〈か行〉


※解説は間違っている可能性があります。あらかじめ、ご了承ください。


※「ー」は前の文字の母音(例:カーブ→カアブ)として扱っています。




●カーテンコール

 好投したピッチャーやホームランを打ったバッターなどがベンチに戻る時、観客がスタンディングオベーションで迎える事がある。


 その拍手に対し、選手が帽子やヘルメットを脱いで応える事を「カーテンコール」と言う。

(舞台のような幕(カーテン)はないが、カーテンコールと言う)



●カード

 2連戦なり3連戦なり4連戦なり……同じ相手との連戦を「カード」と言う。

(プロ野球でもメジャーリーグでも3連戦が多い)


「4カード連続勝ち越し」「同一カード3連勝」のような言い方をする。3連戦の場合は、2勝すれば勝ち越しで2敗すれば負け越しになる。


 1つ目の3連戦で2勝以上して2つ目の3連戦でも2勝以上すれば、2カード連続の勝ち越しになる。

(反対に、2敗以上が続くと2カード連続の負け越し)


「同一カード」という言い方は、2つの意味で使われる。



「Aチームとの3連戦→Bチームとの3連戦→Cチームとの3連戦」というスケジュールだと、それぞれの3連戦を「同一カード」と言う。


※「Aチームとの3戦目・Bチームとの1戦目・Bチームとの2戦目」の3連戦では「同一カード」にならない。


 Aチームとの3連戦を3連勝したら「同一カード3連勝」「3タテ」「3連戦スイープする」などと言う。3連敗だと「同一カード3連敗」「3タテを喰らう」「3連戦スイープされる」などと言う。



 プロ野球などでは「Aチームとの3連戦①→中略→Aチームとの3連戦②→中略→Aチームとの3連戦③」というように、同じ相手との3連戦を何度も繰り返す。


 3つの3連戦で勝ち越しをした時は「同一カード3連続勝ち越し」「同じ相手に3カード連続勝ち越し」のように言う。



●カーブ

「ピッチャーの利き腕とは反対側」の「斜め下方向~下方向」に曲がる変化球。下に落ちるものは「縦のカーブ」や「ドロップ」とも表現される。


 一般的に、日本の野球少年が最初に覚える変化球はカーブかスライダーである。



●回(=イニング)(INN/Inning)

「ある回の表の開始から裏の終了まで」が1イニングとなり、1回表の開始から9回裏の終了までなら9イニングとなる。


 イニングは「表」「表と裏の間」「裏」「イニングの終わり」と4段階になっており、メジャーリーグ中継だと「TOP」「MID(Middle)」「BOT(Bottom)」「END」のように表示されたりする。


 日本語で「1回」「2回目」と言うと「1度」「2度目」と誤解される可能性もあるため、「1イニング」「2イニング目」と言った方が分かりやすい事もある。


 試合の序盤の事は「浅いイニング」や「若いイニング」と言い、終盤になる事は「イニングが深まる」や「イニングが詰まる」などと言う。



 投球回数の事は「投球イニング(IP/Inning Pitched)」と言ったりするが、投球イニングはアウト3つで1イニング(=1回)。アウト1つなら3分の1イニングで、アウトを1つも取れなかった時は3分の0イニングになる。


「3分の1イニング」は「1/3」や「.1」のように表記する。「0.1=3分の1イニング≒0.333イニング」なので、「0.1=10分の1イニング=0.1イニング」とすると計算が狂ってしまう


 イニングは、アウトを取る毎に「(0.0→)0.1→0.2→1→(1.0→)1.1」と0.1(3分の1)ずつ増える。


 先発投手が6回2アウトで降板したなら、5イニングと3分の2(=5.2)を投げた事になる。


 先発投手が6回いっぱいまで投げたたなら、6イニングちょうど(=6)を投げた事になる。


 先発投手が7回ノーアウトで降板したなら、6イニングと3分の0(=6.0)を投げた事になる。19アウト目を取ろうとして取れなかった形である。


 中継ぎ投手が6回2アウトから登板して7回1アウトまで投げたなら、奪ったアウトは2つなので、投球イニングは3分の2(=0.2)である。


 この例のように、中継ぎ投手がイニングをまたいで登板する事がある。これを「イニング(回)またぎ」「イニング(回)をまたぐ」と言う。先発ピッチャーはイニングをまたぐのが普通なので、イニングをまたいでも「イニングまたぎ」と言わない。



●快音

 いい当たりのヒット(ホームランを含む)を打った時の打球音の事。バットの芯で捉えると「カキーン!」という快音になるが、芯から外れていると鈍い音になる。



●外角

 バッターから遠い方。「外側」や「アウトコース」や「アウトサイド」とも言う。



●外国人枠

 プロ野球では、ベンチ入りメンバーに外国人選手を4人まで登録する事が出来る。ただし、外国人投手4人や外国人野手4人には出来ず、それぞれ最大3人まで。


 特定の条件を満たしていれば、外国人でも外国人枠に縛られないようになる。例えば、日本の学校に通っていてプロになった選手や、プロ野球に長く在籍した選手などがそれに当たる。



●下位打線

 7~9番バッターの事。



●買い手

 トレードなどで他チームの主力選手を獲得する側の球団の事。代わりに、若い選手(時に数人)を放出する事が多い。



●回転数

 投球されたボールの1分間当たりの回転数の事。「実際に何回転したか」ではなく「1分間当たりだと何回転になるか(回転毎分。単位はRPM)」の数字なので、回転速度が速いほど回転数が多くなる。スタットキャストの項目の1つ。


 回転数が多い方がいい球種もあれば、少ない方がいい球種もある。回転数が多い方がいいと言われるのは、フォーシーム(ストレート)・スライダー・カーブなど。


 回転数が多いものだと、フォーシームは2600回転とかになる。スライダー・カーブは2800回転くらい。人によっては、さらに回転数が多いボールを投げる。


 フォーシームの場合、球速が上がるほど回転数も増加する傾向がある。球速の割に回転数が多いと、揚力だか浮力だかがアップして浮き上がるような軌道になる(実際には浮き上がらない。落ち幅が小さいだけ)。


 フォークなどは、回転数が少ない方が変化の幅が大きくなりやすい。回転が多いと揚力のせいで落ちにくくなる。


 ナックルはほとんど回転しないので、回転数が圧倒的に少ない。スロー再生でも何回転しか数えられるレベルで、スタットキャストでは逆に計測不能になったりする。



●開幕投手

 開幕戦の先発ピッチャーの事。エース(もしくはエース級)が務める事が多い。



●外野

 野球のグラウンドにおいて、4つの塁で囲まれているエリア(及びその周辺)の事を「内野」と呼び、その後ろを「外野」と言う。


 ホームベース側から外野を見た時、左から順に「レフト(左翼)」「センター(中堅)」「ライト(右翼)」と言う。


 レフトとセンターの間は「左中間(さちゅうかん)」と言い、センターとライトの間は「右中間(うちゅうかん)」と言う。



●外野手(OF/OutFielder)

 外野を守る選手の事。「外野」とだけ呼ぶことも多い。


・レフト(左翼手):レフトで守備をする。守備番号は7。

・センター(中堅手):センターで守備をする。守備番号は8。

・ライト(右翼手):ライトで守備をする。守備番号は9。



●「外野手出身に名監督なし」

 キャッチャーで三冠王になって名将と知られる野村克也の名言(?)の1つ。


 プロ野球では、外野手出身監督がいい成績を収める機会が少なかった。外野手出身でリーグ優勝を経験した監督はいるが、それでも数は少ない。何度も優勝している人となると、もっと少ない。日本一になった人は数えるほど。


 この中には内野手から外野手に転向した人もいるので、プロ1年目から外野手だった人となると、本当に数えるほどである。


 なお、2リーグ制になった1950年(日本シリーズもこの年から)以降では、外野手出身監督で日本一になったのは2001年の若松勉(ヤクルト)が最初。


※1リーグ時代では、中島治康(初代三冠王)が選手兼任監督として巨人を1943年に優勝させている。また、監督の出場停止処分で3か月ほど監督代行を務めた1949年にも優勝(この時も選手兼任)。


 外野手が名将になれないと言われる理由は、かなり雑な言い方をすると、外野の守備はあまり頭を使わないからである。


 外野は守備の負担が軽いポジションであり、守備が苦手な人やベテランが守る事も多い。守備の負担が軽くなるからか、外野にコンバートする事で打撃が向上する例は割と多い。


 外野手がやる事は、基本的に、打球を捕って送球するだけ。サインプレーが多いピッチャー・キャッチャー・内野手と異なり、やる事がシンプルなので、頭を使う機会も少なくなる。


 監督やコーチがマウンドに行く時も、外野手抜きで作戦会議をする。何と言うか、外野手は蚊帳の外感がある。そのせいか、外野手は「こうなったら、こうする」「こうなった時には、こういう対応をする」という指示を受ける機会も少なくなる。



●外野フライでも1点→犠牲フライ

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884198528/episodes/1177354054884198593



●カウント

「アウトカウント」「ストライクカウント」「ボールカウント」などが存在する。


「アウトカウント」は「何アウトか」を表すもの。


「ストライクカウント」は「何ストライクか」を表すもの。


「ボールカウント」は「何ボールか」または「何ボール・何ストライクか」を表すものである。


「カウント」とだけ言う時は「何ボール・何ストライクか」を指す。


「3ボール・2ストライク」は「フルカウント」と呼ばれる。

 ボールならフォアボールになりストライクなら三振になるカウントなので、ファールがない限り、次の1球で勝負が決する。


 ストライクとボールが同じ事は「並行カウント」と言う。


 ストライクがボールより多い時は「ストライク先行」と言い、ピッチャー有利なカウントになっている。


 ボールの方が多い時は「ボール先行」で、バッターが有利である。

(ただし、フルカウントの時はバッターも追い詰められているので、バッター有利とは言わない事が多い)


 ボール先行の時(フルカウントを除く)は、空振り出来る余裕もあるので、思い切ってバットを振りに行けたりする。甘いボールだけを待つ事も出来る。「バッティングカウント」とも言う。



 初球がボールなら、1ボール・ノーストライクでボールが先行している。バッティングカウント。


 2球目がストライクなら、1ボール・1ストライクで並行カウント。


 3球目もストライクなら、1ボール・2ストライクでストライク先行となる。


 ストライクを取る事を「ストライクを稼ぐ」と言う。


 ボール先行から並行カウントやストライク先行にする事は「カウントを整える」や「カウントを戻す」と言う。



●カウント球

 ストライクカウントを稼げる球種の事。



●隠し球

「ボールをグローブに隠し持っている野手」が「(ピッチャーがボールを持っていると思い込んでいて)塁から離れているランナー」にタッチしてアウトにする事。卑怯な行為と見なされやすいが、プロの世界では勝利が全てだとか違うとか。



●確信歩き

 ホームランだと確信して、ゆっくり歩き出す事。


 ホームランにならずに慌てて走り出た挙句アウトになる事もたまにある。非常にカッコ悪い上にチームに迷惑をかけるので、絶対の確信がないなら走った方がいい。



●学生野球資格回復

 日本の野球界では、プロ入りで学生野球資格が失われ、研修を受ける事で資格が回復する。資格回復すると高校・大学で指導者になる事が出来る。教師になる場合は例外で、研修を受けなくても指導者になれる。


 プロ野球選手は「野球をするプロ」だが、それは「野球を教えるプロ」と同義ではない。指導者になるための研修を受けるのは大事。



●核弾頭

 1番バッターの事。特に、ホームランを打てるタイプの1番バッターの事。



●「かせ」

「かっとばせ」の略。応援の時に「かせ、かせ(かっせー、かっせー)+選手名」のように言う。



●肩が出来る→肩を作る



●型付け

 グローブにポケットの型を付ける事で、ボールはポケットで捕るのが基本。


 どこにポケットを作るかは個人差があり、ポケットを2つ作る事もある。

(状況に応じてポケットを使い分ける)


 ボールでひたすら叩いて型付けをする方法もあるが、型付け用のハンマー(グラブハンマー)を使った方が簡単だと思う。



●固め打ち

 1試合に何本もヒットを打つ事。2本で固め打ちと見なすかは人によって違うが、3本打てば固め打ちと言って問題ないはず。


 2本以上打つ事を、アメリカンな言い方では「マルチヒット」と言う。日本語だと「複数安打」になる。3本以上打つ事を、日本では「猛打賞」と呼んでいる。



●肩を作る

 投球練習をして登板出来る状態にする事。「肩を温める」とも言う。肩を作り終えた状態は「肩が出来る(出来上がる)」や「肩が温まる」と言う。


 中継ぎピッチャーは、投手交代に備えて、ピンチになったら緊急で肩を作り始めたりする。



●勝ち運

 勝ち投手になる運の事。勝ち運がある投手は、結構な失点の割に援護点が多くて勝ち投手になったり、接戦を制して勝ち投手になったりする。



●勝ち越し

 同点あるいはリードの場面で得点を追加する事。そのようにして得た点は「勝ち越し点」と言う。


 ただし、0対0からの得点(その試合の最初の得点)の場合は「先制」と言う。リード時の得点は「追加点」と言う事も多い。ビハインドの状態から得点して相手を上回った時は「逆転」と言う。



●勝ち投手(勝利投手)(W/Winning pitcher)

「この投手のおかげで勝った」と見なされる投手の事。勝ったチームの1人が勝ち投手になる。


「勝ちピッチャー」でも意味は通じると思うが、この言い方はあまりしない。


 先発投手に勝ちが付く事は「先発勝利」と言い、リリーフ(救援投手)に勝ちが付く事は「救援勝利」と言って区別する事がある。



●勝ち投手(勝利投手)の権利

「勝ち投手になる権利」の事。「勝ち投手が得る権利」ではない。


 勝ち投手になるには、所属しているチームが勝たなくてはならない。試合終了まで勝利チームは決まらないため、試合終了まで勝ち投手も決まらない。


 以下、勝ち投手になるための条件。


・条件1

 先発ピッチャーの場合は、最低でも5イニング(=15アウト)を投げる。リリーフピッチャーの場合は、イニングに制限はない。


※雨天コールドなどの場合、先発ピッチャーは5イニング投げなくても勝ち投手になり得る。また、オールスターゲームでも5イニング必要ない。


※コールドなどの例外を除けば、先発ピッチャーは最低でも15球投げないと勝ち投手になれない。リリーフピッチャーは0球での勝利もあり得る。


※ランナーがいる状態で登板し、バッターに対してボールを投げる前に牽制などでランナーをアウトにすれば、投球数は0となる。

(0球勝利は極めて稀。1球勝利であれば割とある)



・条件2

 リードしている時に登板しており、同点や逆転を許さずにチームが勝つ。


※この条件を満たすピッチャーが複数いる事もあるが、そのような場合には、公式記録員が勝ち投手を決定する。


※勝ち投手の権利を持って降板しても、後続のピッチャーが同点や逆転を許すと勝ち投手の権利を失う。


※チームが負けていても、その後で逆転する可能性があるので、登板している間は勝ち投手になる可能性がある。


 詳しくは「勝ち投手と負け投手について」で解説。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884198528/episodes/1177354054886142033



●勝ちパターン

 終盤のリードを守るべく登板する中継ぎ投手の事。中継ぎ陣の中で強いピッチャーが任される。


 通常、勝ちパターンのピッチャーを数人用意する。用意出来ないチームは、中継ぎ陣の補強が急務になる。


 勝ちパターンのピッチャーで繋いで行く事は「勝ちパターンの継投」「勝利の方程式」「必勝リレー」などと呼ばれる。


「7回はピッチャーA、8回はピッチャーB、9回はピッチャーC」のように、特定の1イニングを任せる事が多い。


 これを「7回はピッチャーB、8回はピッチャーC、9回はピッチャーA」とすると、方程式を崩した継投になる。

(これが定着したら「新たな勝利の方程式」が出来上がる)


 リードの点差は3~4点以内が目安で、大きくリードしている時は別のピッチャー(勝ちパターンのピッチャーより1段か2段劣るピッチャー)を使う事が多い。



●勝ち星

 勝利を「勝ち星」や「白星」、負けを「負け星」や「黒星」と表現する。「星を五分に戻す」なら「白星と黒星(勝ちと負け)が同じになる」という意味。


 白星/黒星は、記号では「○/●」を使う。「☆/★」は使わないと思う。


 おそらくは相撲に由来するもので、遅くとも江戸時代には相撲で「○/●」が勝敗を表すのに使われていたらしい。

(「○/●」という書き方が先にあって、それを「白星/黒星」と言うようになった……のかも。逆かも)


 相撲で勝敗の結果を表す表(こんな感じのやつ→ ○○○●○●)を「星取表」と言うが、それに倣ってか、野球でも星取表という言い方をする事がある。



 なお、平幕力士(=三役未満(前頭)の力士)が横綱に勝つ事を「金星(きんぼし)」と言う。大関などが横綱に勝っても金星ではなく白星。前頭の中でも上位ではない力士(下位すぎると基本的に横綱と当たらない)が横綱に勝つと「大金星(だいきんぼし)」と言われる。



●カッター→カットボール



●カットする

 打撃において「カットする」と言う時は「意図的にファールにする」という意味になる。


 カットする主な目的は「打ちやすいボールを待つ」と「ピッチャーに多くのボールを投げさせて疲れさせる」の2つである。



 守備において「カットする」と言う時は「(外野手の)送球を(内野手が)中継する」という意味になる。

「中継に入る」とも言い、カットする選手の事を「カットマン(カットオフマン)」と呼ぶ。


 こちらのカットには「ヘロヘロな送球を中継して、強い送球をする」「ある塁に向かっていた送球を止めて、他の塁に投げる」「とんでもない所に行きそうな送球を止めて、被害を未然に防ぐ」などの目的がある。



●カットボール(カットファストボール)

 フォーシームやツーシームとほぼ同じ球速で、スライダー気味に曲がる(「ピッチャーの利き腕とは反対側」に「横~斜め」に曲がる)速球系の球種。


 フォーシームのような軌道からバッターの手元で鋭く曲がるのだが、フォーシームだと思って打ちに行くと芯から外れ、ツーシームだと思って打ちに行くと曲がる方向が逆なので打てっこない。


「カットファストボール」が正式な呼び名だと思うが、アメリカでは「カッター」という略称が頻繁に使われる。

(名前が「~fastball」の球種は「~er」という略称で呼ばれがち)


 日本では「カットボール」や「カット」と呼ばれる事がほとんど。


 本来のカットボールは「スライダー回転がかかったファストボール(速球)」で、ツーシームを左右逆にしたような軌道の速球系の球種。


 ただ、日本では「小さく曲がるスライダー」「速いスライダー」「投げる本人がカットボールだと思っているスライダー」などもカットボールとされがち。そのため、カットボールは速球系ではなくスライダー系の変化球と認識される。


 おそらく、アメリカでは速球(フォーシーム・ツーシーム)の握りを少し変えてカットボールを投げるが、日本ではスライダーに近い握りをする事が多いのだと思う。


※スライダーと異なり、カットボールはあまり手首をひねらない。



 アメリカでは1950年代にはカットボール(の原形)が一部のピッチャーに使われていたようだが、多くのピッチャーが使うようになるのは2000年頃から。


 その頃、マリアノ・リベラがカットボールを使い始める。実は、彼のカットボールは偶然の産物であった。


 キャッチボールをしていたら、キャッチボールの相手に「ボールが曲がっている」と指摘されたらしい。リベラ自身は真っ直ぐを投げていたつもりだったが、いわゆるナチュラルカットボールになっていた。


 それを意図的に曲げるように改良し、結果、カットボールを武器に通算652セーブの世界記録を打ち立てる。

(キャッチボールの逸話から考えるに、リベラのカットボールはフォーシームから発展したものだと思われる)


 カットボールを使うようになってからは投球のほとんどがカットボールで、カットボールが来ると分かっていてもバッターは打てなかったのである。



 日本においては、1995年頃(リベラがカットボールを使うようになる数年前)から武田一浩がカットボールを投げていた。当時は、カットボールという呼び名はなく、「マッスラ」と呼ばれていたらしい。


※「真っ直ぐとスライダーを足して2で割ったようなボール」を日本ではマッスラと言っていた。


 武田がカットボールを習得するキッカケとなったのは、チームメイトのマット・ウインタース(ピッチャーではなく外野手)からカットボールの話を聞いた事。


 武田はクローザー時代(当時のクローザーは1イニングではなく3イニングくらい投げていた)に最優秀救援投手になり、先発ではカットボールを武器に最多勝を獲得している。この両方を獲得したピッチャーは非常に稀。


 また、交流戦がなかった時代に12球団全てに勝利している。交流戦開始前では武田が最後で、史上3人目の快挙だった。

(当日、監督に言われるまで記録がかかっている事を知らなかったらしい)



 リベラも武田も右投げで、左バッター(一般的に左バッターは右ピッチャーに強いとされる)との対戦が多かった。ところが、左バッターは右のカットボーラーとは相性が悪い。


 右ピッチャーのカットボールは、左バッターからすると自分に向かって曲がる。これを打とうとして芯から外れると、ボールがバットの根元(細い部分)に当たる。そのため、バットが折れやすい。リベラも武田もバットを何本もへし折っていた。



●カットマン→カットする



●カップバット

 先端がくり抜かれている(すり鉢状になっている)バットの事。



●下半身の粘り

 下半身の持久力や粘り強さの事。エッチな意味ではなく足腰の話。下半身がネバネバしているという意味でもない。


 相撲では「粘り腰」という言葉があるが、野球でも下半身の粘りは大事。下半身に粘りが無いと、すぐに楽な立ち方をしようとする。少し腰を落とした方が力が入りやすいのだが、この姿勢を維持するのは疲れるので、足腰が弱いと立ってしまう。


 その結果、踏ん張りが利かないようになり、下半身から上半身へと力を伝えるのが難しくなる。下半身は上半身の土台でもあるので、下半身がしっかりしないと上に乗った上半身もバランスを崩す。


 投げるにも打つにも、腕を振る前に下半身が始動する。下半身が投げる/打つための体勢を整えないといけないのだが、下半身が我慢出来ないと、それに釣られて上半身(動く準備が出来ていない)が動いてしまう。



 右投げのピッチャーは、左足を上げて右足(軸足)1本で立った後、左足を下ろしてボールを投げる事になる。まず右足に体重を乗せ、そこから左足へと体重移動し、その体重移動を利用してボールを投げる。


 下半身に粘りが無いと、右足に体重を乗せ切る前に耐えられなくなり、早い段階で左足で着地してしまう。右足に乗る体重が小さくなると、体重移動で左足に伝わる体重も小さくなり、上半身やボールに伝えられる力が弱くなってしまう。


 また、足を下ろすタイミングが早くなるので歩幅が小さくなり、バッターから遠い位置でボールを投げる事になる。更に、上半身が投げる準備が出来ていない段階で足を下ろしてしまうので、無理矢理腕を振るような形になってしまう。上半身と下半身が連動せず、ボールに威力が無くなり、コントロールも悪くなる。肘を痛める原因にもなりかねない。


 左足で着地する時も、着地した足で踏ん張れないと足が開いて(太ももの内側がホーム側に向いてしまう感じ)力が逃げてしまい、ボールに伝えられる力が弱くなる。


 要するに、下半身に粘りが無いと力強いボールを投げるのが難しくなる。特に、日本人は上半身の力が強くないので、下半身から力を伝えられないと厳しい。そういう点では、下半身の粘りは外国人(上半身の力が強い)よりも日本人の方が重要度が高いと言える。


 日本人ピッチャーは、体を沈み込ませるように腰を落として膝(バッター側の膝)を曲げたフォームで投げる事が多い。一方、アメリカ人ピッチャーなどは、腰の高さがほとんど変わらないまま前に行って膝もあまり曲げないフォーム(いわゆる「立ち投げ」のようなもので歩幅も小さい)で投げる事が多い。

(日米でマウンドの硬さが違うという事情もある。アメリカのマウンドは硬い)


 とは言っても、結局は自分に合っているかどうかが第1になると思うので、アメリカ人でも日本風のフォームが合う人もいれば、日本人でもアメリカ風が合う人もいると思う。



 バッターの場合、軸足に溜めた体重をどれだけ前(ピッチャー側)に移動させるかは、体重を前に全部持って行った方が良いという考えもあれば、軸足に体重を残すのが大事だとする考えもある。ホームランバッターは打った後にキャッチャー側に反る人が多めなので、軸足に体重を残す人が多いかもしれない。


 いずれにせよ、下半身の粘りは大事。粘れないとピッチャー側の腰が開きやすくなるので、体重うんぬん以前に打つのが難しくなる。当然ながら、当たらなければ飛ばしようがない。特に、狙いよりも遅いボールが来た時に下半身の粘りが重要。


 速いボールに合わせて体が動くと、体が開くタイミングも早くなる。体が開いた状態(半分くらいバットを振っちゃってるような感じ)から打つのは難しい。下半身に粘りがあると開こうとする体にブレーキをかけられるようになるため、ほんの一瞬だが、打つタイミングを遅らせる事が出来る。この一瞬の差で、空振りするか当たるかが変わって来る。



●壁当て

 練習方法の1つ。ボールを壁に向かって投げ、跳ね返って来たボールを捕り、また壁に投げる。これを繰り返す。



●神の手

 タッチアウトかセーフか際どいタイミングだった時、タッチを躱して手でベースに触ってセーフになると「神の手」と言われる事がある。


 ベースに触ったのが右手なら「神の右手」とも言われ、左手なら「神の左手」とも言われる。



●体(肩)が開く

 ピッチング時やスイング時に「対戦相手(バッターやピッチャー)側の肩」が「背中側に動く」事を「肩が開く」や「体が開く」と言う。「体の正面(胸とか)が相手に向く事」と言ってもいいかもしれない。


 投げるにも打つにも最終的には体を開くが、ギリギリまで開くのを我慢した方がいいとされる。一般的に、開くタイミングが早いと、いいピッチングやいいバッティングが出来ないと言われる。


 ピッチングに関して言えば、腕が見えやすくなるので、ボールがバッターに見えやすくなる。バッターがボールを見る時間が長くなると、球種やコースを見極められやすくなる。


 バッティングに関して言えば、アウトコースのボールがより遠くなる(バットが届きにくくなる)ので空振りしやすくなる。インコースのボールは、打ってもファールや凡打(ゴロとか)になりやすい。


 ピッチングでもバッティングでも、力が前(投げたい方向やボールを飛ばしたい方向)ではなく横に逃げがちになる。どちらも体の回転の力を使うのだが、開くのが早いと「回転を上手く使えるタイミング」を逃してしまう。



●空(から)タッチ

 タッチが空振りする事。または、ボールが入っていない空っぽのグローブやミットでタッチする事。もちろん、空タッチではアウトに出来ない。



●空振り三振

 2ストライクの状態から空振りをした三振の事。バットを振った回数が3回じゃなくても「三振」と言う。



●かわすピッチング

 速球中心で積極的にストライクゾーンに投げ込むスタイルは「攻めのピッチング」「強気のピッチング」「押しのピッチング」などと呼ばれる。


 これに対し、ストライクゾーン外側付近(ストライクになるかボールになるか微妙な辺り)に変化球を投げるスタイルは「かわすピッチング」と呼ばれる事が多い。


「勝負から逃げている」という印象になるからか「逃げのピッチング」と呼ばれる事もあるが……。


 かわすピッチングが出来るピッチャーは、変化球をしっかりとコントロール出来るピッチャー。コントロールが悪ければ、かわすピッチングは成立しにくい。



●代わり端(かわりばな)

 ピッチャーが交代した直後の事。



●観客

 プロ野球の観客は、ビジターのファンも多い。


 ホームのファンはホームのファンと固まり、ビジターのファンはビジターのファンと固まって応援する。


 ユニフォームを着て応援する事も多いので、観客席(特に外野席)が両者のチームカラーの2色に分かれている。



 メジャーリーグでは、観客の大半はホームのファン。ホームのファンの中にビジターのファンが混ざって座っている感じ。


 プロ野球のように「ホームのファンはこっち、ビジターのファンはあっち」とは分かれていない。


 プロ野球では「楽器を使った応援」や「選手ごとに違う応援歌」は当たり前だが、メジャーリーグではあまりない。

(一部の球場で太鼓やブブゼラを使う程度)


 プロ野球と比べると、メジャーリーグでは拍手(スタンディングオベーション)での応援が多い。



●緩急を付けたピッチング

「緩=遅いボール(主に変化球)」と「急=速いボール(主に速球系)」を織り交ぜたピッチングの事。


 遅いボールの後に速いボールが来ると、より速く見える。速いボールの後の遅いボールは、より遅く見える。


 遅いボールを活かすために速いボールを投げる事もあれば、その逆もある。また、両方のボールを活かす事も可能。


 緩急を付けるピッチングをする方法は、1つの打席の間に緩急を付けるだけとは限らない。


「第1打席では変化球中心のピッチングにして、第2打席では速球中心にする」という緩急の付け方もある。

(もちろん、先に速球を見せておく手もある)


 緩急(球速差)を使ってバッティングのタイミングを狂わせる事が出来れば、バッターを翻弄出来る。


 バッティングではタイミングが最重要とも言える。言ってみれば、ピッチングとはタイミングを狂わせるのが目的である。



●完全イニング(イマキュレイトイニング)

 1イニングを3球三振3つで終わらせる事。また、そのようなイニングの事。



●完全試合(パーフェクトゲーム)→完投



●完投(CG/Complete Game)

 先発ピッチャーが最初から最後まで投げ切る事。


 無失点で完投する事は「完封(=シャットアウト)」と呼ばれる。「零封」と表現される事もある。


「2安打完封」なら「被安打2で無失点」という意味。「打っては2安打、投げては完封」という意味ではない。


 先発ピッチャーが無失点に抑えた後、マウンドを引き継いだ中継ぎ陣も無失点に抑えて試合を終える事は「完封リレー」と言う。



 ヒットを打たれずに完封する事は「ノーヒットノーラン」「ノーノー」「無安打無失点(無得点)試合」「無安打完封」などと呼ばれる。


 何人かのピッチャーがリレーしてノーヒットノーランをやったら「継投によるノーヒットノーラン」と言われる。


 ランナーを1人も出さなかった(フォアボールとかもなかった)ノーヒットノーランは「完全試合(=パーフェクトゲーム)」と呼ばれる。



●神主打法

 バットをホームベース側に傾けるバッティングフォームの事。オオヌサ(バサバサするアレ)を持つ神主のように見える事に由来する。


 多くの場合、腕は伸ばし気味になる。選手によっては、腕をほぼ伸ばしきった状態で構える事も。


 神主打法の使い手には、ゆったりとした構えをする選手が多い。「力を抜いて自然体で構える」とも言われる。


 なお、どこまでが神主打法でどこから神主打法じゃないのかは微妙である。



●完封(=シャットアウト)(SHO/ShutOut)→完投



●完璧なピッチング

 ランナーを1人も出さないピッチャーの事。


 1回から9回まで完璧なピッチングを続けると完全試合になる。

(延長になった場合を除く)

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