9-④ どもどもども、ミリアです!

「どもどもども、ミリアです!」

「あーもう! 分かったよ! やるよ! グレイです!」


「2人合わせて、『フグタイテンの敵』です!」


「ちょっと待ってくれ! 俺達ってそんな関係だったか!?」

「ええ! 違いました? フグとタイとテンを取り合って食べるくらい食卓を共にする仲だと思ってたんですけど? いつも一緒に食事をするくらい仲良しだと思ってたんですけど?」

「意味違う! フグもタイも関係ねえ! しかもテンなんか食うか! イタチだぞあれ!」

「確かにイタチは臭いですもんね! 私も食べたくはないです!」

「ずれてる! 話がずれてる! そもそも不俱戴天ふぐたいてんの敵って殺し合う仲だぞ!」

「それじゃあたしたちのコンビ名に相応しくないですね! 変えましょう! ……思いつきました!」

「それじゃあ改めて名乗るぞ!」



「どもどもども、ミリアです!」

「グレイです」


「2人合わせて『水と油』です!」


「おかしいおかしいおかしい! 水と油って! さっきと同じだ! 混ざらん!」

「洗剤を加えれば混ざり合いますよ!」

「3つになってる! 1つ増えてる! 俺達2人! 3つじゃねえ!」

「それもそうですね! やっぱりこれもだめですね! 次の考えます! ……思いつきました!」

「速いな! 大丈夫か……?」

「大丈夫です! 今度こそちゃんと2がついて、仲の良いコンビ名になってますから!」

「ほんとかよ……ともあれやるか……」



「どもどもども、ミリアです!」

「えー、グレイです!」


「2人合わせて『2階から目薬』です!」


「仲良くない! 2階と目薬相性悪い!」

「そんな! あたし的中率10割ですよ! 100回やって100回成功させましたよ!」

「聞いてねえよんなこと! 常識を考えろ!」

「分かりました! せんぱいがそこまで言うならこれも改名しますよ! ……考えつきました! これなら議論の余地なく仲の良さもばっちり表現されて、しかも2も入っています!」

「不安しかねえんだけど!?」



「どもどもども、ミリアです!」

「……グレイです」


「2人合わせて『一姫二太郎』です! きゃー言っちゃいました! やっぱり子供は3人は欲しいですもんね!」

「全てがおかしいぃぃぃ! 一姫二太郎は子供の生まれる順番だ! 3人生まれるわけじゃねえ! つうかこんなんコンビ名に採用するんじゃねえ!」

「ということは2人まではいいんですね!? やった! せんぱいから確約もらいました!」

「1つも言ってない! 拡大解釈反対!」

「むむむ! また思いつきましたよ! 今のもいいですけど、これならきっとせんぱいも納得してくれるはずです!」

「何だよ! この上何があるんだよ!」



「どもどもども、ミリアです!」

「……………………」

「……………………」

「……………………」

「何で言ってくれないんですかせんぱい! ひどいです! 冷たいです!」

「言わなきゃいけねえの!? もう何度名乗ってるんだよ俺達!?」

「何度でも名乗らないと! 名前を覚えてもらうのってとてもとても大切なんですよ! 次の仕事のために! 次の次の仕事のために! お金のために! せんぱいとのバラ色の生活のために!」

「分かった分かった! 俺が悪かったから! もう1度やるぞ!」



「どもどもども、ミリアです!」

「はいはいはい、グレイですよ!」


「2人合わせて『おんぶにだっこ』です!」


「アホかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「アホじゃないですよ! せんぱいにされて嬉しいことなんですよ! おんぶされるのもだっこされるのも大歓迎です! だから今してください!」

「自己紹介の時間じゃねえのかよ!」

「なるほど! せんぱいはあたしにしたいっていうより、されたいわけですね! 分かりました! それでしたらこのミリア・ヴァレスティン、せんぱいを抱きます!」

「何一つ分かってねえ! しかもだっこじゃねえのかよ! 『抱く』と『だっこ』は天と地ほど違うわ!」



「せんぱい!」

「なんだよ!」

「いい加減漫才しませんか?」

「お前がさせてくれなかったんだよ!」

「もういいわ! ありがとうございましたー!」

「それ俺の台詞じゃねえのかよ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る