第10話
しばらくぶりに私の庭に行くと、そこは生きた自然の中に無惨に飲み込まれていた。草が生え、苔むし、虫がいた。私がここへ来なくなってどのくらい経っただろうか。それほど時間が経った訳ではなかったが、もう思い出せないくらいの時間は経ってしまっていた。
巨大な自然の前に人間の存在や思いなど全く無力でしかない。そんな当たり前なことを今目の当たりにし、自分のちっぽけな無力さを改めて思い知らされた。
少女が座っていた椅子が静かにまだそこに置かれていた。私は誰も座っていない、これからもあの少女が座ることのない白い椅子を見つめた。
「私の部屋へ来ないか」
私はあの時言えなかった言葉を口にした。
私は再び生きようとしていた。私は新しい仕事を見つけた。それは今までの仕事とは全く違う仕事だった。だが、私はそれをやる事を決めた。
人生は辛い。あの少女のように過酷ではないかもしれないが、やはり人生は辛い。
「私の部屋へ来ないか」
私はこれからの私の人生の絶望を思った。
ある団地の庭の書斎にて ロッドユール @rod0yuuru
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