8-④ 「キフドマ!」「残念忍者!」「非忍者!」「忍者(仮)!」
かもしれませんね、とキバットが言うなり2人は談笑を始めた。ウドツカヴにしてみると内容を理解できなかったが、恐らくたわいもない話だろう、2人とも微笑しながら話していた。
キバとキバンカは相変わらずとある女の悪口合戦で盛り上がっているようだ。次から次へとその女の気に入らないところを口々に言っている。
(やっと一段落ついたか……それにしても最近の若者とはこんな奴らしかいないのか? それとも学校というのはこんな奴らを量産するのか?)
もし後者なら学校というもの制度そのものを考えなければならない。このような輩ばかりになってしまっては、いい未来の構築になるわけがない。その部分を帰ったらカウキョと相談しないといけない。これからの人魔の、世界のためにも。
もう自分はそんな立場にはないが、見て見ぬ振りはできない。かつてその責務を負ったものとして、それが義務でもある。
ウドツカヴはそう考えていた。
(ともあれ今はその考えよりもヴァンに会うのが大事だ。ちょうどいい、あいつらにヴァンのところまで案内してもらおう)
「そこの人魔達、少し頼みが」
「見つけたぞ! バースとそのオマケ達! 今日こそお前達を倒して先日のヴァンへの借りを返してやる! お前達が言った順番をきちんと守る俺を称えるがいい!」
ウドツカヴの会話を遮って飛んできた大声、その発信源に向けて目をやると黒づくめの忍者が屋上に立っていた。どう考えてもまともな人魔が取る行動ではない。ということはあそこにいるのはおかしな奴と言うことになる。
(あ、なんかめんどくさい予感がする)
呼ばれた4人組も気付いたのだろう、というか気付かない方が不思議だが、屋上の男めがけて視線を集中させた。そしてその名を呼んだ。
「キフドマ!」「残念忍者!」「非忍者!」「忍者(仮)!」
「キフドマ・キフエクツだお前らあぁぁぁぁぁぁぁぁ! バカにするなあぁぁぁぁぁぁぁ! 俺は真実正式忍者検定筆記試験1級を一発合格した逸材なんだぞおぉぉぉぉぉ!」
1人を除いて完全蔑称としか思えない呼び方であったため、忍者キフドマは激しく地団駄を踏む。
が、そこは歩幅が狭い屋上なので
「あっ!」
屋上の床を踏み外したため体勢を崩し、
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………………!」
屋上から校庭へと落下した。
重力加速を受けて速さがぐんぐんと増す。
変わらぬキフドマの体重。
その2つから構成されるもの、運動量。速さが増しているためエネルギー量、つまり落下時の衝撃も比例する。そのため
ドオォォォォォォン!
音を立てて校庭の砂場にキフドマがめり込む事態と相成った。
「……落ちた」「落ちやがった」「落ちたな」「……やっぱ残念だわあいつ」
4人組にしてみるとキフドマが落ちるなどもうこれで3度目である。なのであまり衝撃を受けない展開ではあったが、ウドツカヴはここに来るのが初めてであった。
一気に心の冷静さを無くし、あわてた行動に直結させた。尤もこれが普通の反応なのだが。
「お、おい大丈夫か!?」
すぐさま駆け寄ってキフドマの体を引き抜こうと力を込める。ちなみにキフドマ自体も体を抜こうともがいているが、脚が地面につかないため意味を成していない。
ともあれウドツカヴはキフドマの下半身を掴んで引き抜いた。まるで大根でも抜くかのように。
抜き取られたキフドマはケガはしていたし、上半身が砂だらけになっているが命に別状はないようだ。何度か胸が上下に動いているためきちんと呼吸もしている。
ほっとウドツカヴが一息ついたとき、変にキフドマの体が跳ねた。
「ぶふおぉーっ!!」
呼吸のときに吸い込んでしまったのだろう、盛大に砂と唾と痰をキフドマは吹き出した。
至近距離であり、真正面であり、回避できなかったウドツカヴはそれをもろに浴びた。
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