『姉』の足取りから流麗に丹寧に描写されていく風景と共に思い出されるのは在りし日の弟との思い出の数々。一つ一つの描写の解像度の高さが読み手の心を指先でなぞるようなノスタルジーを表現していて読み心地のいい短編でした。炎天下に晒され胡乱を静かに泳ぐ思考の中で蘇る弟との日々は輝かしく、強調という意味合いで現在との対比が効果的に機能しているのが印象的です。明快な言葉にならない主語の足りない会話、それでも互いに対する理解を読み取る事が出来、この空気が個人的に非常に愛おしく感じました。