黄色いチューリップ

SaSuKe

黄色いチューリップ

私達が出会ったのは小さな花屋だった。



「いらっしゃいませ」


若いお兄さんが笑顔で出迎えてくれる。


「あの、御見舞用の花束を作って頂けませんか?」


お兄さんは柔らかく微笑むとすぐに作り始めた。


5分たったころ、お兄さんに呼ばれた。


「これでどうでしょう?」


そこには色とりどりの花がそれぞれを尊重するように座っていた。


「わぁ綺麗…」


思わず心の声がもれる。


それくらい綺麗だった。


「じゃあこれはサービス」


お兄さんが追加で差し込んだのは赤い花だった。


「これはダイアモンドリリーと言って、『忍耐』や『また会える日を楽しみにしています』という意味を持つ花なんだ」


「ダイアモンドリリー…ありがとうございます!」


「どういたしまして」


私はその花束を持って病院に向かった。


「お姉ちゃん!」


病院のベッドに寝て窓の外を見るお姉ちゃんがいた。


「百合。もう学校終わったの?」


「もうどこの高校もテスト週間だよ」


「そう。もうそんな時期なのね」


お姉ちゃんは寂しそうに笑った。


お姉ちゃんは昔から心臓が悪く入退院を繰り返している。


高2になって修学旅行を楽しみにしていたのに心臓が悪くなって行けなくなったときからお姉ちゃんは殻に閉じこもるようになってしまった。


「あ、これ花束。花屋のお兄さんがいい人で凄く気持がこもってるよ」


お姉ちゃんは花束を見ると嬉しそうに微笑んだ。





「いらっしゃいませ」


「こんにちは」


「あ、この間の」


私はまた花屋にやってきた。


お姉ちゃんが喜んでいたことを伝えたくて。


「そんなに喜んでくれたんだ。花屋冥利に尽きるよ」


無邪気に笑うお兄さんは可愛い。


「お姉ちゃんが是非会ってお礼がしたいって言ってました」


「僕も喜んでくれたお礼がしたいな」


私達はお姉ちゃんの元へ向かった。


「お姉ちゃん、今日はお客さんがいるよ」


「こんにちは」


「こんにちは、どちら様?」


「あの花屋のお兄さんだよ」


お姉ちゃんの表情がぱぁっと明るくなった。


「あの花屋さんの!先日は綺麗な花束をありがとうございました」


「こちらこそ、喜んで頂けて光栄です」


まるで紳士のような口ぶりに私もお姉ちゃんも笑ってしまった。


それから私達が仲良くなるのにそう時間はかからなかった。


あれから私は毎日花屋に通うようになり、


お兄さんは休日になる度に病院に通うようになった。


お姉ちゃんは次第に殻にこもるのをやめ、


体調も回復していった。


「百合の花言葉知ってる?」


花屋に通って24日目の事だった。


「私の名前って百合だけど、花言葉は考えたことなかったな」


「百合はね、『純粋』って言う意味があるんだよ。


君にぴったりだね」


その時だと思う。


私がお兄さんに恋をしたのは。


全てが新しい景色になった。





電話がかかってきた。


病院から。


嫌な予感しかしない。


「はい」


『百合ちゃん!?お姉さんが!!』


「分かりました。すぐ行きます」


「どうしたの?」


「お兄さん、お姉ちゃんが…」


私はもう半泣き状態。


「僕も行く」


お兄さんはいつになく真剣な表情をしていた。


私達はすぐに病院に向かった。


「お姉ちゃん!!」


お姉ちゃんの周りには先生や看護師さん達がいた。


「百合ちゃん、落ちついて聞いて…」


先生からさっきお姉ちゃんが息を引き取ったことを聞いた。


その場で崩れ落ちる。


たった1人の家族をなくしたんだ…


お兄さんはお姉ちゃんをじっと見て、髪を撫でた。


「辛かったね、やっとらくになれたんだよね…」


その時看護師さんがお兄さんに1輪の花を渡した。


「もし自分に何かあったら渡してくれとこれを…」


看護師さんが渡したのはワスレナグサだった。


その瞬間お兄さんから涙がこぼれた。


「じゃあ僕は君との別れにキキョウを持って行くよ」


私はそれを聞いてまた涙がこぼれる。


私は後日お兄さんの元を訪れた。


黄色いチューリップを持って。













ワスレナグサ『私を忘れないで』『真実の愛』


キキョウ『永遠の愛』『深い愛』


黄色いチューリップ『望みのない恋』





fin―――――――――

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黄色いチューリップ SaSuKe @Ku3aki

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