第十二回 劉璩は劉淵と名を改め郝元度に投ず
いまだに落ち着きどころはなく、心中の不安は拭えない。そこで
「吾らが家を捨てて仇を避け、
「しかも、吾らは異郷の客、流落の身です。誰も吾らを知る者はありません。たとえよい落ち着き先があったとしても、そこで主客を転じる方法も案じねばなりますまい」
劉璩の言葉に
「はっきり断言はできませんが、先主の御世には羌族を慰撫すること厚く、それより羌族は漢の徳を慕っていると聞きます。
劉璩より年長の
※
劉璩も異論はないが、懸念があった。
「齊萬年の意見が正しいと思うが、一つ難がある。旅の身にあって吾らの姓名を問う者は多く、答えないわけにもいかぬ。しかし、吾が兄弟の名は先帝(
それを聞いた
「殿下が懸念されるのであれば、改名なさればよろしいでしょう。何かお考えがありますか」
「母が吾を孕んだ時、大魚が腹中に投じる夢を見たと聞く。また、吾の掌には淵の字に似た模様があり、これは正に天意というものであろう。吾はこの字をもって名にしようと思うが、どうだろうか」
劉伯根が賛成し、ついに劉璩は名を改めて
劉淵が起ち上がって言う。
「かつて聞くところによれば、魏は羌族と
劉淵が行先を決めると、一行は旅立ちの準備を始めたことであった。
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