第2話
ところがある日、いつものようにエレベーターを降りた私は、何を思ったのかすぐさまエレベーターの中に再び入った。
おそらくその時は、何がエレベーターの中から扉を叩いているのか、気になったのだと思う。
扉が私の目の前で閉まった。
俺が部屋でくつろいでいると、玄関のチャイムが鳴った。
「はい、どちら様ですか」
出るとスーツ姿の中年男が立っていた。
「突然ですみません。ちょっとお聞きしたいのですが、隣の906号室の広田が、今どこにいるのかご存知ないでしょうか?」
「どうしたんですか?」
「私は広田の会社のものですが、数日前から見当たらないのです。それで探しているのですが」
「そういえば私もこのところ、見てないですね。それで申し訳ないのですが、私は広田さんがどこにいるかは知りません」
「そうですか。お騒がせしました」
男は去った。
隣の住人が消えたことは、気になると言えば気になるが、特に親しい間柄でもないのでそのままにしておくことにした。
それよりも腹がへっていた俺は、玄関まで行ったついでに買い物に行くことにした。
買い物がすんでエレベーターに乗ると、見たことのない男が乗り込んできた。
だがその男は四階で降りた。
俺は一人になった。
九階に着いて俺が降りると、閉まったエレベーターの扉が、ドンドンドン、ドンドンドンと大きな音をたてた。
それは俺には、扉を中から二人の人間が同時に強く叩いているように見えた。
終
エレベーターの中 ツヨシ @kunkunkonkon
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます