原文
十八日、虜以千騎擺列城西、與城上官兵矢石交戰。公在城樓見、虜陣中一人躍馬突出、執旗指呼、引眾直前、意氣驕雄。公索弩親射之、墜馬而死。即令斬首、乃中左目。虜氣奪而退。
十八日、虜、千騎を以て城西に
二十日、遣路世忠將敢勇軍五十六人・大軍弩手三十人至雲峰寺前(*1)、燒雲梯三百餘連・造炮大木五十條、殺退看守攻具二百餘人。
二十日、路世忠を
二十一日、虜遣降將王虎來。公喜其歸、欲詢虜中虛實、見其詞色錯愕、疑有他謀、命左右搜之、於肘後得紫袱係銀十五笏。送獄根究、乃是虜都統與之、俾入城縱火為內應。且約以出城相報時、稱白旗子軍為號。公即斬之。
繼而被擄李遵回、乃知前日王虎之來正為虜刺客也。公曰「吾心無愧天地、王虎其如予何」公探知虜欲於二十四日攻城。
二十一日、虜、降將王虎を
繼ぎて被擄の李遵
――――――――――
(*1)
大軍
別の段にある「官軍」と同じもの、すなわち趙家軍を指すとして解釈した。
(*2)
紫袱を得ること銀十五笏に係る
袱は、物を包む布、または女性が頭部を覆う布。現代日本の感覚における「袱紗」よりは大きい布の模様。
笏は、ここでは金銀を数えるときの量詞で、鋳造して薄く細長い形に整えたもの。笏の一般的な意味は、皇帝に謁見するときに手に持つ細長い形の板で、カンニングペーパーを隠すためのもの。金銀の延べ板が笏に似た形であることから量詞として使われる。
笏の形についてピンとこなければ、「聖徳太子」を画像検索してトップに表示される肖像画が手にしている板が笏である。日本語では「しゃく」と読む。
(*3)
入城して火を縱にして內應を為さしむ
書き下すと消滅するが、「俾」は使役を導く動詞。
覚えるまでは読みにくい「縦」の最もメジャーな用法は、副詞「ほしいまま‐に(広範囲に/思うままに)」や動詞「ほしいまま‐にす(まかせる/思うままにふるまう)」であり、時点で接続詞「たと‐ひ(たとえ~だとしても)」である。
攻城戦でしばしば出てくる「内応」は、城内にいる味方が城門を開き、外にいる包囲軍と呼応すること。
(*4)
予を如何せん
「如何せん(どうしようか)」が目的語を取る場合、語順が「如予何」となる。目的語が長くなると読みにくい。開き直って「~の如きは何ぞや」にするほうが文章がスッキリすることもある。
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