不磨キラーX

千求 麻也

第1話

 秋風の吹く冷たい倉庫街。ベージュのトレンチコートに身を包んだ男がボストンバッグを大事そうに抱えて歩いている。

 倉庫街の片隅でブルゾンとワークパンツという作業着姿の男と落ち合う。どうやら何かの取引きにやってきたようだ。


「ブツは用意出来たようだな」

 作業着の男はトレンチコートの男が抱えているボストンバッグを開けるように促す。

「かなりの上物だな」

「何でやるつもりだ?」

 作業着の男は上着を少しめくり、内ポケットの中の物をちらりと見せた。

「そんな物で本当に大丈夫なんだろうな?」

「俺、失敗しないんで」

 作業着の男は自信ありげに言ってボストンバッグを受け取り、倉庫街を後にした。


 数日後、トレンチコートの男が再び倉庫街で作業着の男と落ち合った。

「やれたのか?」

 トレンチコートの男が尋ねると、作業着の男がボストンバッグを開けた。その中には数日前とは変り果てた姿のものがあった。

「不磨のブシと言われるこのブツがここまで見事に透き通った削りブシになるとは……」

「俺は失敗しないと言っただろう」

「不磨キラーXか……名刺に謳うだけの事はあるな」

 トレンチコートの男がボストンバッグを受け取ると、不磨キラーXこと小門未知夫は、前を開けたブルゾンを颯爽と翻し、倉庫街を後にした。


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