『鍵』

「シェルターにお集まりの皆様に第一に申し上げることは、この扉の向こうに出てはならないという事です」

 白衣の男性はシェルター中に響くように声を張り上げた。自分と同じく逃げ込んできた者たちに主張するように小机に登り、まるで初めて声を上げた貧民の様に震えていた。

「外は危険ですが、この扉が勝手に開く事はありません。この鍵が此処にある限り、安全なのです。ここは地獄の手前にすぎません!」

 男は自分の首に掛かる鍵を見せびらかせて、引きつった笑いを浮かべた。

「皆さんこう考えましょう、我々人類最後の数十人はこれから、自由という概念に鍵を掛ける。するとここが理想郷に見えてくるでしょう? 心の鍵が今、我らに必要なのです」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

小花*小瓶 領家るる @passionista

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ