第3話『こういうのも悪くないものよ』
彼女は飲むタイプという事は次に一緒に飲みに行くと、すぐに分かった。
一体そんな彼女を潰した日本酒というものはどういうものなのだろうと想像すると恐ろしく思えた。
「アナタ梅酒とかは? 飲んだことある?」
そう言って彼女はおすすめの飲みやすいお酒を紹介してくれるのだった。
「はい。梅酒のソーダ割り! 意外と飲みやすかったです」
「それならね。梅酒のロックがおすすめ」
「ロックですか……? 割って飲むものを氷だけでそのまま飲んだら僕には一発アウトな様な気がするんですが……」
「馬鹿ね。そりゃそうよ。これこそチビチビ飲むものだもん。氷が解けるのを待って少しずつ飲んでくの」
「ほー。ロックってそういう飲み方だったんすね」
「んー。厳密に言うと全く違うのだけれどもね。あなたぐらい弱い人はそっちの方が長く楽しめるわよ」
どう違うのだろうか、しかしてこういう飲み方いいというのならそうなのだろう。
「なら僕はそれで」
「すいませーん。熱燗と梅酒ロックお願いしまーす」
私の返事を聞くや否や注文してしまった。
この前とは意味が異なる二人だけの酒盛りが始まる。
「んで、先輩が酔うんですね……」
逆にそこそこお酒に強いから飲みすぎちゃうのかな……。
「すみませーん。お冷をいただけますか」
まったく、最初はお酒について教えてくれたのに……。途中から強いの頼むから酔いだすし……。
「いいじゃなーい。こういうのも楽しいものよ」
「まあ確かに、そうですけどね」
今度は僕が先輩にしてもらった様に店員さんが持ってきたお水を渡して
「ほら、先輩。お水ですよ! 飲んでください!」
そんなやりとりを、これからも何度も繰り返すくらいには長い付き合いになるのだけれど。
それはまた、別のお話しで。
『コップを1杯、そんな関係』 @renonn
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