4-⑩ 私が決めたの。私は偉い神様なんだって

「知り合ってから5分も経たない奴に、何を語ってんだよお前は!」

「時間なんて関係無いの。何故なら私が聞きたいから。そしてあなた方はそれに答える義務があるの」

「どこにあんだよんなもん!」

「私が希望したから。それ以上の理由なんていらないでしょう」

「……っ! 何様のつもりだお前!」

「神様のつもりよ。だって私は偉いんだから」

「その根拠は!」

「私が決めたの。私は偉い神様なんだって。だから誰もが私の命令に従う義務があるの。これで証明完了かしらね」

「屁理屈以下の非理屈を立てるんじゃねえ!」


 丁々発止ちょうちょうはっし侃々諤々かんかんがくがくな舌戦、というか言い合いだが、それに充足感を得ているのは誰もいない。ただただグレイは疲労感を感じ始めていた。

 助けを求めるように、すがるような視線をグレイはキバットに向けるが、それは反らされた。

「……グレイ、相手してやってくれ。俺こういうガンガン突っ込んでくる奴ダメなんだ」

「んな!? 俺1人でどうにかなる相手じゃないだろ!? 第一あんた俺の力になるって言ったばっかじゃないか!」

「物理的な意味での力だ! 精神的な意味ではならない! つかなれない! 特に女関係なんて俺が何の力になれるってんだ!」

「さっきから2人でイチャイチャしてないで私も混ぜてよ。そもそも私の疑問に答えてよ。色々するのもされるのも好きだけど、無視だけは嫌いなの。そういう嗜好の人がいるのに理解はしているけど、私にはわからないの。無視とはすなわち非接触。視線の上でも肉体的にもそれは間違いない。私はそれだけは浴びるほど経験してきているわ。そのうえで結論付けたわ。無視に価値はないって」

 これ以上の放置はさらなる変な方向への議論につなげる、グレイはそう判断したため、相手することにした。

 グレイは幾分かの躊躇いの末に、暴露し始めた。


「……別に大層な話じゃない。ただ屋上扉の回し手が俺の尻に当たった、てだけの話だ。そんで少し経ってから、生徒会室の取ってが股に同じ感じでぶつかった、ていうところだ」

「あなたそういう趣味があるの」

「せめて疑問系で聞け! どっちも事故だ! 好きでやったわけじゃない!」

「ということは……あなたはそのときのことを恥じているの?」

「当たり前だろ、誇りとする奴がいるわきゃない」

 それを聞いたとき、キウホの口元が僅かに上がった。微笑んでいるのだ。

「それはますます気に入ったわね。あなたは私の作る部活に入る資格が十分にあるわ」

「部活? 資格?」

 一体何故これらの単語が飛び出してくるのか、それは疑問となってグレイの表面から現れた。


「ええ、私が立ち上げようとしている紳士淑女交流部。あなたはここに入る資格がありそうね」

「この女絶対ヤバイこと言い出そうとしてるな」

「俺も文面をそのまま受けとるつもりはねえよ……」

 袖を引いて気を引いてきたキバットにグレイが返していると、キウホに再び微かな苛立ちが加味される。

「ねえ、また無視してるんだけれども。もしかして私をいじめて楽しもうとしてるのかしら。しかも攻撃方法は私が最も嫌う、無視。さっき弱味を見せたから早速その手段でを攻めてきてるわけね。見上げた性格ね。ますます興味が湧いてきたわ」

「せめてそれを皮肉で言っていると思いたいんだがな」

 これ以上喋らせているとヤバい。

 理由を理屈として立案出来なかったが、理性を超えたものが訴えてきていた。

 会話の主導権を握らなければならない、グレイは質問をぶつけ会話の流れを作り出すことにした。

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