11月 4日 文化祭2日目:エピローグ
古城ミフユ
結局、制服の一件は校長先生への表敬訪問が一番の天王山だった。
校長先生が敢えて沈黙している間にポロシャツと女子スラックス追加案の詳細を詰めるための検討会議を生徒自治会で立ち上げて条件を詰めた。この検討会議はクラスから1名ずつ代表者を選んでもらって案について意見を出してもらった上で夏服の追加案(時間の関係でポロシャツ先行になった)夏休み前に全校投票に付して賛成多数で承認された。
夏のポロシャツは襟付の白いもので刺繍などは1カ所のみ認めるというもので市販品を使えるようにした事は重要だった。スラックスも秋からの導入に向けて続けて検討会議で取り上げてもらった。こちらも既製服を使えるようにしてコストを抑える方向性は打ち出されている。おまけで男子のスラックスも同様の規定に含めようってアイデアも飛び出してきた。
そして保護者向けアンケートでも幸いな事に生徒の意見を尊重するとの回答が多数を占めた上で学校側との正式な話し合いが行われて夏休み明けからポロシャツの着用が認められる事になった。
校長先生は大反対したふうだったけど、何故か安達先輩のいたという新聞社の方が学校紹介記事を載せたいと取材に来た事で制服追加は中央高の伝統を発展させる素晴らしい改革だというふうに持ち上げられた事で打開された。
やっぱり斎藤先生はタヌキだった。
生徒自治会の新執行部は、副会長に陽子ちゃんと加美さん、監査委員に肇くんと小夜子ちゃんになってもらった。陽子ちゃんを副会長に推したのは肇くんだった。
「おまえを止めるのは副会長でアシスト役の人が止めた方が効果的だろ?それが出来るのは俺じゃない。多分俺はおまえを弁護してしまうと思う。となると正しくあるべきとする陽子ちゃんの方が絶対向いているから」
そう言って私と陽子ちゃんを説得したのだった。
松平さんは中央高インターアクトクラブを立ち上げて部長となった。水野くんや麻野くん、渡先輩もこちらに所属して活動している。インターアクトクラブはボランティア活動について保険の加入取りまとめや災害発生時には中央高ボランティア派遣隊を募り一緒に現地へ入っている。「志願」という意味をきちんと考えてくれていて、校内での活動への協力呼びかけなど地道な活動が続いている。小夜子ちゃんも普段はそちらの活動をやっていて生徒自治会監査委員としてはいろいろと提言や苦言をぶつけてきてくれている。
秋山さんと姫岡くんは放課後、二人揃って生徒自治会室に来てくれるんだけど相変わらず秋山さんが姫岡くんに猛烈なツッコミを入れている。
秋山さんが一方的に追い回しているのか分からないけど姫岡くんとよく二人でいる風景を見かけるようになった。そういえば午前中の休み時間に秋山さんが姫岡くんに弁当を一口味見させている所も見かけたのって凄い奇跡だよね。
生徒自治会規則の改正は文化祭の運営と合わせて大村先輩との一大プロジェクトになった。女子スラックス追加・男子スラックスの既製服規定の追加と並行して進んでいて、更に文化祭運営が被ったため疲労困憊。でも文化祭には間に合わせたいという事で意見は一致していたのでなんとか乗り越えて、文化祭実行委員会を来年度スタートさせる事が出来る目処がついた。実行委員長には会計委員会副委員長が就任する事、生徒自治会長の任期は6月から翌年6月までに短縮されて、以降は文化祭実行委員会のオブザーバーとして関与する事も明文化出来た。
高校2年生の夏、神戸総合大学の深江キャンパスのオープンキャンパスに行ったりといろんな事があって充実した日々だった。そういう事も言いたいけど字数が(SNSかい!)。
11月4日。中央高文化祭はなんと今年から2日間開催が出来る事になった。連休で4日も休みだった事から学校側が校舎利用許可を出す形で事実上の延長が出来た。これは陽子ちゃんが思い付いて大村会長と共に校長先生に直談判して実現した大手柄だった。
そうして実現した文化祭「2日目」もいよいよ終わる。閉会式に向けて文化部の発表もトリの吹部の演奏が終わろうとしていた。
最後の式典となる会長引継式を前に私達は舞台袖にいた。私はPRの意味もあってブレザーにスラックスの組み合わせだった。今月から女子スラックスの着用を認める規則が発効したのだ。
反対側の舞台袖で待機している副会長の陽子ちゃんと加美さんは今日敢えてスカート着用してくれている。執行部としてはどちらでもいいという事を示す必要があったからだ(監査委員の小夜子ちゃんがスラックスなのは逆に選挙戦で公約支持してくれたからという意味がある)。監査委員として私のやる事について推したり引いたりしてくれている肇くんは男子スラックスの市販品規定に沿った柄のものを着用してきてくれていた。
「古城さん。会長任期は短くなったけど、来年の文化祭オブザーバーを含めて頑張って欲しい」と大村会長。
「はい。大仕事は大村先輩の任期中に目処がついて本当に助かりました。来年は多分、」
「加美さんが立候補するだろうし、君も彼女を応援するだろうし。対抗馬が出たら驚くね。そして新校長にどんな人がなっても一連の改正は定着する」
「対抗馬は出てくれた方がいいんですけどね。それによって私は小夜子ちゃんと知り合いになれましたし。論争も深まりますから」
「そう言える会長って早々いないよ。俺は肩の荷がやっと下りるよ。ほんと、君は人使いが荒かった。ここからは君の仕事だ。後は任せたよ」
「はい」
演奏が終わり、放送委員会の2年生委員長が私達を呼び出した。
「それでは、閉会式と生徒自治会長の引継式を行います。大村会長と古城新執行部の皆さん、舞台の方へどうぞ」
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