第四十一回 関防と王彌は左國城に到る
それを聞いた李珪はさらに仔細を問うた。
「和議の後、羌兵はどこに向かったのか」
「みな山西の境界の外、
旅人はそう言って道を急ぎ、一行は馬を廻らせて北の馬邑を目指し、ついに左國城に到った。
その日はすでに日も落ち、旅籠に泊まろうとしたものの、家はあっても宿を貸そうという者がない。仕方なく先に進んだところ、公館らしき建物が並ぶ一角に到る。そこに貧相な店があり、ようやくそこに落ち着くことができた。
▼
※
「酒はあるか」
孔萇が問うと、店の老人が答える。
「窮して元手を失い、
「吾らは十二人、一人当たり酒は一斗(約11ℓ)、肉麺もまた人ごとに五斤(約3kg)ほど欲しい」
▼一斗は十升、明代の一升は約1.07ℓに相当し、一斗は約10.7ℓとなる。
店の者は愕いて言う。
「酒は一斗しかございません。一人分で終わってしまいます。どういたしましょう」
「それなら、この辺りに酒家はないか」
「隣には酒も肉も置いてありますが、お客様の面体は人並み外れておりますれば、泊めることはないかと思います。吾らは悪意のある方々ではないと見てお泊めいたしましたが、お出しする酒肉がなく、誠に申し訳ありません。しばらくお待ちいただければ、何とか酒肉を整えて参ります」
「それには及ばぬ。ここに銀子がある。吾らのために酒肉を買ってこい」
孔萇はそう言うと、一包の銀子、およそ五、六両(約200g)を手渡す。老人は酒肉を買いに出かけ、その夜は買い求めた酒肉で宴を開いて翌日を迎えた。老人が銀三両(約100g)を返そうとすると、孔萇が言う。
「この銀はお前に与えたものだ。それより、吾らを
老人は孔萇たち十二人を伴って軍営に行き、事情を伝えた。
※
「この人は
劉淵はそれを聞いて孔萇、桃豹を
さらに、関氏の
▼『後傳』「第二十三回 梁王は傅仁を遣して漢と和す」には「並びに關河、關山、關心、王通及び諸家眷を取る」となっているが、「王通」は「
※
この年、左賢王の
「
▼劉禅の子孫で侯に封じられたものは五十人余人いたと伝わる。
「叔父上のご好意は漢を思ってのことと承知しておりますが、
劉淵がそう言うと、劉宣もそれに納得して右部へと還っていった。
これより、氐羌の異民族たちはすべて劉淵を推戴するようになる。左國城には将士が雲集して糧秣は積みあがっていた。
漢の再興の兆しはすでに明らかとなり、ついに中国の恢復を始める時勢に至りつつあったことであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます