵士の一人を呼び出し、咲枝の処遇についてこう告げた。
「その娘は結晶を喰い尽くす悪魔だよ。すぐにひっ捕らえておいで。ただし首は飛ばすんじゃない。良い使い道を思いついたからね。今は紅が匿ってるんだったか……そうさね、あの子は適当にここへ呼び出しておいで」
「良いのですか? 災殃因果律の保持者であれば、すぐにお討ちになられた方が……」
「ふん、抵抗が酷ければ容赦は要らぬ。船から落とせ」
「御意」
かくして、咲枝の知らないところで、彼女の運命は動き出していたのであった。
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