猫、カエデと僕

顔面ライダー日引き

猫、カエデと僕



 僕は高校生。青春?フッ、知らんなとは投げ出したくは無かった。

 だから価値を見いだすことことにした、

 この交差点にいる猫に。


「やぁ、カエデ今日も元気か?僕は元気さ、相変わらず学校はつまんないけど。」


 カエデと呼ばれるこの猫は全身が真っ白で、美しいと近所では評判なのだ。カエデは遭遇してはいけない奴に遭遇してしまった、という目で見られ、カエデは足早に去った。


「別に何もしてないんだけどなぁー。」


 2年D組、今日も猿たちと1日過ごすことになるとはな。

 ガラガラ、扉を開けクラスは静まる。実はバレてしまったのだ。猫にストーカーし、話しかける現場を。だから今朝は控えめにしておいた。


「滝坂君、どうして立ち止まっているの。」


 担任の教師、山原。45歳を超え独身。いい加減可哀想だ。バツイチという噂もあるが…。


「いや、ちょっと考え事してて。すみません。」

 足早に自分の席に着き、ホームルームを受ける。出席を取る、今日もあいつは来てないか。


 1日の半分を終え、昼休み。自作弁当を一人屋上で食べる。


「いい風だなぁー」


 幼い頃、母親の顔もろくに見ずに両親は離婚した。以降父と二人暮らしだ。家事は自分でしている。父は滅多に帰ってこない。研究者らしいから。

 二学期の最後、後一年後は受験生か。

 午後の授業は放棄した。エスケープではない、寝た。気づけば帰る直前だった。


「滝坂君、成績が良くても授業は受けなさい。」

 と山原に叱られやっと目がさめる。伊達に学年1位を保持しているわけではない。

「すみません。」もうそれしか言わない。だから、山原も何も言わない。


 こうして今日も猿たちとのごっこ遊びは終わる。


「やぁ、カエデ。そろそろ戻ってこいよ。」

 僕は何度吐いたかわからないセリフをカエデにぶつけた。

「ええ、いつかね。きっと、戻るわ」

 また、彼女も何度吐いたかわからない嘘をつく。これでいいんだ。今は。


 カエデが死んだ。交通事故で美しい体は失われた。それがどういうことかを想像もしたく無かった。只々泣いた。

 幸いにいつもの交差点では無かった。どう幸いか分からないけれど。ねぇ、カエデ僕は一人だよ。


 学校、猿たちの楽園。猿はうるさい。今日はいつに増してうるさい。


「うるせー黙れ黙れ黙れーーーーーー!」


教室の扉を開けた途端僕は叫んでいた。やってしまった。そう思った時に全て遅かった。背後には山原がいた。無言で僕の手を引き、外へ連れ出した。


「裕人、カエデちゃんからよ。」そこには一輪の花。それは僕たちだけが知る花。


「産んだくらいで下の名前で呼ばないでください。」


山原は僕の産みの母だ。山原は最初から知っていたみたいだけど、僕は知らなかった。

僕から気付いて教師と生徒の関係を壊した。だから、これは八つ当たりだ。

「でも、ありがと」それだけを言い残し僕は去る。久しぶりに走る。明日は筋肉痛だなぁ。



「やっぱりここだね。カエデ。」


「ええ、信じてた。きっと来るって。」


「ハルカが死んだ。」


「知ってる。お母さんに聞いた。」


ここは彼らだけの知る山奥のある花畑。


「相変わらずだね、ここは。」と僕はいう。


「ええ綺麗、とてもとても…」

カエデは静かに泣いた。ハルカは死んだ。それは変えられない。

クリスマスローズの花畑、山原が植えたらしい。勝手に。私有地だよな…ここ。


花言葉は、私の不安を和らげて。

僕はカエデに求められた。だから行った。それまでのこと。


「ごめん、今言うことじゃないかもだけど言っていいかな。」

カエデは泣きながら言った。

その前にキスをした。



言葉なんていらない、僕たちの関係にはそれだけで十分だった。


僕は猫のハルカを失った。カエデと呼んでいた子だ。いつも同じ時を過ごしてきた幼馴染のカエデが飼っていた猫だ。ある日カエデは不登校になった。

いじめ苦しめられたそうだ。僕はカエデが苦しんでいることに気づけなかった。

その時、カエデの担任は山原だった。だから山原が嫌いだ。


ハルカをカエデと呼んだのは、ほんのきっかけだった。カエデが引きこもって1ヶ月ほど後のことハルカに交差点で出会い、ふと間違って、カエデ、と呼んでしまった。すると涙が止まらなくなった。

その日から僕はカエデが好きなことに気き、彼女に毎日会いに行った。



ふと思い出す、なんで山原はカエデから花を託されたんだろうか。まぁ、どうだっていいかそんなこと今の幸せがあれば。


「やぁ、久しぶりだ。」


「ええ、久しぶりね。お花、よく渡してくれたわね。」


「クリスマスローズでよかったんだよな、本当に?」


「もちろん。そんなことも知らないのによく父親をやっているわね。」


「わかってんだろ、俺の立場。いつクビになるかで忙しいのさ。」


「だったら、子供ぐらい私に育てさせればよかったのに。」


「子供ぐらいって言うのがダメだ。あんたは他人の子を育てるのは上手だが、自分の子供となるとな。」


「ええそうね、私には向いてなかったのかもね」

かれらの会話は終始和やかに終わった。

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猫、カエデと僕 顔面ライダー日引き @hibikidazo

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