童話ドア

長門葵

第0話

「ねぇねぇ知ってる?」

「知らない」

「嘘だぁ。私が知ってるのにあなたが知らないわけがない」

「知らない」

「そう。でも、私は知ってるわ」

彼女は笑っていた。

彼女が笑っていた。

夢の中ではそうだった。

「貴方はひどい人」

「知らない」

「貴方は裏切り者」

「知らない」

「貴方はバカ」

「知らない」

「貴方は弱虫」

「知らない」

「貴方は臆病」

「知らない」

「貴方が嫌い」

彼女はそういって姿を消した。

「知ってるよ」

俺は夢の中でもう会えない彼女にそう呟いた。

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童話ドア 長門葵 @nagato_aoi

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