第4話 黄緑の瞳と夕暮れが告げた真実
…父さん…母さん…兄さん。いかないでよ。今車乗って空港に向かったら、もう俺独りぼっちになっちゃうから。そうしたら俺悲しいよ。ねぇ、どうして…?お願い。いかないで…!俺を独りにしないで…!
俺は父さん達を止めようと必死に手を伸ばすが、その手は全然届かない。それどころか離れていく。
(嫌だ!いかないで、いかないでよ!)
そんな思いを抱いた直後、俺の体はどんどん冷え、現実へ戻っていくような気配を感じた…。
「あっ…輝神!起きたか。大丈夫か?動けるか?」
(あれっ?さっきのは…夢?)
明日樹の声で目覚めた俺は保健室のベッドにいた。
「うん、大丈夫だ…「何が大丈夫だよ?お前39度近く熱があったんだぞ?!」」
その声の主が、心配そうな声で冷却シートを渡してそう言う。
「…そうなんですか。あれ?祈善院先輩と黒川は?」
「あっ、起きたか輝神君。佑唯は用事、夏博はバイトがあるって帰った。」
「はぁ」
「お前ここまで三人で運ぶの、マジ大変だったんだぞ。」
「あっ…ありがとうございました。」
「どういたしまして。…なぁなぁそれより輝神君、明日樹君。二人のこと下の名前で呼んでも良いか?名字だと堅苦しくて話しにくいんだ。」
「あっ、鍵だけズルい!…俺も良いかな?」
「勿論いいです。」
「俺も好きなように呼んでください」
「じゃあ、朝日と…ユキって呼ぶね!」
「ユキ!…オッケーですよ!」
「俺も大丈夫です。じゃあ先輩方のことも珠凛先輩、鍵夜先輩って呼んでも良いですか?…あと明日樹も…ユキって呼んで良いかな?」
「勿論良いよ!じゃあ朝日、お大事に!」
「「えっ!」」
「悪いな。生徒会の仕事がまだ残ってるからごめんだけど、生徒会室行ってくるな。」
「じゃあ、ユキ。朝日の事よろしく!」
そう言って二人は保健室から出ていった。
「じゃあそろそろ帰るか!…朝日立てるか?」
先輩二人が保健室を出ていってから、ユキと10分位話したあとで聞かれた。
正直、起きてから少し時間を置いてくれて助かった。話しているうちに意識がだいぶハッキリしてきた。
「あぁ。大丈夫だよ、ありがとう。」
と言いつつ立ち上がった時にふらついてしまった。でもユキはそれを見逃さず支えてくれた。
「おっと。もう少し休んでいくか?」
「ううん。大丈夫ありがとう。」
そうして、時々ふらつきつつ、俺はユキと他愛もない話をしつつ帰路に着いた。そんな時
「あのさ…朝日が澄咲執の息子ってホントなの?」
と少し気まずそうに切り出した。
「へっ!?何でそんなこと聞くの?!」
ユキはそういう事は聞いてこないと思っていたから、少しショックで言い方がキツくなってしまう。
「あっ、いやその…!…実は俺、昔一度だけ澄咲さんに会ったことがあって、そのときに貰ったベース結局返せてなくて。だけど今ソレしかベース持ってなくて、軽音楽始めるとは言ったけど、本当に使って良いのか不安だったから。…その…良いですか?」
「…なんだぁ!俺が言うのも何だけど別に良いと思うよ。父さんは多分そのベースを大切に使ってくれると信じてユキにあげたんだと思うし。」
「良かった!…あれ?なんだぁって何?」
「いや…実はユキがミーハーなクラスの人達と同じような野次馬根性で聞いてるのかと思ったからさ。俺父さんも母さんも亡くなってて、知ってると思うけどそんな俺を引き取ってくれたのが今の親父の輝神史明さん…。頼む。この事は内密にして欲しい。」
「そっか…。ゴメンな!結構ディープな事聞いちまって。それと話してくれて、ありがとうな。」
「いやいや、別に良いよ!」
こんな風に話せたことを少し嬉しく思っていると、もう家の近くまで来ていた。
「じゃあ、家この辺だから。送ってくれてありがとう。じゃあ月曜日学校でな。」
「ちょっと待って!」
「?」
「…朝日の話聞けてすげぇ嬉しかった。だから俺も一個秘密を話すよ。」
「…いいのか?」
「ちょっと朝日の話と関係あるから。…誰も知らないRaveの元専属音楽プロデューサー、
そう言ったユキの黄緑の瞳と、夕焼けはすごくキレイで今でも忘れられない位印象的だった。だけど、ユキの瞳と表情はどこか曇っていて、少し寂しい雰囲気を醸し出していた。
Music in Love 星原佐梨奈 @hoshiharasarina123
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