第62話「ラノベっぽくない作品も書いてみよう」

 と思ったんだけど……。


「以下途中で飽きた作品」


 以前はそこそこの賑わいがあったであろうこの町の、駅から始まる通りは、一面が無機質なシャッターで覆われており、それだけで少子高齢化が進んでいるのだということを感じさせる。かつては、人気だっただろう通りにある唯一のCDショップのガラスには何年前のかもわからないような、色あせた演歌歌手のポスターが張られていた。すでに日が落ちているのにもかかわらず、店内が明るいところを見ると営業中なのだろう。

 時折通りのシャッターを、車のヘッドライトが照らして反射する。反射した光が目に入り煩わしく感じたが、それでもこのさびれた商店街に車の動きがあることがうれしかった。もっとも商店街が死んだとはいえ、中に住む人々までが死んだわけではないので当然ではあるが。

 私はその寂れた商店街をひた歩いていた。久々に歩く道だった。記憶ではパチンコ屋があった場所は駐車場になり、本屋だった場所もまた駐車場になっている。

 こんな地方の町で駐車場業はそんなに儲かるのだろうかと、全国の月極さんに聞いてみたいのだが、なぜだろう、私はいまだにゲッキョクさんという人に会ったことがない。日本中にチェーンをもつ月極さんは大層金持ちなのだから、テレビで紹介されてもよさそうなものだが、京極さんを目にすることはあっても月極さんは、目にすることがない。なんとゲッキョクと打っても変換すらされないのである。

 ゲッキョクと打って変換を拒むほどに月極という名字は隠さなければいけないものなのだろう。ひょっとすると月極さんの謎を追って、不審な死を遂げてしまった人が何人もいるのかもしれない。なんと月極一族はおそろしいのであろうか、全国の駐車場を支配しておきながら、名前以外の存在をすべてひた隠しに、存在を追うものを闇へと葬り去るのである。 

 まさに現代社会の闇の象徴というほかはない。

 知られていないだけで世の怪死事件のほとんどに月極一族が絡んでるのではないか。

 そんなことを考えていると、私の足はさびれた商店街の一角にある、すでに営業をやめてしまった酒屋にたどり着いた。。私は締め切りのシャッターではなく家の裏手に回り、ノックもせずに金属のノブをひねりドアを開ける。

「かあさーん、帰ってきたよー。」

 インターホンなどないので、代わりに2階に向かって大声を上げた。我が家は居住スペースが2階にあり、1階は酒屋として利用されている。何かに利用すればよいのに、まだ商売に未練があるのか。多くの商材が置きっぱなしでほこりをかぶっている。独特の日本酒の香りが店内を包み込んでいて、私はこの香りをとても気に入っている。

 しかしこのうっすらと日本酒の香りに包まれた空間で、何か違うもののにおいが混じっているような気がした。なんというか、少し生臭いような…。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 もうゲッキョクさんの話を入れた時点で、どうやってゲッキョクさんに落ちをつけようしか考えられなくなってしまった。あぁ殺人事件を書きたかったのに。このままでは月極一族との戦いを繰り広げるバトルものになってしまう。いやもう月極で遊びだした時点でラノベっていうかギャグや!あかん。わし真面目な作品書けん身体や。


 ……ところでゲッキョクって結局何なんですか?

って打つとなぜか月極って打てるんですけどね。


 ピンポーン!


「おや、インターホン……。誰か来たようだ。」

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