最終章 “S”EX
二人は今ひとたび目線合わせ、互いの瞳に光る電光のほか、ちらちら燃える欲情の炎確かめて、固く抱きしめあう肉体と肉体。この状況もいわば野外プレイ、しかし誰が見ているはずもなく、すでにお互い素っ裸の状態、遠慮も配慮もあるものかと腰擦り付けあう。左手はひっしと女の腰を抱き、右手でイチモツしごきあげ、いきり立った肉棒の先から飛ぶ火花、夏の花火にも似てうっとりと夜空を煌めかす。摩擦によってさらに増幅される電磁力、バチバチと手のひら叩く痛みも心地よく、合体した際どのような刺激もたらすかと、息も荒く見つめる女の太ももすでにしとどに濡れ、太ももふくらはぎ足首伝って宙に落ちた愛液一滴、遥か下方で一休みする農家の鼻先にぴちゃり、こりゃえらく塩っ辛い雨だわいと首傾げたことなど知る由もなく、腕絡めて続きをねだる。いきり立った肉棒割れ目に押し当て、ぐんと押し出し貫く女体。女の中はあしらったように絡みつき、まるでぴったり合ったねじ穴とねじの関係。右手を去ってねじ穴へと移動する、これぞまさに右ねじの法則!
男のペニスは激しく光放ち、その光量女の腹から透けるほど。500万ボルトは下らぬ電撃まとったそのイチモツ、現れては消える度辺り一面日が差すがごとく、まるでそれはご来光の瞬間。腰の動きは徐々に速さ増し、女も応えて股を振りたて、常人では捉えることもできぬその動きもはや逆に止まっているようにも見える。それもそのはずこの二人無意識のうちに磁力を制御、奥を突いたら反発させ、外に抜く度また引き寄せあい、スイッチONOFF切り替えるように器用なピストンのサポート。その操作は感度高まるにつれ速度上げ、いまや一秒間に20回の挿入ペース! そう、言うならばこれは二人にのみ許された快感の特急電車、その名もリニア・モーター・セックス!
パンパンと音響かせ高めあう二人、その顔は法悦に満ちて近い限界を物語る。不規則に収縮する女の内壁、歯を食いしばり耐え忍ぶ男、さらなる高みを目指して相手かき抱き、腰のつがいも外れよとばかりの全力ピストン。最大の快楽に酔いしれている最中、突然下半身に走る激しい痛み! 先に限界訪れた女全身硬直させて固まり、体内のイチモツ毟り取らんとばかりに締め上げる。そう、夕方あの時のように! しかし二人の間に流れる空気は夕方とは一変、あの時の殺伐とはうって変わった親密な口づけ交わし、緊張した肉体優しく解きほぐす男の指先、緩やかに戻る女の締め付け、それは優しい抱擁に似て男を再び迎え入れた。電流は交接部から全身へと甘く広がり、皮膚から髪まで白く輝かせ、その痺れが互いの脳天まで達した瞬間、二人は確かに桃源郷を見た。
「オオーーーーーーーッ!!」
「あああああーーーーッ!!」
男ついに絶頂。多大なる射精。女の腰に指埋めて破れろとばかりに貫く肉棒。その先端から溢れる体液は何よりも白く、膣内の奥底焼き付くさんばかりの奔流!
途端!
「「あああああああああああ!!!」」
超・反・発!! どっと噴射した精液女の中に流れ込み、これはそう数時間前と同じ状況。女はN極、男はS極、互い引かれあい惹かれあう肉体しっかと結び離れがたく、しかしここに横やり入れるのは男の精液、これもまた示すはS極の磁力! 男の体と男の精液は互いに同極、つまりは互いを忌み嫌い、一瞬ののち互い反発しあう運命! N・S・S!! 弾き飛ばされる男と女、そのエネルギーは精液の持つ磁力にあり!
再び吹っ飛ばされる男と女、しかもその勢いは夕方のそれとは比べ物にならず、マッハ9の速度で離れる肉体。突然の別れに手を伸ばし喉もつぶれよと呼び合うその声も、数秒後には風に紛れて届くはずもない。ひとたびの平穏取り戻していた地上も、また放たれる無慈悲な電磁波攻撃、ビービーとエラー訴える電子機器、人々に襲い来る危機。この世の終わりは近いとうなだれる人類の誰が引き裂かれる男女の悲哀知れようか。二人の体は赤道を中心に引弾きあい、飛ばされる場所はもう一つの安定地。SはNと、NはSと結ばれあうのが自然なら、彼らが行き着く先は一つしかなく、しかしそれは二人にとってあまりに非情な宣告。こぼれる涙を宙にまき散らし、静かに止まったその場所はそう、北極点と南極点! 男は南極、女は北極、それぞれ頭を地面に向け、大気圏ぎりぎりのその境。地軸に沿って宙に浮くその姿は独楽の棒心に似て、薄い空気に朦朧と、為すすべもなくゆっくり自転するばかり。男と女はこの瞬間より、地球の持つ磁力に支配され、永劫に極地を守り続ける運命と相成った!
二人の肉体はもはや出会うことはなく、地核コアに電磁波飛ばしては、地球の裏側から返される返答待ち望むしか術はなく、これからどれほどの歳月を孤独のままに耐え抜く定めか見当もつかぬ。ただ一つわかるのは、二人のどちらかが消滅し磁力失ったその瞬間、地球は崩壊の一途をたどることになるだろう。SとNは片方だけでは存在できず、番がいてこそ真価を発揮できる。この哀れなるカップルの命尽きるまでが、人類と地球に残された猶予時間。それを知るものは当人たる二人と、今まさに芽生えようとしている第三の超・強力・磁力人間、ベイビーのみしか知ることはない……。
ここに語られし数奇なる運命、一組の男女が大地の力に翻弄され、最後は引き離される物語。彼らの電撃的な生き様は未だ語りつくせず、今これを読むことができるのも、極地で孤独に耐え忍ぶ彼らがいてこそ。夜空見上げるとき、磁石持つとき、乾電池はめ込むとき、少しでもこの二人の存在を思い出してくれれば幸いの一言。真・電撃結婚地球廻しノ段、それではこれにて”S”YURYO!!!
真・電撃結婚 地球廻しの段! かくしあじ @kakukakusiaji
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