すれ違う姉妹の恋の行方は

立花マコは、ダメ女だ。
髪の毛はボサボサ、勉強は出来ず、運動音痴、挙句に大の変態シスコン姉と来ている。
しかし彼女には、その大きな胸の内に妹を幸せにしたいという覚悟を持っている。
立花コマはできる女だ。
学校のアイドルであり、勉強は学校でトップ、運動神経抜群、社交性アリと駄姉とは正反対の人だ。
しかし‘駄姉’マコは知っている。‘出来る妹’コマの辛い過去を、その過去がもたらした味覚障害を、姉妹の間を繋ぐ‘口づけ’という儀式を。
マコは知らない。コマが胸の内に秘めた自分への想いを、彼女の自分と同じくらいの大きな恋心を。
この作品は、‘駄姉’マコと‘出来る妹’コマの壮大な姉妹百合ラブストーリーです!

この作品の魅力は、二人の双子の姉妹の違いと共通点にあります。

二人の双子の姉妹は二種類の秘密を抱えています。
一つは周囲への秘密、二人はコマの異常な味覚障害…「マコと口づけをすると1時間味覚が戻る」という二人の共有した秘密。彼女達は自らの生活を送る為、食事の前に口づけを交わします。コマは、かつて仲違いした親に病院に送って貰えず、生死の境を彷徨った過去があり、それは彼女に味覚障害という形で残っています。

二つ目は、お互いへの秘密、マコはコマを周囲から変態と呼ばれるほどに愛しています、しかし彼女は自分の想いはコマに届く事は無い…だから自分は姉として、コマが命の危機に唯一頼った家族として、コマの味覚障害を治す事、それを第一と考えています。
では、コマはどうでしょうか、彼女は、姉に救われ、そこから六年、食事前にキスをする生活を送っています。彼女は姉に恋をしていますが「姉がキスをしてくれるのは味覚障害を治す為であって、自分に愛を向けてくれている訳でない」と考えています。
二人は互いに恋しがっていながらも、その想いが互いに伝わる事は無いと、すれ違い続けています。
その二人の関係はとても尊く、美しい関係性を描いています。

二人のすれ違いは、やがて自分自身の知らない一面、自分が目を背けていた一面をそれぞれに映し出し、それは二人の周りの世界を巻き込み、否応なく大きく変化していきます。

互いに知らぬ恋心、目まぐるしく変わる二人の世界、その向こうで双子の姉妹の見る結末とは!
とても尊く、クスッと笑える素晴らしい作品です!
    12月15日 安藤栞

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