紺碧に染めて
白い天井が二人を見下していた。
殺したかった人に殺されかけた者と。
死にたかった癖に死ねなかった者を。
ただただ静かに見下ろし、見下している。哀れで醜い生き物達だと。
「殺そうとしたな」
「ごめんなさい」
そう。それはかつての約束。
「死ねませんでした」
「お前は詰めが甘いんだ」
最低最悪は需要と供給のはずだった。
「ねぇ」
「なに」
「約束、しましょう」
「何を」
「今度は私があなたを生かします」
「どうやって」
「私があなたの目になります」
死にたがりの毒は殺したがりの目を焼いた。
「……お情けかよ」
「いえ、決してそんなものでは」
死にたがりは残りの沢山の毒で、顔が醜く爛れた。
「私、あなたを愛していますから」
「…………馬鹿言うんじゃねぇよ」
もう彼と彼女に残された道は一つしかない。緩慢で憐憫に満ちた最期までの長い道のりを、共に過ごす。
贅沢で怠惰な、絶望。
真紅はそっと紺碧に染まっていく。
「愛してくださいね」
「知らねぇよ」
死にたい私と殺したいあなた 空唄 結。 @kara_uta_musubi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます