第6話
そんな気分にはとてもなれなかったのだ。
崩れるようにソファーに倒れこみ、そこでようやく一息ついた。
頭に浮かぶのはあの化け物女のこと。
そして祖父や祖母のことだ。
俺は祖父や祖母の言いつけを破ったことをあらためて気付き、そして後悔した。
――おじいさん、おばあさん、ごめんなさい。行くなと何度も何度も言われたのに、とうとう行ってしまった。本当にごめんなさい。
心の中で謝罪をしていると、驚いたことに声がした。
「もういいぞ。あやまらんでも」
祖父の声だった。
狂ったように周りを見渡したが、当然のことながら誰もいなかった。すると、また声がした。
「あやまらんでもええよ。もう遅いから」
今度は祖母だった。
再び周りを見渡した俺は、見た。
部屋の壁に穴が開いている。
あの穴だ。
そしてその穴から、あいつが外に出ようとしていたのだ。
終
風穴の女 ツヨシ @kunkunkonkon
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