ざくろの実

地味で目立たないあの子

第1羽

からすはいいなあー、ぱたぱたぱた。


自由に飛んで、黒い虹色の羽を持って、


私も飛びたいなあー、


“彼女の口癖”


そうして彼女は飛び立った。


古い校舎の屋上のフェンスを乗り越え、

カラスのように飛んでった。


もちろん黒い虹色の羽なんて持ってない。


長いまつげと大きな黒い瞳、長く伸ばした黒髪は、少しカラスに似てたけど。


美しいっていうか愚か、そんな人間だった。


彼女は馬鹿だ。大馬鹿。


脳みそが少ない感じ…。


でも、僕はそんな彼女が好きだった。


好きだったんだ。


だから彼女が居なくなったあの日を、いまだに信じられずにいる。


真下に落っこちて潰れた赤い塊は、

どこかから飛んできたカラスで、

だから、どこかに行ってしまった彼女は、

この世界で生きている。


僕は、彼女を探すことにした。




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ざくろの実 地味で目立たないあの子 @oyasumi15q

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