3rd

授業終わりの昼休み。私にはお昼を一緒にする友達はいない。お昼を食べる必要がないからだ。


けれど、私は何処かのいじめられっ子のように足早に教室を出ることはなく、自分の席に座り外を眺める。


私の学年は比較的高い階に教室があるので、狭い狭い箱庭に似た校庭が隅から隅までよく見える。


体育館の裏に見える女の子たちの様子、校庭で遊ぶ暗い顔をした男の子の様子、先生方の話す様子。


どれも鮮やかで飽きないもの。それと同じく、教室の内側も鮮やかだ。首を回転させ、目を向ける。


クラスの女の子が廊下で明るく話している様子、近いテストに向け、静かに無表情で勉強をする男の子の様子。


私には分かる。心中に沈み、こびり付いた不安が。


「この子をいじめて、先輩に嫌われないだろうか」

「ミスをしたら、無視されるだろうか」

「私には話せないことなのだろうか」

「あの行事は、上手くいくのだろうか」


もしも、だろうか、という不安が連なって、私を息苦しくさせる。


まるで肺の中に何かが溜まっているように、息がしにくくなる。でも、その姿を露見させる訳にはいかないと、必死に我慢する。


その息苦しさが、私の食物。それによって、私は漸く生きている。


有難う。


そう考える私の笑顔は、窓に映り込んでぐにゃりと曲がっていた。

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食物 高野 音 @1st_mthi

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