連邦捜査局
★☆★☆★
半円状の大会議室にみちた
ふたりの捜査官からもたらされた情報によって、犯罪組織ラークシャサの詳細があきらかになり、ラーヴァナと名乗る指導者的人物パトリック・ベネットの指示で、インドラジットと称するルイス・フロイドやクンバカルナことオーウェン・ビショップがおこなった複数の殺人や、ミルキーオーシャン・サイバネティックス・テクノロジーズによる電脳麻薬ソーマの開発、同社とディヤーナ・マンディール、および複数の議員や官僚との不透明な金銭の授受までもが
矢継ぎ早に各部署へと捜査方針を指示したベイカー主任捜査官は、自身にむけられたつよい闘志をひめた
「では解散だ、諸君。この醜悪な犯罪組織の全容を白日のもとにさらすため、引きつづき全力で捜査に当たってほしい。発端となった情報をもたらしてくれた我々の仲間たちのためにも」
しずかに共有された戦意に突きうごかされるように、
「さきにいってて。すぐにもどるわ」
「了解です、姉御」
毛のながい大型犬に似た男は、瞳に浮かびかけた色をかくすように、仮想現実から
ふたりだけとなった大会議室で、ニーナのもとまで歩みよったベイカー主任捜査官は、わずかに視線をやわらげると、さきほどのトラヴィスとおなじ色の笑みをうかべる。それにこたえる真夏の夜にさく花にも、普段の
「ロウ上級捜査官。モーリス捜査官……いや、クレアからなにか連絡は?」
「いえ。あれ以来一度も……」
「そうか。バード上級捜査官からも?」
「ありません」
「もう一週間になるか……」
「ええ……」
ベイカー主任捜査官が目をほそめた。
ラークシャサによる一連の犯罪の詳細な情報をニーナのもとへ連名で送信してきた日、ダニエルとクレアは
「クレアから連絡がきたら、私にも教えてほしい」
「ええ。そのときはかならず」
「……ありがとう、ロウ上級捜査官」
これまで決して
現実の世界へと浮出したニーナが
「おかえりなさい、姉御」
「またせたわね。さあ、いきましょうか」
路肩にとまっていた車が走りだす。慢性的な渋滞を
みしらぬ中年の白人男性だ。まったく似ていないにもかかわらず、ダークブラウンの瞳に、なぜか行方不明の同僚の面影をみいだして息をのむ。だがつぎの瞬間、雑踏にまぎれて見失ってしまう。胸のおくがいたんだ。
「どうしてみんな、……いなくなってしまうのかしら」
「え……?」
ひどく無防備な声がでた。自分以上におどろいた表情がトラヴィスにうかび、あわてて顔をそらす。
「ごめん。いまのわすれて」
いったそばから鼻のおくがしびれて、つよく瞼をとじた。不意に手が、やわらかな
「
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