2nd
お腹が空いた。
冷房がついているのにも関わらず少し暑さを感じる窮屈な教室の中、私のお腹が空腹だと囁く。
静かな教室にはその音が響くため、咳払いで何とか誤魔化す。けれど、空腹は収まらない。
貧乏揺すりが止まらず、仕方なく窓の外を眺める。教師の声なんて、右耳から左耳へと通り抜ける。
「じゃあここ。問3の答えは何?そうね…じゃあ11番、答えなさい」
隣の彼が指名され、間の抜けた声を上げて立ち上がる。そして、自分の答えを述べると、その答えは間違っていた。凡ミスなどではなく、根本的に。
教師に指摘されると、恥ずかしそうに顔を赤々と火照らせ、周りの失笑に肩を竦める。
彼が再び席に座ったタイミングで、私の身体にぼんやりとした不安がのしかかった。
この感覚は上手く表現ができない。私の語彙力をもってしても、端的に説明するのは難しい。
頑張って説明をするとすれば、黒い質量を持った煙が身体中を取り巻き、それを私の身体が吸収する。すると、長い間私を苦しめた空腹は足音も立てず去っていく。
それだけではどれだけ辛いことか分からないだろう。この現象の最も辛いところは、不安と共に感情を表す対象の人の言葉も私の中に入ってくるからだ。
例えば今は、彼の言葉が私の中を駆け巡りながら響く。
「どうしよう、成績がまずい」
「また馬鹿にされる」
「怒られるかも知れない」
ぐしゃぐしゃと脳内を掻き回し、思考を停止させようと響く。
短い場合は30分程、長い場合は1日続く。ある時は抑揚をつけて、またある時は無感情なね。囁くように言う人もいれば、叫び声を混じらせて言う人もいる。
彼らはこんなこと、知る由もない。
気付けば、授業は終わっていた。
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