2ー⑨ いいぜ、やろう

「裁かれない理由が無いとは言わせぬ。何故ならあなた方が罪状は明々白々。ここに証拠を出そう」

 懐に手を入れ、ヴァンは忍ばせていた紙を空中に広げた。

 折りたたまれたそれはぱっと空中で転がり始め、地面に落ちても幾度も転がって書かれた内容を読み取り可能にしていく。

「ここにはあなた方が関わった犯罪の全てが書かれている。犯罪者の名前、犯した罪状、決定的証拠となる一覧もな」

「へえー……よく調べてあるなぁ……おお、先輩方の名前もたくさんある」

 しゃがみ込み、書かれた内容1つ1つ確認していくバース。


 そこに先ほどヴァンに絡んだ男が横やりを入れてきた。

「何言ってんすかバースさん! こんなん見る必要ないですよ! どうせ適当に名簿調べただけで、いい加減なことしか書いていないんだ!」

「失礼なことを言うものだな。私の調査は万全を期している」

「どうだか! そもそもこれは証拠にはならないだろ! ただの紙にそれっぽいことを書いて渡したことだって考えられるじゃないか!」


 まともな反論だな、と内心でヴァンは感心した。不良集団に対する印象を変えなければならないことを心にとどめつつ、議論を再開させた。

「物証が欲しいのか。それならば生徒会の私の机の中に詰めてある。必要ならば持ってくるが?」

「だったらそれを持ってきてから言うべきだろ! それを持ってこずに俺たちが悪いみたいに言うなんて、言いがかりを付けに来たみたいじゃないか!」


「よせよキバ」

 なおも食って掛かろうとする男、キバと呼ばれた男の肩を持って止めてくる。

「生徒会長さんの言いたいことは分かった。で、俺に何を求めているんだ?」

「当然裁きを受けてもらう、と言いたいところだが一方的に断罪するのは私の好むところではない。故にあなた方に機会を与えよう」

 指をバースの方に向けて


「バース・セイクリッド。私と決闘してもらおう。私に勝ったならば先の罪は不問に付す。負けたのならば大人しく刑に服してもらおう」


「……具体的にはどんな刑を受ければいいんだ?」

 一瞬の沈黙は何を意味してたのか、ヴァンはこれを思考の一瞬であると判断した。だから警戒の念を抱くことなく疑問に答弁した。

「そうだな、悪ければ退学。良くて無償労働というところかな」

 そこにいた2人の不良とも口出ししてこなかった。ただひたすらにバースに視線を注いでいる。その動向を注視している。

 しかしそんな2人のことは最初っから全く目に入らないのか、バースは一瞥をくれることもなく制服を脱ぎ捨てた。

 着ているのは腕を完全露出した、無地のTシャツであった。そ動きやすさを重視したことを証明するようにバースが両腕を軽く回す。


「いいぜ、やろう」

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