6-⑧ 何1つ分からないことが分かったぞ!
しかしあまりにも2人の剣幕が激しすぎたため、グレイは入り込む余地を見いだせないでいた。
睨み合う2人、対立する2人、威嚇しあう2人。
「あたしはその点完全に、ばっちり通過しています! さらに加えていうなら私の部屋に行けば白粉も下着の反対色もあります! これでよりブルマも下着も際立たせることが出来るんですよ!」
「対立する色を配置することでさらなる強調を狙うというの……? 野菜サラダに鮮やかな赤いトマトを置くように、青いシロップのかかったかき氷にマンゴーを乗せるように、調和しつつも、相手の色を引き立たせる美術的手法……恐ろしい、何という発想……!」
「お前ら落ち着け! さっき言ってた色白の足云々がどっかいってることに気づけ!」
口論中の相手に何かを言っても通じる確率は少ない。そして今回もそうだった。キウホもミリアも議論を進めていく。
「あなた、それを貸しなさい。私も今から上級魔法を練り上げて肉体を錬成するわ。そして即グラディウス氏の前に推参して押しかけるわ」
「敵対する相手に塩を送るほどあたしは人間出来てません! ただし! せんぱいが選ばなかった方なら貸してあげないでもないです!」
「ふっ、残りものにこそ福があるということをあなたは存じないようね。それにあえて好きでないものが思わぬ変化をすることで、より気に入りやすいのよ。あなたは有利に見せかけて、不利な選択肢を取ったことを悔やむがいいわ」
その2人に目線が動く。対象は、グレイ。
「せんぱい!」
「グラディウス氏!」
『ブルマと下着、どっちがいいんですか!?(どっちがいいの!?)』
言語としてもおかしいし、意味もおかしい、何より、それを気に入っている相手にきくのは最上級におかしい。グレイは混乱した。
(えー……落ち着け俺。何がどうしてこうなった? そもそもミリアが俺の記憶を確認することから始まって、キウホがやってきて自分語りしてきて、そしてミリアとどっちが幸福でしょう議論がはじまって、今はブルマか下着かどっちがいいでしょうの始まりで、俺に決断を迫っていると……うん、何1つ分からないことが分かったぞ! これで俺は一歩賢くなったんだー! こうしていけばいずれ今の疑問に解けるように、なるかあぁああああああ!)
1人ノリ突っ込みをかましたところで事態の好転に力を貸すわけではない。むしろ時間の無駄遣いしていることから、無益と言わざるを得ない。
そのとき、
「ピピー!」
と笛を吹く、様な声が聞こえた。近くになかったから自分で言ったのだろう。階段を駆け上がってきたキバがグレイの前に姿を現す。
「動くな! ハーレム警察だ! 全員手を頭で組んでそのまま床にうつ伏せになるんだ! 女子に限って言えば俺に抱き着くのは認めてやるぞ!」
「邪魔よ」
キウホが腕を一振りした瞬間、キバの足元から火柱が上がった。熱が離れたグレイのところまで伝わったところを見ると、恐らく上級魔法。
「それではお話を戻そうかしら」
「それは俺がどちらの女子を嫁に娶るのかの話だな! 俺はどちらの女性も平等に愛する自信があるぞ!」
火柱を突き破って現れるキバ。簡易魔法の防御でも張ったのか、体はおろか、服でさえほとんど被害は無い。意外そうな顔をするキウホ。
「耐えた……? 上級魔法の火柱よ?」
「はっはっー! 女子からの一撃! これが愛の一撃ってやつか! なるほど悪くねえ! もっと来ていいぜ! 今思えばあの時踏まれてもらってもよかったかもしれないぜ!」
そして! と声高らかに宣言する。力強さを強調するように
「あれしきで燃える俺じゃねえぜ! 何故なら俺は愛の戦士! 愛を焼き尽くす炎なんてありはしねえのさ! うーん、今の俺! イケてる!」
ノリにのっているキバ。しらけ切っているグレイ、ミリア、キウホ。そんな彼らだからこそ、遅れてやってきたバース達にたいする反応は薄かった。
「すまん、副生徒会長……突然『恋人持ちの臭いがする!』とかぬかしたと思ったら飛び出しちまって……」
「部下の手綱はしっかり握ってくれ頼むから」
「これに関しては本気ですまんとしか言いようがない」
珍しくうな垂れたバースが手を合わせて謝ってくる。
それを見た諦めたようにキウホがため息をつき、しかしそれでいて顔だけは真剣になる。
「はあ……余計な人達が増え過ぎたわね……まあ、役者が揃ったところである種ちょうどいいかもしれないわね。議論は後にするわ。もう1つの用事を果たしましょう」
「用事?」
訊き返すグレイにキウホは頷いた。
「あなた達生徒会関係者全員に関わるものよ」
目線だけ動かし、キウホは全員を確認していく。グレイ、ミリア、バース、三連牙、全員視認できた後、全員に届くように多少声を大きくして告げた。
「裏生徒会が動いてる。キフドマがあなた達を狙っているわ」
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