前編 「エロい」という形容詞
まず、下ネタそのものとは異なるが、「エロい」という形容詞を下ネタ全体を評価するものとして考察し、「エロい」下ネタがどのような特徴を持つか明らかにする必要がある。
ここでは、「エロい」という概念をその言葉の用例から把握していくことにするので、実際にどういう場面で「エロい」という形容詞が用いられるか例示する。(以下に例示)
例
「今日のプレゼンどうだった?」
「エロかった。」
「僕の将来の夢は弁護士なんだ。」
「ふ~ん。エロいね。」
「へい!マグロのにぎりだよ!」
「わあ!エロい!」
「好きな選手は吉田沙保里かな。」
「エロwww」
確かに、違和感は少しある。この会話を日常会話でされたら見境のない淫獣であると認められるのに時間はかからないだろう。
しかし、どうだろうか「エロい」の部分を「寒い」、「暑い」という言葉に変換した場合には、全く意味を通さなくなってしまう。
そうすると、「エロい」という言葉は上記の状況で、「寒い」、「暑い」よりも、ある程度の意味を通していることになる。
また、「キモい」、「やばい」などの言葉に変換した場合には「エロい」と同様に違和感を多少残す結果になるとしても通じないわけではない。
とすると、「エロい」という言葉は「寒い」、「暑い」のような形容詞の仲間ではなく、「キモい」、「やばい」などの形容詞の仲間になることがうっすらと見えてくる。
では、次に【「エロい」と「寒い」の相違点、「エロい」と「キモい」の共通点は何か】ということが問題となってくる。
とすると、この問題を解決するためには、比較対象のグループ分けとして例示した「寒い」という言葉と「キモい」という言葉を比較する必要がある。この検討の結果、ある程度において「エロい」という形容詞の立ち位置を把握できるであろう。
上記理由より、「キモい」と「寒い」の相違点•共通点を考えてみる。
「寒い」という形容詞に関連する事項を挙げてみると、「季節、天候が関わる」、「気温が低い」、「冬」ぐらいだろうか。辞書においては、「気温が著しく低い。また、それが、全身的な(不快な)感じとして、肌を通して感ぜられる。」(グーグルより引用)とされている。
「キモい」という形容詞に関連する事項を挙げると、「不快である」、「気分が悪い」、「ブサイクだ」などであろうか。辞書では、「異様で不快な感じがするさま、見苦しいさま」(weblio辞典より引用)とされている。
「寒い」の関連事項と「キモい」の関連事項を比較して考えてみると、前者は後者より【主観的評価】を排除しているものではないかと考える。
なぜなら、「寒い」という形容詞はまず、「気温」という数値で表すことができるし、「寒い」という概念が他者も同時に感ずるのでなければ、この形容詞が古くから手紙の冒頭で「日常の挨拶」として用いられることはないはずである。
一方、「キモい」という形容詞は【主観的評価】を多く含むものである。
例えば、平安時代には眉を全て剃りあげ、丸い麻呂眉毛を書くのが主流であり、それが美しかったのであるし、歯は黒く塗りたくるのが常識であり、それらは「美しい」と表現された。しかし、現代でそれらは「キモい」のであろうことは想像に難しくない。
また、「美しい」はおおよそ「キモい」の対義語であることに異論はないだろう。
「キモい」は「気持ち悪い」の略で、言葉を文言そのまま捉えると対義語は「気持ちいい」になるが、ブサイクを見たときに「キモい…」とつぶやくのと対照的に、イケメンを見たときに「気持ちいい!気持ちいい!」と叫ぶお方はまさに「気持ち悪い」お方である。
また、この場合に誰を「イケメン」といい、誰を「キモい」というかは個人次第である。小栗旬などは「イケメン」か否かが個人ごとに意見が別れる代表格であろう。
とすると、「キモい」という言葉は時代によって、または個人によって解釈の異なる【主観的評価】を多く含む形容詞であるといえる。
「エロい」という形容詞の解釈に話を戻すと、「エロい」という形容詞は「キモい」と似たものであり、「エロい」という形容詞が【主観的評価】を多く含むものであるといえる。
なるほど、これはおそらく当てはまる。何を「エロい」と感じるかは個人や文化によって大きく異なる。熟女好きやロリコンなど性のジャンルは様々だし、洋モノのAVは日本のそれと大きく異なる。
個人の年齢における変化だけで比較しても「エロい」の評価は大きく異なる。小学生のときは、グラドルの画像を見るだけでフルにパキッていた方もいたかもしれないが、ある程度の年に到達していればグラドルの画像を見るだけでは息子は立ち上がらない。
以上より、「エロい」という形容詞は【主観的評価】を多く含む形容詞であるという結論に至ったところで前編を終了したいと思う。
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