Ⅱ-6 眠り乙女の手当に安けく

 木の実でクッキーを作りに山小屋まで行ったのが二日前。


 クッキーの独り占めを我慢するのを約束して、エルネスティーとお世話になった人たちにおすそわけに行くと決めたのが一日前。


 クッキーを袋にせっせと詰めていき、完成してピンクのリボンで蝶々結びにラッピングされた五つの紙袋を満足して見つめているのが今だった。


 紙袋とリボンはわたしが手芸品店に行って適当に買ってきた。エルネスティーはそのラッピングを気に入ってくれているようで、たまに紙袋に視線を移して眺めていた。


 今日は特に予定がなく、出来上がったクッキーをおすそわけに行く程度だった。食料の買い出しはこの数日間の間に済ませてしまっているし、クランのお店に薬の材料を買いに行くのもしばらく必要ないみたい。そういう訳で、わたしたちはラッピングされた紙袋をさらに大きな紙袋に入れて外へ出た。


 少し風が強い日だった。気温は暖かく感じられる程度で、わたしはベストを着ずシャツのまま、エルネスティーは青いクロークの生地を羊毛のものから亜麻布のものへと替えている。周りの町の人もそんな感じで、だいぶ薄手になっていた。


 アンルーヴってこんなにあったかくなるんだね、と歩きながら独り言よろしく話しかけてみると、でもたったの数ヵ月間だし、冬越えと冬入りは一番寒い、との彼女の弁。


 そんななか、まずはクランのお店に行く。わたしたちは店内に入るなり、見て見てークッキー作ったんだよー、と穏やかな気持ちで伸びやかになった声で彼女を呼んだ。するとクランはわたしの呼び掛けで店の奥から姿を現し、エル姉のクッキーすっごく楽しみにしてたんだよ! と、嬉しそうにぴょんぴょん跳ねながらこちらに来た。わたしも一緒に作ったんだけどな。


 わたしも一緒に作ったんだけどな。


 袋からラッピングして小分けされたクッキーを取り出し、今は何をしていたの、と訊ねながら手渡すエルネスティー。クランは満面の笑みで応えながら、仕入れた商品の整理をしてたんだよ、と言う。


 わたしが聞くとその仕入れ商品というのが、やれハチノコだとか、やれマムシ酒だとかいった見るもおぞまし食うも粟立つ下手物なのだという。確かにクランのお店は下手物店だが、あらためて考えてみてもやはり下手物店なのだ。最近はクランの店に来るとなるともっぱら臭いにやられて気が付かなかった。


 今日はこれだけのために来たんだよ。またしばらくはクランのお店に用事はないんだって、とわたしが言うとクランは誇らしげな様子で、あたしからそっち行くから関係ないもんね、とふんぞり返って言った。


 まだ他の人に配る分があるから、もう少し話していたいけれど、行くわね。


 エルネスティーが告げ、クランはそれでも大丈夫だと大きく頷いた。それで、わたしたちは手を振って別れた。


 次はドックスおじさんのところだ。店に入るとドックスおじさんは相変わらず新聞を読んでいた。一面の大見出しがちらりと見え、『空に黒影 伝説の』まで読めた。あとはぺらりと垂れた新聞の端で隠れて読めない。


 ドックスおじさん、クッキー作ってきたよ。


 わたしが言うとおじさんは新聞から顔を上げ、おお、久々のクッキーだ、と嬉しそうに言った。エルネスティーだけが作ったものと思われたくなくて、三日間ほど山小屋に泊まりがけで一緒に作ったのだと告げておく。


 二人の初めての共同作業だな、とノリ良く応えてくれて、さすが陽気なドックスおじさんはわかってくれているらしい。エルネスティーは恥ずかしいのか、やめてちょうだいなどと適当にあしらっている。


 わたしたちはクッキーですっかりご機嫌になったドックスおじさんから、お返しとばかりに新鮮な野菜をいくつか譲り受けた。トマトを三つにトウモロコシとニンジンが数本。


 今日の晩ごはんは貰った野菜でトマトスープだといいなあ。


 野菜たちはわたしが持ち、ドックスおじさんに別れを告げ、次の目的地であるミゼットおばさんの元へと歩を進ませた。ミゼットおばさんはお店の前で気持ち良さげに煙草を吹かしていた。早くもわたしたちの気配に気づいたのか、すぐに揉み消し吸殻を水入りの瓶に入れる。


 あらいらっしゃい、といつものガラガラ声で言うミゼットおばさんにわたしは、そんな喉なのに煙草なんて吸わない方がいいよと忠告した。すると、アンタに注意されるなんてアタシも落ちぶれたものね……とやけに感傷的な声色で言われた。失敬だな。


 これいつものです、とエルネスティーが取り出したクッキーにミゼットおばさん。あら嬉しいわ、いつもありがとう、と受け取る。それで、そろそろ仕事に戻らないといけないわね、わざわざ来てくれてどうもね、と言って店の中に入っていった。エルネスティーが軽く手を振り見送ったので、わたしも負けじとミゼットおばさんに手を振った。


 そうして最後にエリーヌとジャックの元へ行こうと、商店街へ舞い戻った時だった。


「なあ、あれ」


「マルールとエルネスティー?」


 不意に後ろから男女の声がして、わたしもエルネスティーも振り向いた。


「ジャックにエリーヌ。今日も仲いいね」


「ええ。本当におしどり夫婦みたいで」


「ありがとう。二人こそ仲良く歩いてて恋人同士かと思っちゃった」


「──失敬な。気持ちはもうエルネスティーと一心同体の恋人だ」


「あっ」


 言おうとしていたことを先にジャックに言われてしまい、わたしはぐぬぬと歯噛みする。まさか考えを読まれるとは思わなかった。よもやわたしが「単純なのね。わかりやすいわ」などと──


「エルネスティー」


「何かしら」


「やっぱりわたしたち、一心同体だよ」


「どうして」


「わたしって単純でわかりやすいのかなと思ったんだよ」


「相変わらずおめでたい頭で私は心の底から安心したわ」


 さすがにちょっぴり傷ついた……と言うと、本当に相変わらずの夫婦漫才だな、とジャックに言われてしまう始末。夫婦漫才というよりも、わたしが思うにこれはただの嫁いびりだと思う。


 その後ひと悶着してから、エリーヌは不意にうつらうつらと首を傾け、また今にも崩れ落ちそうに足が震え始めた。


「ああ、またか」


「うん。そうみ……」


 そこまで言うと、エリーヌは気絶したように急に崩れ落ちてしまった。それをわかっていたらしいジャックが彼女の体を支えて地に落ちないようにし、大丈夫か、ここじゃ寝られないぞ、と優しく語りかけて目を覚まさせた。呼びかけるとエリーヌはすぐにうっすらと目を開け、うん大丈夫、と意識も相半ばといった様子で返事をし、ゆっくりと自分の足で立った。


 その様子を見てエルネスティーが言う。


「薬の副作用ね。傾眠ならまだ生活にそこまで支障はきたさないと思うけれど」


「ああ。今のところは」


 またすぐにうつらうつらと体を揺らすエリーヌを支えるジャック。わたしたちは商店街の真ん中で往来する人の邪魔にならないよう、道端のベンチに移動した。ジャックがエリーヌを座らせると、彼女はしかし首を座らせることもなく、すぴすぴと日だまりの中でうたた寝を始めたような寝息を立ててしまった。


 エルネスティーがそんな彼女を見据えながら「けれど、診察時にそれを言わないというのは感心しない。体の変化はすぐに言わなければ駄目よ。些細な変化が他の重大な病の兆候や原因の場合もある」と、今度はジャックを向いてややきつく言わしめた。


「すまない。眠くなるだけなら大丈夫だと思っていた」しゅんと項垂れる彼。


 わたしが間を繕うように、傾眠って?、とエルネスティーに聞くと、傾眠というのは簡単に言うととんでもなく眠い状態で、呼びかければ起きるけれど、またすぐ意識が飛んでいってしまう障害なのだという。


 なるほどね、と言うと彼女は「あなたの体の変化もすぐに教えなさい。あなたの中のLegion Graineがあなたにどんな影響を与えるかは未知数なのだから」と忠告する。体の変化と言ってもこれといったものは無いし至って普通なのだ。わたしは適当に頷いて彼女の鋭い視線を切り抜けた。


 そんな時、出し抜けにジャックが立ち上がる。彼はエリーヌを起き上がらせ彼女の体を支えて立ち上がらせると、再び力なく倒れそうになる彼女を支えた。


「どこかに急ぎ?」訊ねると、「いいや、散歩中だったんだ。これから家に帰る」と言うジャック。


 もう少しお話しようよ、点滴の時は終わったらすぐ帰っちゃうし。そう提案すると彼は乗り気じゃなさそうな顔をした。そこでわたしは「じゃあうちに来よう。エルネスティーの近くなら何かあっても大丈夫だよ」と言ってみる。


 そんなわたしの言葉にはエルネスティーが乗ったようだ。


「そうね。今日はこれから私の所へ来なさい。傾眠が酷くなった時の処方薬と副作用への対処の仕方をついでに教えるわ」


 それを聞いたジャックは顔を明るくさせ「それなら大丈夫かもな……。ありがたい。ぜひとも頼むよ」安心したように笑ってみせた。


 エリーヌもそれで大丈夫かと彼が訊ねると、彼女は首をかくりかくりと力無く縦に振った。もしかするとわたしが思っている以上にエリーヌの傾眠とやらは重い副作用なのかもしれないと思う。


 そういう経緯あって、わたしたちは家へ帰ることになった。


 エリーヌをおんぶするジャックを気遣いながら下へと向かった。いつもエリーヌに点滴を打つために使っている部屋は他の薬や器具などを常備し、今ではちょっとした治療室のような様相さえある。エルネスティーのただひとりの患者──エリーヌの大事や万が一の場合を考慮し、そうすることにしていたのだった。


 わたしはこの数ヵ月間でエルネスティーに訊ねたことがあった。この町に他に病気の人がいると思うけど、どうしてその人たちのために薬を解禁しないのか──どんなに蔑まれていても、エリーヌのように薬や治療を必要と願っている人はいるのではないか──そんな内容だった。


 すると、彼女は悲しそうな目でわたしを見るなり「死ぬより嫌なことなんて誰しも持っているものよ」と言った。その後、あなたは怖いもの知らずだろうから、なんてことないのでしょうけど、と付け足した。


 確かに幽霊や化け物以外に今のところ怖いものはない。病気になる可能性にだって恐怖心はないのだ。だから病気を治したいけれど、それを治せる可能性のある人に診てもらうのを拒絶する理由が全くわからなかった。死が怖いから何がなんでも遠ざけたい。死ぬのは嫌だ。でも、唯一病気を治せる可能性を持つエルネスティーが嫌いだから。


 とにかく、わたしにはそれが足の爪先から頭のてっぺんまで理解できないのだ。


 それに比べて、と前を歩く二人を見る。


 ジャックもエリーヌも最初は悩んでいたけれど、今ではエルネスティーの治療を受けることに積極的だ。現に今日もこうして家に来ている。町の人も彼らのようにもう少し強く生きたいと願ってくれればこんなことはないはずだ。助けられるなら助けたいと、その気持ちはエルネスティーだけでなく町の人にも向いている。


 あらためて治療室に入る二人を見た。ジャックはエリーヌをベッドに寝かせ、彼女はそれで一度うっすらと目を開けるも、すぐに目を閉じてしまった。そして、エルネスティーはわたしとジャックに一旦外に出ているよう仕向けた。


 外に出て二人で壁にもたれかかり、エルネスティーの診療が済むまで、わたしは腕を組んでいるジャックと少し会話してみることにした。


「ねえ」


 ジャックは伏せていた目を開き、こちらに向け応じた。「どうした」


「エルネスティーはどうして町の人と関わろうと積極的にならないのかな」


「いきなりどうした」


 ジャックは少し困惑した様子でそう応える。


「不思議なんだ……。町の人に自分を理解してもらえるのがエルネスティーにも嬉しいことなんだとか、町の人の中にもジャックやエリーヌみたいに話せばわかってくれる人がいるってはっきりしてるのに、理解してもらうための行動を全然しない」


「なるほど」


「エルネスティーは町の人嫌いなのかな。ジャックはわかる?」


 彼は何度かゆっくり瞬きすると、彼なりの見解を訥々と語った。


「青い魔女……エルネスティーは、俺が子どもの頃から何も変わっちゃいない。だから、はっきり言ってしまうとこれは推測でしかないんだが、俺が思うに、彼女はずっと変わらないことに囚われているんじゃないか」


「ずっと変わらない……」


「彼女が不老不死だって事実は、数ヵ月前の事件のあとに何があったのか説明される過程で彼女自身から打ち明けられたことだ。だが正直、俺は彼女がいつまでもああいう姿勢なのはもっと別のところにあるんじゃないかと思っている。不老不死で訳ありらしいエルネスティーと、俺たちみたいな普通の人とは、それこそ経験してきた物事の量も質も差がありすぎる」


 だからこそ俺たち自身がエルネスティーの心中を察してはたらきかけるのは並大抵のことじゃできっこないだろうし、下手に動いたところで彼女の気持ちを損ねるだけだと俺は思う。


 そう言ってジャックは言葉を切った。わたしも彼と同じく腕を組み、ううんと唸る。エルネスティーは何かと小難しいところがあるが、あらためてエルネスティーという存在を俯瞰して見てみると、そうなってしまうのも無理のない人生なのかもしれない。大体彼女が何年生きているのかとか、どんな人生だったのかとか、それすらはっきりと定かではないのだ。


「ところで、お前はどうしてエルネスティーに肩入れするんだ」


「エルネスティーが好きだからに決まってるでしょ」


 わたしは間髪入れずに答えた。


 ジャックは言う。


「近くにいなきゃならないと」


「うん。ジャックがエリーヌ好きなのと同じで、わたしもエルネスティーが好きなんだよ」


 女が女をか、と軽く笑いながら言うジャックだけど、エルネスティーという究極的な恐怖の存在がいるアンルーヴの町では、同性同士の恋愛なんて彼女と関わることに比べればどうということはないと言う。


 青い魔女と呼ばれ蔑まれているエルネスティーと関わっているわたしたちは、多少は町の人から嫌悪される対象になってしまっているのは否めない。けれど、ジャックもエリーヌも町の人から避けられるのを覚悟でエルネスティーに診てもらうことを決めた。わたしとエルネスティーにできるのは、エリーヌの病気を一緒に治すことだけだ。


 いつか機会が訪れたら、エルネスティーの医療の知恵を町の人たちに発揮して信頼を得る事もできるだろう。今までのエルネスティーの憂いを少しでも取り除けたわたしだ。だからこそ過去にエリクがエルネスティーにどうこう関係なく、今はわたしが彼女を支える人じゃなきゃ。


 今週あたり、エルネスティーにバレない機会を窺ってひとりでベルトラン町長の所へ行ってみようかな。


 そうなんとなく思ったのと同時にエリーヌの診療が終わったのか、治療室の扉が開いた。


「終わったのか」


 出て来たエルネスティーにジャックが言う。


「ええ、副作用への対処法と処方薬を教えるから中へ入って。マルールには……貯蔵庫へ行ってこの番号の薬を探して、書いた量を持ってきてくれるかしら」


「りょうかーい」


 メモ用紙を受け取って、再び部屋に入るエルネスティーとジャックを見送り踵を返す。それでわたしがメモ用紙に視線を移すと、すぐにまた扉が開き、エルネスティーがひょっこりと顔をのぞかせてきた。


「ちょっと待ちなさい」


 わたしは「なんちゃらトリンα」とか「なんとかキシンγ」とかいう呪文のような名称が書かれたメモ用紙から目を離し、彼女に応えた。「どうしたの?」


「私もついて行くわ」


「どうして」


「薬の名称がややこしいから間違うと思って」


「それ絶対言えてる」


 エルネスティーが一旦部屋に戻って行き、とりあえずの説明をジャックにしたのだろう。すぐに扉が開き「行きましょう」と言う彼女にわたしはついていった。


 

━━━━━━━━

 


「これでいい?」


「ええ」


 わたしたちは手分けして目的の薬を探している。薬品貯蔵庫へ来るのは実は初めてだが、床が土でなくつるつるしているのと、ちょっとだけほかの部屋よりひんやりとした気温が肌に触れる。貯蔵庫内は薄暗く、薬品棚の部分にほのかな青白い光がぼんやりと浮かぶばかりだ。エルネスティーいわく、こうした環境が薬の長期保存にもっとも適しているのだと言う。


 そんな貯蔵庫内で青白い光を頼りに、ラベルに書かれた薬の名前を確認しながら目当てのそれを探していた。わたしは何度か間違えながらも、正しい薬かどうかエルネスティーに確認しながら持ってきた箱に入れていく。


 そうして薬も粗方探し終えた時、ふと先ほどのジャックとの会話を思い出した。ラベルを確認する指の動きをぴたりと止め、わたしと同様に指でラベルを確認しながら薬を探している彼女を向き、呼びかけてみた。


「ねえ、エルネスティー」彼女は指の動きを止め、こちらに顔を向けて応えた。


「何かしら」


「どうして人に認めてもらえるのが嬉しい癖に、そのために行動しないの」


「部屋の外でジャックと話しているかと思ったら、それだったのね」


「気付いてたんだ」


 エルネスティーは探す手をやめず、そのまま語る。


「確かに理解してもらうことは嬉しい。ジャックとエリーヌに感謝された時は世界が今までの世界でなくなったと錯覚したくらいに。けれど他者に認めてもらうというのは自分の力の及ぶ以上に運や機会も絡んでくるもの。決して訪れないものに期待をするなんて馬鹿げているわ」


「でも、ジャックとエリーヌは」


 わたしは小首をかしげて重ねて問うた。


「あれは本当に運が重なった結果でしょう。マルールはこの町に病気の人がいたとして、それをどうやって把握するの。エリーヌはたまたま発症した時に私とあなたが居合わせただけよ」


「そっか……てことはつまり、エルネスティー的には病気の人がいるってわかって、なおかつその人がどうしようもなく生きたくて、エルネスティーの治療を望んでいるなら治すために動いてもいいと思ってるってことだよね」


 わたしがぱっと顔を明るくさせながら簡単に彼女の言わんとしている言葉を要約すると、彼女は作業を止め、戸惑い濁しながらも「そういうことになる、のかしら……」と言ってみせた。


 やっぱり、明日はもう一度ベルトラン町長の元へ行く必要があるだろう。善は急げなのだ。


「よしっ──じゃあとりあえず、今は薬をジャックとエリーヌに持っていこう。エリーヌは安静にしていなきゃならないしね」


「そうね、早く持っていってあげましょう」


 二人して薬を探し終え彼らの元へ戻った。エルネスティーが応急処置程度の対処を施すとエリーヌはおめ目ぱっちりすっきり起きて、意気揚々とわたしたちの家を後にしていった。


 家の出入り口で控えめに手を振って見送る時のエルネスティーの横顔は、わたしにはなんとなく穏やかなものに見えて、それでわたしの気持ちもちょっとだけ安心したのだった。

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