編集済
こんばんは。
残念ながら(?)訓読にはツッコミ所がありませんので、史書における流星に関する雑談をば。
〉是夜、有流星墜虜營中。
戦の最中に敵陣に流星が落ちる、という記事はかなり例が多く、一番有名なのは、『後漢書』光武帝本紀の昆陽の戦の記事にある「夜有流星墜營中」の一文かと思います。
これは王莽の軍中に流星が落ちたという記事ですが、流星が落ちた軍は「必ず負ける」のです。知る限り例外はありません。
思うにこれは、史書の約束事、または、大勝の際には敵陣に流星が落ちるという指標があり、それを踏襲したのかな、と。
実際には、戦に勝った後に理由づけとしてそういう噂がまことしやかに流れ、それを後で聞いて書き残したのだろうなあ、と思います。
そういう訳で、史書にはこの種のお約束もありますので、見聞した事実の他に民俗学的な説明体系から来たものが混じる場合もあるということを知っておくと、史書をより面白く読めるかも知れません。
でも、落ちない場合もありますので、何か基準があるのかも知れませんが、そのあたりは謎です。。。
【返信を受けて】
こんにちは。
流れ星はアレですが、超新星爆発なんかは史料に記載されている場合があるようですね。気候は平安貴族の日記に梅や桜の開花の記事が日付とともにあって便利だとか、自然科学と歴史学の絡みはわりとありそうですね。
〉中国の史書では星は凶兆として書かれるものなんでしょうか。
宋元の頃にはあまり記事がないのですね。古代にはわりとよく見た記憶ありです。
星は規則的に動くので、そこから外れた動きは歓迎されない感があります。天子の不徳か凶兆かって感じで、撤楽減膳する記事がセットという印象です。吉兆と観た例はあるのかなあ。気を付けておきます。
ちなみに、『續三國志』第一回にも、「五丈原の陣中に将帥の落命を暗示する流星が堕ちて諸葛亮は世を去り、ついに奸雄が志を得る」てな下りがあります。原文は「星が堕ちて」とかそんな感じでしたかね。明代にもお約束の一つとして認知されていたようです。
〉数字がけっこう多くて、穀物をどれだけどこに送ったという記事が目に付く
それは興味深いですね。
士大夫層が数字を扱ったとは思えませんので、胥吏にやらせたんでしょうかね。モンゴルあたりになると実際性重視でしょうから、士大夫より胥吏の方が重用される場合もあったかも。
ちなみに、西魏の蘇綽の改革では計帳を扱えることが官吏の資格とされましたが、そういう施策は隋には継承されませんでした。これも遊牧民的だなあと思います。
〉日食・月食・オーロラ・天体と、旱魃・大水・地震、このへんを史書からリストアップして自然科学分野の人に提供する
天体はともかく、災害は被災範囲の特定が難しいかもしれないです。しかし、面白い取り組みですね!
作者からの返信
残念ながら(笑)
流星の件の追加記事、ありがとうございます!
やはり、よく星が落ちるんですね。
「空の変なところに見知らぬ星がある」もそうですが、中国の史書では星は凶兆として書かれるものなんでしょうか。
星に願いを、ではないんだなと。
小説的な文章にする場合には、書き方に注意しないといけないあたりです。と再確認。
現代日本人の直感とは違います。
流星その他の天体の凶兆に関しては先行研究がありそうですね。
私がよく見る範囲(宋史、元史、元典章)ではあまり流星を見掛けない気がします。
南宋はボロ負け一方で、元はメンタリティが違うからかもしれません。
元史における南宋モンゴル戦争で個人的に面白いと感じるのは、数字がけっこう多くて、穀物をどれだけどこに送ったという記事が目に付く点です。
連年、旱魃やイナゴにやられたせいもあり、政策的な人と穀物の移動が見えます。
この件を気候変動(に伴う人の移動と植生の変化)の研究者に教えたら喜んでいました。研究テーマにドンピシャ。
最近、木の年輪から年毎の気候変動を調べ、史書や日記に残された気象の記事と照合する、といった学際研究があちこちで提案されつつあるそうです。
と気候変動の研究者が言っていました。
日食・月食・オーロラ・天体と、旱魃・大水・地震、このへんを史書からリストアップして自然科学分野の人に提供する、というコラボを私もやってみたいと思っています。提供先をサーチ中。
と、いつもながら変な方向に話が。
コメントありがとうございます!
お邪魔致します。
天文現象を見ると、つい調べたくなるのです……。
天文教育普及研究会の会報「天文教育」2006年5月号で
http://tenkyo.net/kaiho/kaiho80.html
「凶兆としての流星」
http://tenkyo.net/kaiho/pdf/2006_05/2006-05-04.pdf
という記事を見つけました。
日本の話が多いですが、「5.中国の伝承と天狗星」の節に、『晋書』「天文志」と『史記』「楽書」でのめでたいこと扱いの例も載っているようです。
私は「晋っていつですか」な人間なので(汗)、時代的に全然見当違いだったらすみません……。
作者からの返信
おお、天文の視点からのコメント!
ありがとうございます!
流星や二十八宿、日食や月食などの記録は正史に頻繁に登場するのですが、実のところ、歴史的事象を追い掛けるために正史を読む(一般的な)東洋史学の視点では「お、また載ってる」くらいの認識です。
流星が多少降ろうが、基本的に読み飛ばします。
「正史に掲載された天文系の記録について調べてやるぞ!」という意識を持って読んだことのある人は、意外に少ないのではないかと思っています。
そして私は自分の時代(宋史、元史、明史)ばかり読んでおり、おそらく時代によって流星の記録の出現率が違うんだろうなとも感じています(戦乱が多い時代ほど「まじない」率が高くなる気がしたり)
リストアップしてみないとハッキリしたことは言えませんけれども。
天体や気象について意識して読んでみると、本当に面白い研究ができそうなのです。
そのためにはまずちょっと天文学を勉強し直さないと。
コメントありがとうございます。