5-② また会おう

 ●月×日

 やっぱりヴァンくんはスゴい! ぼくと同じ学校に転校してくるなりまほうもべんきょうも一番になった!

「たいしたことじゃない」

 とヴァンくんは言ってたけど、ほんとうにスゴいと思う!

 だってぼくは一度も一番になれなかったんだ。でもヴァンくんはすぐなれたからほんとうにスゴいと思ったんだ!


 でもなんだかみんなはちがうみたい。

 ウットンベくんはヴァンくんのことがきらいになったのか、いじわるしようと考えていた。

 もしそうなったらぼくはどうするべきなのか、ヴァンくんはたいせつな友だちだけど、ウットンベくんはぼくともいろいろ遊んでくれた。

 みんななかよくできたらいいのに。




 ●月△日

 スゴい! ヴァンくんとウットンベくんが仲よしになってた!

 どうも理科のじゅぎょうでガスがもれていて、ヴァンくんがガラスをわって助けてくれたみたいなんだ。

「ありがとうありがとう!」

 ってなんどもなんども言っていた。

 今ではすっかり仲よし!

「やったね! ヴァンくん!」

 と言ったらなぜか泣いちゃった。なんでだろう? うれしすぎたのかな?




 ●月□日

 学校が終わったあとヴァンくんによばれた。いってみたら

「公園の木を切り倒してきた」

 と言ってきた。ぼくはビックリした!

 だってあの木はみんな大好きなところだったんだ! それなのにきっちゃうなんて!

「なんでそんなことしたの?」

「魔王となるためだ!」

 といった。

「魔王って……あのむかしにいたっていう魔王さまのこと?」

「そうだ、おれはそれになりたい」

 ヴァンくんがなにをいっているのか、ぼくにはよくわからなかった。

 だって魔王って


 はるか昔、この世界のいくつもの魔族が戦乱に明け暮れた時、突如現れて全ての魔族を支配下に置くほどの強さを発揮。文字通り「魔」族を統べる「王」となり、行く先々で恐怖の対象として見られたらしいが詳細の記録は無い。(じしょでしらべた!)


 よくわからなかったけど、つよくてすごい人ということはしっていた。

 だけどヴァンくんのまおうかけいかくはダメになっちゃったらしい。

 あの木はいたんでいたからたおすのをやってくれたっていうことで、いろんなせんせいにほめられてた。いーなー




 ●月◇日

 ヴァンくんが引きこもりになった。何でだろう?




 ◇月×日

 小学校も高学年になってからしばらくたった。漢字もたくさん覚えた!

 その間、ヴァンくんはいろいろやってたらしい。

 女子こうい室に入って悪いことしてた人をつかまえたり、通学路を魔法でこわしたら、その道の地面が凹んじゃったから

「皆の安全のためによくやってくれた!」

 ってほめられてた。

 終わった後いっつもヴァンくんが泣いてるのが不思議だった。


「グレイ、俺は強くなる」

 いきなりヴァンくんが言ってきた。ぼくはわけがわからなかったけど、話してくれた。

「これまで魔王になれなかったのは俺が弱かったからだ。強くなれば、そのときこそ魔王になれる」

 そうかなぁ、何か違う気がするんだけど。だって強さ関係ないよね?

 それにみんながほめてくれるんだから、喜べばいいのに。


「俺はこれから新しい学校に行って強さをつけてくる」

「それって……違う学校に行くってこと?」

「……そうなるな」

 ヴァンくんがいなくなるの……?そんなのやだよ……

 ぼくは思わず泣いてしまった。

「泣くな、グレイ。わかれはいつの世にもついて回る。夜になれば家に帰るのと同じで、永遠に遊び続けることはできない」

「でも……」

「しかしわかれもまた永遠ではない。その心1つでわかれたきょりなどなくなるのだ。だからグレイ、俺はお前に言ってきたし、これからもこう言いたい」


「また会おう」


 そのときぼくは気が付いた。

 ヴァンくんから一度も「さよなら」を聞いたことがないことに。

「また会おう」や「またな」と言われたことはあったけど、それはなかった。

 きっとヴァンくんがぼくと遊んでいて楽しかったからだ。

 友だちだと思ってくれたからこそずっとそう言い続けてきてくれたんだ。

 ……だったら、ぼくもそういわなきゃだめだよね。

「……分かったよ、ヴァンくん、またね! また会おうね! 絶対だよ!」

「ああ、グレイ! 必ず、また会おう!」

 ヴァンくんにぼくにそう言ってわかれた。

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