もしも花咲か爺さんの意地悪じいさんがカーネギーの「道は開ける」を読んだならver.2

達見ゆう

もしも花咲か爺さんの意地悪じいさんがカーネギーの「道は開ける」を読んでたらver2

 昔々あるところにおじいさんがおりました。おじいさんは白犬のシロをそれはそれは、とてもかわいがっておりました。


(中略)


 さて、話を聞いた意地悪じいさん、シロを無理やり借りて掘らせますが、出てくるのは瓦礫や臭い土ばかり。

 当然ながら意地悪じいさんは激怒しますが、意地悪じいさんは物欲だけではなく、知識に対しても欲が深かったので、カーネギー読破はもちろん、あらゆる映画も見ておりました。


 しばらくして、意地悪じいさんはまばゆいフラッシュの中にシロと共におりました。

 マイクの前にて意地悪じいさんは滔々と語ります。

「長い長い闘いではありましたが、本日ようやく最高裁の判決がおり、勝訴となりました。そして、史上最高の賠償金を得ることができました。環境の浄化はまだこれからじゃが…。」


 そう、意地悪じいさんはあまりの瓦礫の多さに環境汚染の疑念を持ち、専門家に分析させて村の化学工場による大規模な産業廃棄物の不法投棄に気づいたのでした。

 意地悪じいさんは村の皆に声をかけ、被害者の会を結成し、村の化学工場と村を管轄するお殿様を相手取り裁判を起こしました。そして、ようやく最高裁の判決がおりたのでした。


 本誌のインタビューに対して、意地悪じいさんはこう答えています。

「そりゃ最初はお宝ではなかったから、怒りましたよ。だからシロを何回も借りて範囲を広げて掘らせましたが、出てくるのは瓦礫ばかり。

 しかし、わしは疑念に思ったのです。こんなに広範囲で瓦礫が埋まっているのもおかしいと。そうすると臭い土も何らかの化学物質が不法投棄されているのではと思いましてな。

 もしかすると、これはある意味チャンスだと。昔見たアメリカ映画に似たことがあったのを思い出して多額の賠償金を得られるかもしれないと。しかし、被害状況の余りの凄まじさにそんなことは言っておられなくなってのう。

 村の化学工場とお殿様を相手取り裁判を起こすのは勇気がいったが、シロは犬の身でありながら村の危機を警告してくれているのに、人間が不甲斐なくてどうすると奮い立たせてな。

 賠償金は手に入ったのじゃが、汚染された土の入れ替えにも金はかかるし、まだまだこれからじゃよ。」

 そこには村を想い、救おうとする意地悪じいさんの姿。もはや誰も意地悪じいさんとは呼ばなくなりました。


「シロ、お前の勇気のおかげじゃ。」


「ワ、ワン。」

 もはや展開が壮大過ぎて、付いていけないシロは戸惑ったように吠えるのでした。



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