8-⑤ このさすが戦隊キフドマダーが相手しよう!

(……何故俺がこんな目に?)

 助けた相手にいろんなものを吹きかけられるという、完全なるとばっちり。だがそれがキフドマの覚醒をもたらした。

「!」

 短距離転移の簡易魔法を編み、ウドツカヴの手から脱出した。そして再構築の魔法を展開して、バース達のすぐ側に空間跳躍した。


「おのれバースとその特典達! よくも謀ってくれたな! 俺を挑発することで落下することまで計算しているなんて! お前達もヴァンと同じように策略を練る力まで身につけたのか! 男子3日会わざれば刮目してみよと言うがその通りということか!」

「無事なのかあいつ?」「俺達何もしてねー」「挑発に乗る方が悪いと思う」「こりゃ(仮)も付けたくないな」

「なあ、そこの人魔達。頼みがあるから聞いて欲しいんだが」

 散々ぱらキフドマのことをこき下ろす4人組、厳密に言えば1人は違ったが。そして顔を拭きながら呼びかけるウドツカヴ。

 割合罵倒を多く含んでいたため、キフドマの目は充血し怒りの興奮が高まっていった。


「お、ま、え、ら、あぁ! 俺はお前らのことを認めてやっているのに、お前らは俺を認めないのか! 最低な奴らめ! こうなればこのキフドマ、容赦せん! これだけは使うまいと思っていた奥義をもって、お前達を倒す!」

「またケガスクワーでも呼ぶのか? それはそれでありかもしれないな。この間の借り返したいし」

 両指をならし、拳を打ち付け戦闘意欲を示したのは、バースだ。その顔も戦闘準備は万端とばかりに笑みに満ち溢れていた。

「ケガスクワーはこの間の負傷が完全には治っていないから呼び出せん! 今はアイスを食べて療養中だ! しかしケガスクワーがいなくても俺は強い! そしてその俺が……」

 皆まで言い終わる前に、空間が揺れた。

 上級魔法にも匹敵するほどの魔力放出量、そのために空間が歪んだのだ。

 それを全くの予備動作無しで行ってきた辺り、さすがに無駄に実力だけは備わっている裏生徒会の一員だけはある。



 1

 つまり4人に分身した。



『4人になればもっと強い!』

「分身した!?」「残念と残念と残念と残念がいる!」「つまり残念の宝石箱! ……違うな、残念しかないものの詰め合わせ。さながら当たりのないくじ引き!」「つまるところ全員ぶっとばしゃいいんだな」

『少しは感心しろお前ら! さっきから俺の悪口ばっかりじゃないか! 俺は褒められるのが好きなんだぞ!』

「俺は感心したぞ」

 暴れるキフドマ4人組に対して、キバットがすかさず返してくる。が、それに何の反応も返さなかった。恐らく聞こえていなかったのだろう。


「おい、お前達。いい加減話を聞け。俺は頼みごとがあるんだ」

 同様に抗議をたっぷり込めたウドツカヴの声も、誰にも届かなかった。キフドマ達はそれぞれ格好を決めて宣言し始めた。

『ともあれこのさすが戦隊キフドマダーが相手しよう! 覚悟するがいい、悪の先鋒達よ! お前たちを倒して、その先にいるヴァンという悪の親玉も倒してやる!』

「おーい、俺は驚いたぞー」「1人が分身したのを戦隊って言えんのか?」「バースさん、あの名前ダサくないですかね?」「人の考えた名前にケチ付けるのは可哀想だからやめとけ」

 口では色々バース達も言っていたが、それでもそれぞれ戦闘態勢をとる。ウドツカヴにしてみても鍛えられているのが分かるほど戦闘能力の高さがうかがえた。


「おい! お前ら!」

 だがそれら以上に重要なことがある。ヴァンに自分が会うことだ。だから今戦闘の強さなどウドツカヴにしてみるとどうでもよかった。

 そして同様なくらい、バース達とキフドマ達にしてみるとウドツカヴの言葉などどうでもよかった。目に映るのはただ1つ。戦う相手だけなのだから。

『行くぞおぉぉぉぉぉぉぉ!!』

『来いやあぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 キフドマ達が跳んで、バース達が飛ぶ。ちょうど中間地点で両者はぶつかり、砂煙をあげるほどの盛大な喧嘩を開催させる。

 そしてウドツカヴは取り残された。


「お前ら喧嘩などしてないで俺の話を、っべ!」

 誰が飛ばしたのか飛ばされたのか。定かではないが、砂煙から靴が飛来してウドツカヴの頬に叩きつけられた。

「このっ、お前ら! おが!」

 今度は邪魔になったのか、ヴァルハラント学校の制服が顔に被せられる。

 長いこと着てきたのだろう、愛用されてきたのだろう。辛苦を知っているのだろう。

 とても、汗と垢の香しい香りに満ちていた。口で息してもまだ嗅覚神経を刺激する。長く嗅ぐことを絶対希望したくないくらい、臭い。

 至極当然、顔から引きはがし服をその辺に投げ捨てる。

「お前ら! いい加減に」

 埒を開けようと大声を出そうとした時、その口に何か放り込まれた。

 一瞬だったから形が確認できなかった。が、それはいらぬ心配だった。キフドマの1人が股間を両手で押さえながら叫んでいたからだ。

「俺の下着ー!」

「ようし、キフドマ一匹無力化ー! これで4対3だー!」


 ブチン

「貴様らいい加減にしろぉ──────────────────!」

 魔力を一気に放出して分身を10体作成。ウドツカヴ全員ともその喧嘩に参戦した。

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