原文

於二十三日夜、虜人將對樓二座、大炮十餘座、牛皮洞子數百座、悉行毀拆、燒營夜遁。


二十四日、盡過江北。即具捷以聞。


虜人既渡江北、卻與西路萬山先渡番軍會合、皆於沿江枯河・白河・新開河一帶下寨、安鹿角、起蓋寨屋。一望三十餘里、群騎蔽野、朝晚牧放、出沒無時。公恐虜人禍心未艾、尚欲留連江北、不可不為剿除之計。



二十三日夜に於ひて、虜人、對樓二座、大炮十餘座、牛皮洞子數百座をもつて、ことどとたくを行ひ、營を燒きて夜遁す。


二十四日、ことごとく過江して北す。すなはちを具して以聞す。


虜人、既に渡江して北し、かへりて西路萬山の先渡の番軍と會合し、皆、於沿江の枯河・白河・新開河の一帶に於ひてさいし、鹿ろくかくを安し、寨屋を起蓋す。三十餘里を一望すれば、群騎、野をおほひ、朝晚牧放し、出沒するに時無し。公、虜人の禍心のいまをさまらず、尚、江北に留連せんと欲するを恐るるに、さうじよの計を為さざるべからず(*1)。




公遂於二十五夜、乘雨暗急遣撥發官張福・郜彥辦舟船大小三十餘隻、載弩手一千人、並叉鐮手五百人、鼓一百面、並帶霹靂炮・火藥箭等、潛駕船至虜營岸下。公親往江岸、指授將士敢高聲者斬。


候傍虜營、令弩手先踏上箭平盤子、聽一鼓齊放。時方解舟、會雨急、雨聲與櫓聲相雜、又至岸下、虜不知覺。遂鳴一鼓、眾弩齊發、繼而百鼓俱鳴、千弩亂射、隨即放霹靂火炮。箭入虜營中、射中死傷不知數目、人馬驚亂、自相蹂踐。至五更、號叫四散奔走、公遂收兵而回、不傷一人。



公、遂に二十五夜に於ひて、雨暗に乘じて急ぎ撥發官張福・かうげんつかはし、舟船大小三十餘隻をべんし、弩手一千人、並びに叉鐮手五百人、鼓一百面を載せ、並びにへきれきはう・火藥箭等を帶びて、潛かに駕船して虜營の岸下に至らしむ。公、みづから江岸に往き、將士のへて高聲する者、斬なりと指授す。


傍らの虜營をうかがひ、弩手をしてづ踏上箭平盤子(*2)、一鼓を聽きて齊放せしむ。時にまさに舟を解くや、會々たまたま雨急なり、雨聲、櫓聲とあひじり、又、岸下に至るも、虜、知覺せず。遂に一鼓を鳴らし、しう齊發し、繼ぎて百鼓俱ともに鳴り、千弩亂射し、したがひてすなはち霹靂火炮を放つ。箭、虜營中に入れば、射中して死傷するもの、數目を知らず、人馬驚亂し、おのづからあひじうせんす。五更に至り、號叫して四散奔走す。公、遂に兵を収めてかへり、一人を傷つけず。



――――――――――



(*1)

不可不為 為さざるべからず


 二重否定。為さずにはいられない。必ず為すべきである。



(*2)

踏上箭平盤子


 あきらめた! 読めない!

 いや、無理やり書き下すことはできる。箭を平盤子に踏上す、とか。でも意味……。

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