Ⅰ-6 伝達は過誤され鮭卵の籠
「というわけで、まずはクランのところに行ってきてほしいの」
「わかった」
時は数十分ほど前にさかのぼる──。
右腕はけっこうな早さで治ったが、左足と脇腹はそういうわけにもいかないらしく、わたしは必要な時以外は一日をほとんどベッドの上で過ごす有り様だった。あまり動かないのも体に毒だと思い、エルネスティーの分厚い本を借りてダンベル代わりにしている。ちらりと中身を覗いてみたが、読めもしなければ意味もわからない言葉ばかりでわたしにはちんぷんかんぷんだった。
エルネスティーがやって来たのはそうしてリハビリをしている最中だった。甲斐甲斐しくも彼女はタオルを持ってきてくれ、それを受けとると軽く流した汗を拭きとる。そして、適当に拭き終えると彼女が診察しやすいように横になった。
「体を拭くのが大変なんだけど」
おとなしく横になっているわたしに、作業しながら口を開くとそんな言葉。
「うーん。でもエルネスティーが作ってくれた水、体を洗ったみたいに肌がすべすべさらさらになるんだよ。ミントみたいな爽やかないい匂いもするし。ありがとね……いてて」
脇腹の膿を取り除きつつ、急につまらなそうに答えた。「ならいいわ」
急につっけんどんになったね、と言うと、黙ってて、と言われ少々強引に傷口を触られた。
「痛いってばもう……」
もしかしたら、左足や脇腹の治りが遅いのはエルネスティーがこうやって事あるごとに痛めつけてくるからなのではないか。それでもひと波乱過ぎればいつもの彼女に戻るのはせめてもの救いか。
「左足と脇腹、いつごろ治りそう?」
診察を手早く終え、ふうと一息吐く彼女に問うた。わたしの回復力なら、そろそろ治る時期がわかってもいい。
そうね、と彼女は言う。
「ざっと見積もってあと一週間近く」
「一週間かあ」
まだベッドの上で暇を持て余さなければならないのか、と思うと気が滅入ってしようがない。今までも十分退屈で仕方なかったのに、あと一週間もベッドに釘付けだなんて体がなまりすぎて別の意味で死んでしまいそうになる。
「退屈で退屈で死にそうだよ。ベッドの上でできるのなんてリハビリとご飯だけだし。エルネスティーなんとかして」
ベッドの下に置いた救急箱から新しい包帯を取り出している彼女に向かって、わたしは投げやりな言葉を放つ。一瞬の間ののち「じゃあ、リハビリがてらおつかいに行ってきて」と言う。リハビリがてらのおつかい、外に出るのも久し振りだ。
「いいよ。この前に行った店のどれかだったら道も覚えてる」
「そう。じゃあクランの店へ薬の材料を買いに」
思わず口が尖った。
「行きたくない?」
エルネスティーの声ではっと我に返る。
「う、ううん。よし、行こう。行くよ」
「変なマルール」小首をかしげるエルネスティー。「それと」
「ん?」
「クランのところに行ったら、おじさんのところでトマトも買ってきて」
「はあ」これおつかいじゃなくてパシリじゃないの? とは思ったが当然声には出さない。「松葉杖だから、あまり多くの買い物はできないよ」
「わかってる。そんなに大変な荷物じゃないわ」
買うもののリストを作るから、ここで待っていて。
彼女はそう言って救急箱を手に、いったん部屋から出て行った。そしてエルネスティーがメモを手に戻って来てそれをわたしに手渡したところで、時は現在に戻る。
これが買うもののリストだから、と言われながら手渡された小さな紙片を受けとると、そこには。
ヤドクガエルの毒。
ムササビの膜。
ヒグマの肝。
イクラ。
トマト。
「……」
「顔がすごいことになってる」
「いや、これ見てすごい顔にならないほうがおかしいんじゃないかな」
トマトよりもイクラという響きのほうに場違い感がする。ともあれわたしはそっと紙を折りたたみ、服のポケットに忍ばせた。
「松葉杖は動きやすいものに替えておいた。だいぶ歩きやすいと思う」
彼女が後ろから少し小さくコンパクトになった松葉杖を取り出す。
「私は別の部屋にいるから。帰って来たらキッチンに材料を置いて適当に休んでいて」
「わかった」
わたしは頷き、玄関近くでコートとお金を受け取ると、特に見送られることなく地下をあとにした。
町には薄く雪が積もっていた。空が灰色なら雪も灰色のようで、町中が陰鬱とした気分になり、塞ぎ込んでいるようにも見える。ゆっくりとした足どりで商店街まで辿り着いても活気はなく、人の姿もまばらだ。もし今初めてこの光景を見たのなら「なんだこの寂しい町」と戦慄していただろう。
はあ、と軽く息を吐いてみると、前よりもはっきりと白い息が見える。合点がいった。今日は一段と寒い日のようだ。
どこもかしこも人の気配が感じられない店たちの前を通りすぎていくと、わたしはさらに人の気配が薄くなる路地裏へと体を反転させた。目当ての下手物店へはたしか路地裏を二、三回ほど曲がったところ。記憶を頼りに角を曲がるとにわかに甘い香りが鼻をつくようになり、一歩踏み出すたびに香りが強くなっているあたり、どうやらこの道で当たっているようだと確信する。
そして、わたしは目当ての下手物店に到着した。
相変わらずきつい臭い。意を決して中に入ろうとドアに手をかけようとした。
というところでドアが勝手に開いた。
「あ」
出てきたのはクラン。
「なんであんたがここにいるのよ」
あからさまに嫌そうな声。
わたしは少しかがんで言った。
「えっとね。今日はエルネスティーにおつかいを頼まれたんだ。これなんだけど」
わたしがポケットからメモを書いた紙を取り出すと、なかば奪うような感じでその紙を引ったくられた。そして少しそのメモに目を配らせ「入って」とすこぶる不本意な様子で、店内へといざなってくれた。
中はランプが消されて薄暗かった。これからどこかに出かけるつもりだったのだろうか。
「えっと、ヤドクガエルの毒。ムササビの膜。ヒグマの肝。……イクラ」
彼女がメモを片手に戸棚を見ていく様を、何もできないわたしは眺める。
「あのさ、何よこのイクラって。そんなもの置いてない」
「え?」
「イクラなんて魚屋に行っても置いてるかどうか……。これ、あんたが書き足したんじゃないでしょうね」
見るも恐ろしい剣幕でずかずかこちらに歩んでくるクランに、さすがのわたしもたじろいだ。「でもエルネスティーはこの店と、あとドックスおじさんのところだけでいいって言ってたけど」
「ええ?」
クランが「わけわかんない」といった表情をしている。わたしのほうがわけわからないよ。だが、エルネスティーが書き間違いや伝言ミスをするとも思えない。
「ねえ、このイクラってのは魚屋にあるかもしれないんだよね」
「え、うん」
「じゃあ魚屋に行ってみよう。もしかしたら置いてるかも」
押し黙るクラン。ややもするとそんなに簡単な話ではないと無言で言いきられているような気もする。でもこの町のお魚事情なんて知らないし、そもそもイクラなるものが何なのかもさっぱりわからない。とにかく行動あるのみだ。
「仕方ないなあ。あんたとなんて本当は顔も合わせたくないけど、一緒に探すのはエル姉のためなんだからね! ほら、わかったらこれ!」
「おっと」
クランの手際のよさで包まれたヤドクガエルの毒、ムササビの膜、ヒグマの肝。思っていたよりもだいぶ軽く、これなら松葉杖に頼る身でも気張らずに持つことができる。
しかし、ここであることに気づいた。
「ねえ、そう言えばこれからどこかに出かけるつもりだったんじゃないの?」
わたしは当初のクランの様子を思い出し、彼女にそう尋ねた。
「今からエル姉のとこに行って手伝おうと思っていたところだったの。ちょうどよかったわよ」
あんたが付き添いなのが気にくわないけど、と言うクランの顔は子どもらしいしかめっ面だ。その顔を見てほんの少し気持ちが落ち着いた。
「そうだったんだ。じゃあ、とりあえずイクラってのを求めて魚屋に行こう」
とびきりの笑顔でそう言うと、彼女はふんと一度鼻を鳴らしてドアをくぐった。「早く出てきてよ。カギ閉めらんないでしょ」と、外から大声。
「今行くよ。焦らないで」
松葉杖をついて急いで外に出ると、手袋をした手をすり合わせるクランの姿。
「それで、魚屋ってどこ?」
「黙ってついてくればわかるでしょ」
先に歩き出したクランの後ろをついていく前に、肩をすくめた。視界にも入れたくないのかずんずん突き進むクランに無駄口を叩く暇もなく、その小さな背を見失わないようにするので精一杯だ。
あまりに速い歩を少しでも緩めたいがために、呼びかけてみる。
「あのさクラン。ちょっとゆっくり歩いてくれないと追いつかないよ」
松葉杖で一歩一歩踏みしめるように歩かなくてはならないこの身に彼女の歩く速さは堪える。まだまだ体力も人並み以下の体には重労働をされているみたいだ。
ところが、クランはそんなわたしの身体事情などまるでおかまいなしで、無視して歩き続けている。彼女の歩のペースを無理やりにでもゆるめようと、ほんの少しからかってみることにした。
「そういえばさ。わたし、エルネスティーとこのままずっと一緒に暮らすことにしたんだ」
びくっ、と遠目で見てもわかってしまうほどにその小さな肩が震えた。しかし、それでも彼女は立ち止まらずわたしはさらに呼びかけてみる。
「エルネスティーすごく嬉しそうだったんだよ。あんな暗い地下に独りで暮らすなんて寂しいもんね。ねえ、うらやましいでしょ」
今度こそクランは立ち止まった。わたしは彼女に追いつき、はあっと息を吐く。
「やっと止まってくれた。こうでもしないとどんどん先に行っちゃって……」
ここまで言うと、急にクランはこちらに振り向いた。怒り肩で眉間に深い皺を作り、瞳には薄い涙の膜。「あれ。クラン……」
「二度とそんな冗談言わないで」
「え?」
「エル姉のこと何も知らないからそんなふうに言えるんだよね……本当にバカ。かわいそう」
怒気を孕みつつ、しかし静かな声での「かわいそう」。その言葉を向けたのはどちらだろう。皮肉を込めてわたしにだろうか。それとも、エルネスティーに向けて。
どちらでもかまわないが、クランの機嫌がすこぶる悪くなったのは確実だった。わたしが放った何かしらの言葉がクランの怒りの琴線に触れたのだ。
「もしかして、ずっと一緒に暮らすのが気に入らなかったりするの」
真剣に尋ねた、つもりだった。つもりだったのだが、クランはさらにわたしをきつく睨みつけ。
「サイッテー」
と物心ついた女の子が本気で怒ったときの声調でそう言った。またずんずん先を行く。もちろん、納得などいくはずがない。
「ちょっと待って。エルネスティーのこと何も知らないし、みんな教えてくれないでしょ。クランはそう言うけど、本当に何も知らないんだよ」
だから、そういうふうにからかわれたくなかったら、エルネスティーのことを教えてよ。クランの背に向かって叫んだ。それでも彼女は止まらず進んでいく。
何も知らないわたしに、エルネスティーの事情を察しろと言われてもできるわけがない。ましてわたしは記憶喪失の身で自分が何者なのかもわかっていないのだ。そんなわたしに「サイッテー」なんて言っても、やっぱりそれは当然だと思うし、一体どうしろって言うの?
わたしに対してのクランの言い草には、だからこそ納得がいかない。先を進むクランにがんばって追いつき、その小さな肩をがしりと掴む。
「待って。クラン」
左手を力ずくで振りほどき歩き出そうとするも、分厚い本でリハビリしている左手から抜け出せるほど彼女は力があるわけではないらしい。ひと悶着のあとタイミングを見計らって彼女の体をくるりと反転させた。
「教えてほしいんだ。エルネスティーについて。なんでもいいから」
わたしがまっすぐ見つめると、彼女は視線を逸らした。言いたくないのだろうか。それほどエルネスティーの過去は他の人が口を噤んでしまうほど悲しいものなのだろうか。
クランは肩に入れていた力をゆっくりと抜いた。どうやら観念したらしく、そのまま大きなため息を吐く。
「本当に何も聞かされてないんだ」
「うん」
「じゃあ、イクラ探しは少しおあずけ。どこか喫茶店にでも入ろうかしらね」
「……うん」
肩に乗せていたわたしの両手を払いのけると、クランはくるりと反転して、またすたすたと歩き出す。わたしは黙ってそれについていった。
少し歩いた先の喫茶店の扉をくぐる。ふだん蟻の巣みたいな部屋にいるからか感動するほどお洒落な内装をした場所だった。端の席に着いて慣れた様子で紅茶とレモンケーキを頼む彼女はどう見ても十歳そこらの年齢には見えない。エルネスティーからおつかい分のお金とお釣りしか持ち合わせていないわたしは、ひとまずコーヒーで我慢する。
人の少ない店内は静かだった。クランはテーブルの上に並んだ紅茶とケーキを一口ずつ嗜んだ。寒さでこわばった体の力を抜き、改まった様子でこちらを見る。
「最初にひとつ聞いておくけど」
「うん」
「どうしてエル姉について、そんな熱心に知りたいと思ってるの」
明らかに「わずらわしい」と言われているような気がして少し身構えた。
「理由はわからないよ。でも知りたいと思った。わたしはエルネスティーについてもっともっと知らなきゃならないんだって、体のずっと奥からそう思ってる気がした。大層なこと言ってるけど」
本当はよくわからないんだ。
そう最後につけ加えた。
紅茶をゆっくりと飲んで間を置き、クランは言った。
「エル姉の過去をあんたみたいなすっからかんな人間に受け止められると思えないわね」
ふん、と鼻を鳴らす彼女。
いや、でも、と反論する。
「すっからかんだからこそエルネスティーの記憶を共有したいと思うよ。わたしは今、ほら、クランの言うとおりすっからかんだからさ。もしつらい過去だったとしても、今のわたしなら一緒に抱えられる」
そう言うと、なぜかクランは眉間に皺を寄せた。「本当に、恥ずかしい台詞をよくもまあ……」
頭を軽く抱えながら呆れているようにも見えるその仕草は、怒っているわけではないように見える。
「エル姉に惚れたの?」
「え?」そうなのかな。そういえばエルネスティーにも惚れ性の女の人と評されたことがある。「惚れたわけじゃないよ。たぶん」
「じゃあ、なんでそんなに」
うーん、とわたしは首をかしげた。エルネスティーは好きだ。どうしようもできないくらい離れたくない存在だと思っている。けれども、好きとか嫌いとか、そういったのは問題ではないと思う。エルネスティーには「好きだ」と言ったが、それはやっぱり好きだったからだ。しかし今こうして改めて真剣に考えてみると、好きだとかいう気持ちとも違う何かが、心の中にあるように感じられる。
「とにかくずっと一緒にいたいと思う。いなきゃならないんだと思う。ずっと一緒にいるからにはお互いのこともっと知っておくべきだと思うし」
そこまで言うと、クランは大げさな溜め息を吐いた。
「それを惚れてるって言うんでしょうが……」紅茶を飲み、一息吐く。「わかった。じゃあ重要なとこだけね」
「うん」
クランは人の疎らな店内を見渡す。きょろきょろと視線を巡らし、注意深く、彼女はどうやらこれから話す内容を他の人に聞かれたくないようだった。それほどエルネスティーの過去は今のエルネスティーにとって都合が悪いのだろう。
だれかにメニューの品を渡した店員が持ち場に戻るためにわたしたちのテーブルを横切ったのち、クランは静かに切り出した。
「エル姉は簡単に言っちゃうと病気。不治の病。症状は……よくわからない。あの目の周りの模様、わかるでしょ。あれはその病気にかかっている証拠」
「病気にかかると模様が浮き出るの?」
「そう。模様は人によってその形も浮き出る箇所も違う、ってエル姉は言ってた。エル姉は目の周りなんて箇所に模様が浮き出てしまったから町の人から嫌われてる。いつも青いクロークを着ているから、みんなに青い魔女って呼ばれて恐怖と蔑視の対象にされてるの」
「病気か。それに模様。単に体に模様が浮き出るだけの病気なら、別に怖がる必要なんてないんじゃないの。わたしも最初は驚いたけどもう慣れたよ。町の人はまだ慣れないの?」
わたしがそう問うと、クランはわずかにまぶたを伏せた。紅茶をスプーンでくるくるとかき混ぜる。
「病気なの。わけわかんない病気。町の人はエル姉とかかわると同じ病気にかかるんだと思ってる。体におかしな模様が浮き出て……」
くるくるとスプーンを回し、紅茶をかき混ぜていた指が、ぴたりと止まった。
「正直なところ、あたしも最初はそういうふうに思ってた。接するだけで同じ病気にかかっちゃうんだって。でもパパとママが死んじゃってあたしひとりで生きなくちゃならなくなった時、エル姉はあたしを心配して、ひとり暮らしのためのノウハウを教えてくれたの。料理のレシピとか家事の仕方とか、気前のいいお店とか、風邪を引いたらどうしたらいいかとか……毎日のノルマを書いた紙と、必要なだけの食料をドアの前に置いてくれた。アンルーヴの他の町の人は最初しか手伝ってくれなかったけど……」
不意に甲斐甲斐しく世話をしてくれるエルネスティーの姿が思い出された。エルネスティーは優しい。ただ、ほんのちょっと不器用なだけなのだ。
「でも、だとしたらエルネスティーの優しさは町の人みんなが知ってるはずでしょ。それにエルネスティーと接してるクランに模様なんて浮き出てない」
はあ、と軽い溜め息。
「そうね。でもどんなに優しくても近寄りがたいって思ってる人もこの町にはたくさんいるんだよ。エル姉はそのうちのひとりになってしまっただけ。エル姉がこの町にいられるのだって、町の人との不干渉を固く守っているからなのよ。エル姉と接しても構わないって最低限の人がいて、それ以外の人とは絶対に接しない。そういう暗黙のルールみたいなものがこの町にはある」
「エルネスティーと話したりできる町の人は、クランとドックスおじさんと、ミゼットおばさんだけってこと? その三人しか、いいよって名乗り出た人がいないってこと?」
クランは黙って頷き、紅茶を飲んだ。
酷い、と素直にそう感じた。しかし、他ならないエルネスティー自身にそうしたい気持ちがあるのだろう。ぎこちない関係でうわべだけ取り繕った仲の良さなんて心苦しいだけだ。
「エル姉は病気。これだけはたしかに言える。そしてエル姉は本当は優しい。これもたしか」
でも、とクランは続ける。
「あたしもたまにエル姉が、すごく恐ろしい存在のように感じられる時があるの。なんて言うのかな。そのうちだれかを殺してしまうんじゃないかって、そんな目をする。本当は優しいってわかってるんだけど、その目をしている時は絶対に近寄っちゃいけないって思う」
彼女はまた大きな溜め息を吐いた。疲れを吐き出すような、そんな印象。わたしはそんなエルネスティーの目を見たことはない。クランの言うように彼女の手伝いをしていれば、そんな一面も見られるのだろうか。
「クラン。エルネスティーの手伝いってどんなことするの」
彼女はフォークをくるくる回しながら答えた。
「手伝いっていうのはあれ。新薬の開発。もうわかってるだろうけど、薬は全部エル姉が自分で作ってるんだよ」
うん、知ってるよ、とわたしは言う。「けど、どうしてそんなに薬に力を入れるの」
「簡単。エル姉だって自分の病気をあきらめてるわけじゃないもの。治療薬を作ろうとしてる」
そういえばわたしがダンベル代わりに使った分厚い本は、植物が描かれてあったり動物の解剖図らしきものが描かれていたりもしていた。つまり、あの本は薬の材料を見つけるためのものだったのだ。
「でも、不治の病なんだよね。それを治せるだけの薬を作れる技術なんてあるの」
「だからがんばってる。あたしも手伝ってるの」
クランはケーキの最後の一片を口に放りこむと、駆け足気味に紅茶で流しこんだ。その一口で紅茶も空になり、ひとときの時間が終わる合図になった。
「あたしから話せるのはとりあえずここまで。あとは自分で上手に聞き出してみるのね」
「ありがとう。すごく参考になったよ」
眉間に皺を寄せ、横目でわたしを見た。そのままとても不本意そうに「どういたしまして」と告げ、そっぽを向く。
「ほら、イクラ探しに行くんでしょ。さっさとコーヒー飲んじゃいなさいよ」
わたしはそこで初めて、自分がクランの話に集中していたことを知った。よく見ると一口も飲んでおらず、カップを触ってみるとぬるくなっている。
「ごめん。今飲む」と言いつつ、わたしはそれを手に取って真っ黒なそれを一気に流しこんだ。「にっが……」
「子どもみたい」かすかに笑ったクランに、わたしも不本意だという主張をこめた視線を送り、立ち上がると喫茶店の外に出た。雪がちらついている。
「それで魚屋はどこにあるの」
外に出るなりそう聞くわたしに彼女は答えた。
「この商店街の中あたりにある。目立つ看板があるからすぐにわかるよ」
喫茶店に入る前よりも幾分か歩く速度が遅くなったように感じるのは、ケーキと紅茶で体がほどよく温まったからだろうか。頬はほのかなピンクに染まり、彼女の纏う刺々しさも薄まり、こちらの気分も和らいだ。
クランは目立つ看板だと言った。魚屋というからには魚のモチーフなんかが飾られでもしているのだろう。まだ目的の場所からはほど遠いのか、雪で白なむ遠景に目立つものは見当たらない。
目を凝らしながら歩いていると、不意に体の右側に当たるものを感じた。見ると、白い息を吐くクランの姿。「どうしたの。寒い?」
クランの顔をのぞきこむようにそう尋ねると、彼女はふるふると首を横に振った。
「あんたが寒いと思ったの」
ぼそりと紡がれたその言葉に、すなおじゃないなあ、と心の中で微笑む。エルネスティーと接しているうちに彼女に性格が似てしまったのだろうか。エルネスティーに似てかわいいところもあるじゃない。
「あんまりそうやって体に密着されると、すごく歩きづらいんだけど……」
からかうつもりでそう言ってみると、ぱっとはじかれたように体が離れてしまった。「うそうそ、冗談だよ」と訂正すると今度は背中をこぶしで思いっきり叩かれた。「いったい!」
わりと本気で叩かれた。背中が鈍器で殴りつけられたような痛みで少しだけ身をよじる。
「ホント冗談言うの好きね。サイッテー」
口を尖らせて言うクランに「あーごめん。それも謝るよ」と付け加えておく。謝るくらいなら最初からしないでよ、と言うクランの声は本気で嫌そうな口調だ。そのままわたしたちは離れて歩く。
「ねーえ、くっついてもいいよ。ほら、わたしの隣まだ誰もいないからさ」
つんとした様子で寄りそうのもこちらを振り向くこともしなくなり、なんとか話を聞いてもらおうと先を歩くクランに追いつくと、彼女は不意に立ち止まって上を指さした。
「ここ」
つられて上を見上げると、そこには──。
「なんだこれ……」がく然としつつ、
「ザリガニ」とクランが答える。
重厚そうな真っ赤なトゲトゲの装甲に、手には大きなハサミ。ひょろりと突き出たアンテナのようなものが二本。もしかして宇宙人?
そんなしょうもないことを思いつつ、全長二メートルはゆうに超えていそうなザリガニ型看板を見つめていると、クランに手を取られた。「ぼけっと突っ立ってないで、入るわよ」
さっさとイクラを手に入れたいのか、わたしの手を取ったままクランはするりと店内への扉をくぐった。
「おおクラン。珍しいなあ。……で、後ろのそいつは?」
中に入って早々耳に飛び込んできたのはひょうひょうとした調子の若い男の人の声。声のしたほうを向くと、カウンターの奥に赤茶の短髪をした童顔の男の人。
「えっと。マルールって、言うよ」
なぜカタコトになってしまったのかはさておき「へえ、いい名前じゃん」と歯を見せて笑った。そんなことそんな表情で言われてもさして嬉しいと思えない。わたしの好みはエルネスティーのようにクールな人間だ。
ふんふん頷いてから、彼もまた自己紹介をしてくれた。
「俺の名前はイゾーってんの。よろしく」
そう言われて差しのべられた手に冷たい視線を送った。
「別に聞いてないよ」
「ひっど! つめたっ!」
「これ以上寒くさせないで。イゾー、イクラ置いてる?」
わたしたちが繰り広げる茶番に痺れを切らしたクランが早々に用件を伝えた。そうすると、はた、とイゾーの様子があらたまり「イクラ? 今何月だと思ってんだよ。とっくに旬過ぎてるっつの」と驚きと呆れの両方が入り混じったような声で言った。
イクラというものがなんなのかさっぱり想像がつかないわたしには、当然旬の時期などわかるはずもなく、不本意ながらも尋ねた。
「あのさ、イクラってなに」
「は?」
わたしの突然の質問にすっとんきょうな声を上げたのは、意外にもクランが先だった。イゾーもまた、目を見開いて驚いている事に変わりない。
「あんた、イクラも知らないの」
知らないんだから仕方ないじゃんと言うと、イゾーが言った。
「イクラってのは鮭の卵だよ。赤くてぷちぷちして最高にうめえの。それよりイクラも知らないって?」
それにその怪我、と眉間に皺をつくる。
クランがこちらを向いた。わたしも「どうしよう」という意を込めた視線を送り返す。先ほど喫茶店に話したとおりなら、このイゾーという男の人もエルネスティーをよく思っていないはずだ。一体どこまで話して良いやら、と思ってみるも、この状況に至るまでのわたしの行動とエルネスティーはとても切っても切り離すことなどできない。
わたしはこちらを睨みつけてくるクランと、こちらの情報を聞き出そうとするイゾーとの間で視線をあたふたさせた。しどろもどろになりながら、なんとかこの場をしのげそうな言葉を探した。
そんなわたしの様子を察してくれたのか(どうかはもちろん定かではないが)、イゾーはつまらなそうな顔をしながら、溜め息をひとつ吐いてみせた。
「んだよ、めんどくせえな。もういいよ」
やれやれという仕草とともに発せられたその言葉に、思わず胸を撫で下ろした。クランも同様のようだ。
「それで、イクラをご所望なんだよな」
「うん」
話はふたたびイクラへと戻り、彼は言う。
「鮭が卵をかかえる季節はこの辺りではだいたい七、八月頃なんだ。今は十一月だろ。この時期になっちまうと、もう卵は固くなって食べられたもんじゃなくなる。だからこの時期はもっぱらオスばかり狙うようになるんだ。イクラは塩漬けにしてもそこまで保存の利く食材でもないしな。残念だがあきらめな」
要するに、イクラは時期ではないから入荷していない、と言いたいのだろう。だが、あのエルネスティーがメモを書き間違えるとも思えない。
「なんとかならない、クラン」
「うーん……。そう言われてもねえ」
わたしとクランがメモの信憑性や、これからどうするかといったことをそれとなく話し合うと、イゾーが頬杖をつきながら、企むような顔で言った。
「どうやら相当お困りのようだな。そんなにイクラが食べたいのかよ」
「いや、別に食べたいわけじゃないんだけど」
「はあ?」
しまった、と思った。普通の人がイクラを求める目的なんて、食す以外の選択肢しかない。
「お前ら、なんか怪しいな……」
ここでクランの咄嗟のフォローが入る。
「犬に食べさせるのよ。この人の飼ってる犬が美食家で、美味しいものを食べさせないとすぐに暴れちゃうの。この怪我も、イクラを食べさせてあげられなくて噛みつかれたせいで」
「ああ、そうならそうと言やあいいのに」
クランの口上のクオリティに心の中で拍手を送った。彼女の頭の回転は思った以上に速いらしい。そのおかげか、イゾーも納得して引き下がってくれたようだ。
「イクラが食べたいのなら、そうだなあ。魚釣りが趣味とか他の漁師のところに行って、まだ保存してるか聞いてみるしかないかもな」
「うーん……クラン。じゃあここにいてももう意味ないと思うし、他のとこ行く?」
「そうね。──イゾー、今度サワラ買いに来るから仕入れておいてね」
「高くつく。この辺じゃいないからな」
「いくらでも払うわよ。仕入れておいて」
「わーったよ」
クランとイゾーが口を合わせる。その間わたしはイクラをどうしようかということばかり頭に占めて考えていた。イゾーは魚釣りが趣味か漁師のところへ行ってみるのがいいと口走っていたが魚屋に置いていないなら、そこを訪ねる意味もほとんどないのではないか。それでなくともこのメモに書いてあるイクラなるものは、本当にエルネスティーがはっきりと明確な意識のもと、ここに書き下したものなのか。あのエルネスティーが書き間違うなんて考えづらい、これまでに何度も思ったけど。
それならどうしよう。とりあえずのところトマトを得るためにドックスおじさんのところに向かうという手もある。イクラが見つからないのを考慮しても、そのほうが効率がいい。
そう思い、わたしはクランの手を取る。
「行こう、クラン」
「あ、うん。──て、勝手に握らないで」
ぱしっと軽い手つきであしらわれ、さすがと思いつつも、ほんの少し傷心。
「それで、どこに行くの」
「ドックスおじさんのところに行って、先にトマトを調達しようかなと思ってる。時期的にイクラの調達が難しいなら、そっちにこだわっても意味無いかもしれないしね」
「ん、たしかに」
クランは顎に手を当てて納得してくれたようで、わたしの提案に素直に乗ってくれた。善は急げと言われている。クランはイゾーに手を振ると、ささっと店の外に出てしまった。わたしも彼女を追いかけようと店を後に扉に手をかけると、後ろから声をかけられた。
「待ちな」
その声にわたしは律儀に振り向く。「何か用?」
「お前、魔女のとこで厄介になってるんだろ」
胸が一瞬、大きく高鳴る。このイゾーという人間はエルネスティーをよく思っていない町の人のひとりなのだ。やはり気づかれてしまっていたのか、と感じながら「まあね」と返事をする。
「ふうん」しかし、イゾーは大して興味があるような声もせず「まあ気をつけろよ」
わたしを気づかうわけでもなく、彼はそう忠告してくれた。
「一体なに」
「相手は魔女だ。何されるかわからねえからなって意味だよ」
「なんでそんな言われなきゃ」
「エルネスティーが魔女だからだ」
イゾーの顔がにわかに険しいものになった。
「そんなに怖いと思わないけどな。エルネスティーと過ごしてないとわからない一面もたくさんあるし。わざわざ気にしてくれてありがとう。礼だけは言っておく」
わたしはふたたび扉に向き直った。
「な……ちゃんと話聞けよ」
後ろでイゾーが叫ぶ。わたしは扉を開けながら、もう片方の手を適当に振っておいた。扉はわたしがくぐり抜けるとすぐに閉まり、わめき声も届かなくなった。
「何話してたのよ」
「大人同士のお話だよ」
「子どもだからって見くびらないで」
少し離れた場所まで歩くと、唐突に前を歩くクランが訊ねてきた。やはりエルネスティーをあまり好んでいない彼から何かを尋ねられたのは良いことではないのだろう。気になっているに違いない。
「別に。大したこと聞かれてないよ」
そして、顔を砕いてけらけらと笑うようにやりすごした。
「ふうん……」と疑いの目をしながらも、また前を向き、歩き始めるクラン。
イゾーという人間はそんなに注意するべき存在なのだろうか。わたしの目にはそこまで危なそうな人とは思わなかったが、彼とは今日初めて会ったし、今のわたしには知り得ないことが過去にはたくさんあったのだろう。そう思うと少しは気をつけないといけないな、という気持ちにもなる。
「でもたしかに、うん。これからは気をつけるよ」
わたしはクランの背に向かって言う。顔は見えないが、ほんの少しだけ背にまとうぴりぴりとした雰囲気が和らいだように感じた。
ドックスおじさんの店に到着したのはイゾーの店を出てそんなに歩いていない頃だった。この店に来て道順と場所を覚えているわたしでも「着くの早いなあ」と思ったのは、以前よりも速く歩けるようになっているからに違いない。
「イクラ?」
「うん。エルネスティーに頼まれて」
「置いてない?」
店へのドアを開けて、やあ、と手を振ってくれたドックスおじさんに向かって、開口一番イクラについて訊ねてみたはいいのだが、当の本人は顎に手を当ててかすかに唸っている。
「……って、なんで『置いてない?』なんだよ。ここは八百屋だぞ」
「だって、もしかしたら隠し持ってるかもしれないじゃない」
クランがしれっとそう言うと、ドックスおじさんは、おれをなんだと思ってるんだい、としょげてしまった。
「ドックスおじさんが隠し持ってるなんてありえないと思うよ。クラン」
「当たり前だろ……。第一、イクラなんて時期じゃないしねえ」
ドックスおじさんもイゾーと同じことを話す。そもそも時期でもなく、保存もあまり利かないものを長く持っている人など一部の物好き以外いるわけがない。記憶を失っていようとそれくらいの常識はわかる。
「どうするクラン。イクラ探すのやめようか?」
わたしは彼女にそう提案した。これ以上探しても無駄かもしれない。それ以上に、エルネスティーが時期外れの食材を求めるその理由が気になったのだ。やはりエルネスティーが書き間違いをするとは思えない。
「そうね。あんたもそろそろ戻らないとエル姉に心配かけるし、迷惑にもなるわよね」
「イクラが手に入らなかった理由をきちんと説明すればエルネスティーならわかってくれるだろうしね。じゃあ帰ろうか」
「うん」
ドックスおじさんに別れを告げ、きびすを返して出入り口まで来ると、不意に後ろから呼び止められた。「おおい、マルール」
「ん、どうしたの?」
おじさんが店のカウンターで頬杖を付きながらにこりと笑っている。
「怪我治って冬越したら、川に魚釣りに行ってみないか」
「魚釣り?」おもしろそう。「いいよ。その約束、受けとめた」
左手でグッとこぶしを作った。「さすが気っ風がいいね、マルールのお嬢」
はっはと穏やかに笑うドックスおじさんに間を良くもう一度手を振ると、わたしは外へ出た。いつの間にか厚い雲の切れ間から太陽の日が差し込み、ちらほらと家屋から出てくる人影が増えてきている。
わたしたちはそんな町の人の様子をしり目に、エルネスティーの待つ地下へと歩いた。
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「ねえエルネスティー。イクラなんてどこにも置いてなかったよ」
「え?」
予想していた時刻よりもだいぶ遅い帰宅にクランもろともエルネスティーにちくちく叱られてから、わたしがそう言うと彼女は怪訝な顔をしてみせた。
「『え?』じゃないよ。相当歩き回ったんだから。わたしはエルネスティーがメモを書き間違えたのかとてっきり」
「そうよそうよ。このイクラってどこに行ったら良かったの」
わたしの横で頬を膨らませながらそう付け足すクラン。しかし、それでもなおエルネスティーの表情は怪訝な色を浮かべたままだ。「ほら、これ」
わたしが懐から例のメモを取り出し、彼女に手渡した。すると何か合点がいったのかその顔はいつもの無表情に戻る。
「これ、ドックスおじさんから『イクラのソイソース漬けもらったんだけど、良かったら分けてあげようか』って言われていて、トマトのついでにマルールにもらって来てもらおうと思っていたんだけど」
「え」
クランとわたしの声が見事なハーモニーを奏でた。ドックスおじさんはたしかに「隠し持っている」ことに対して「ありえない」と言ったはずだ。
「待って。ねえマルール、もしかして……」
クランがわたしの顔を見上げた。わたしも同じことを思った。
「独り占めする気だ」
またしても見事なハーモニーを奏でたクランとわたし。あまりのハモりっぷりにエルネスティーの肩がちょっぴり跳ねたのを、わたしは見逃さない。
「くっそお……。クラン。もう一度ドックスおじさんのところに行こう! なんか腹立ってきた」
「同感よ。エル姉ごめん。もうちょっと待ってて。すぐ戻ってきて手伝うから」
「あ、まあ、ええ」
その後は想像に難くない。ドックスおじさんの元へと向かったわたしたちはエルネスティーから聞いた次第を彼に問いつめた。すると観念した様子のドックスおじさんが店の奥から持ってきたのは、イゾーが言っていたとおりの「赤くてぷちぷちしたもの」だった。わたしたちはがっかりした様子のドックスおじさんからしっかり分け前をいただくと、悠々とした面持ちで帰路へと着き、エルネスティーにそれを渡したのだった。
「ドックスおじさん、何か言ってなかったかしら」
とエルネスティーに問われたので。
「あんなに美味しいもんだと知っていたら話さないほうが良かった、って言ってた」
「そう、ドックスおじさん食べたことなかったのね。まあ、食べはしないんだけれど」
そう言うエルネスティーに、わたしとクランが慌てて一口だけせがんだのも想像に難くない。
記憶の限り初めて食べたイクラの味は、その日とともに忘れられないものになった。
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