6月10日 模擬演習:日向肇「古城も俺が吉良のつもりでやってくれ」

古城ミフユ


模擬討議:日向肇vs.古城ミフユ

「じゃあ、俺は吉良のつもりでやるからな。古城も俺が吉良のつもりでやってくれ」

「了解」

「じゃあ行くぞ。……古城さんは制服の見直しを唱えていますが、私達在学生はその恩恵は受けられないのではないですか?」

「吉良さん、いい質問ありがとうございます。女子スラックスにしろ男女ポロシャツにしろ要件を定めて市販品を着られるように学校側には要望したいと思います。なので新しい制服規定が出来れば即時実施できると考えます。また現在の制服の標準服化については一度生徒にアンケートを取った上で多数意見であれば交渉を行いたいと考えてます」


 肇くんが眉を上げた。

「学校が交渉に乗らないとは考えないのですか?」

「私達の制服は80年代に詰襟服・セーラー服から現在のブレザーに変更されてます。中央高新聞を調べると分かりますがこれは当時の生徒自治会が動いて実現したものですので、話し合いの場についてもらえるものと思います。またそのためには保護者、生徒間の意見集約、合意形成を図りたいと思ってます」


 肇くんはOKサインをくれた。

「今の感じでいいんじゃないかな。学校も前例には勝てない。ここだってお役所の一部だからね。この言い方なら学校の顔も立つだろう」


模擬討議:加美洋子vs.古城ミフユ

「古城先輩。行きますよ」

「どうぞ」

「会長任期の見直しを提唱されていますね。文化祭は生徒自治会活動でも重視されているイベントであり、そのために会長が特別な位置付けにされてきたのだと思うのですが、古城さんの提案では会長の負担はむしろ増えませんか?」

「会長任期は6月から1年間に見直して、その分を文化祭の運営組織を見直して拡大を考えています。こうする事で年間通じた文化祭準備が行えるようになると考えています」

「でもそれで得するのは当選した人なんじゃないですか?」

「前会長が文化祭の運営について助言できるような仕組みを設ける事は考えています。だからもし私が当選した場合、来年11月の文化祭終了まで前会長としての職務に注力する事を約束します」


 加美さんは頷いた。

「古城先輩。その回答でいいと思います。当日は力強くお願いします」


模擬討議:三重陽子vs.古城ミフユ

「冬ちゃん、行くよ」

「陽子ちゃん、いいよ」

「文化祭について伺います。古城さんは文化祭の堅持という事をうたってますね?」

「はい」

「会長任期の変更と運営組織の見直しを言われてますが、それでは文化祭のあり方が大きく変わったりしませんか?」

「我が校の文化祭は生徒自治会の主導の中でクラスと文化部を中心に展示、模擬店、演技活動を行うというあり方でここまで来ています。会長は11月の1年間と言っても、最後の5ヶ月間は筆頭副会長と組んで行う事になります。現会長、前会長と実務をとりまとめる組織の関係を明確にすれば今のあり方を残したまま、新しい体制に切替える事は出来ると考えています。どちらにせよ規則改正を伴いますので改正案を詰めて生徒の皆さんの投票を経て改正が実現する話ですから、きちんと議論した上でその結果を投票に掛ける事はお約束します」

「検討期間はどの程度考えているのですか?」

「年内を目処に進めたいと思っていますが、討議内容により期間は変動するものと考えています」


 陽子ちゃんが手を挙げた。

「冬ちゃん。そこは年度内の方が良くない?結構時間掛かるかも知れないよ」

「三重先輩。延びるなら延びるで仕方ないという話は出ているので年内でいいと思います。多分年を越したら次の会長まで決まらない可能性も考えざるを得ません。事情を知る3年生が卒業して新入生が来たら話をやり直さないといけない部分もありますから」

「確かに。それは加美さんの言うとおりね」と陽子ちゃんは自説を撤回した。


模擬討議:古城ミフユvs.秋山菜乃佳

「秋山さん、行くよ!」

「どうぞ!」

「吉良さんに伺います。学食メニューの見直しを提言されていますが、どのように進められるつもりですか?」

「生徒の皆さんの意見を取りまとめて、学食側に要望書を渡すつもりです」

「吉良さん、学食側に対して相談とかされていますか?」

「そういう事は話が具体化してからでいいと思います。要望を伝える事が大事なのです……って、轟沈するね」


「それが分かったのは秋山さんが聞き出してくれたおかげだからね。ありがとう」

「秋山さんの食い意地がもたらした功績大きいよなあ」

「こら、姫岡。ほんと私の食欲観察するのはやめなさーい」

「いやいや、今のは誉めてるし」


模擬討議:古城ミフユvs.姫岡秀幸

「姫岡くん、いい?」

「どうぞ」

「吉良さんに伺います。ボランティア活動の振興をうたっていますが、ボランティアの言葉の定義、語義を教えて下さい」

「古城さん、ボランティアとは『志願』という意味ですけど」

「であれば強制的な事は『志願』に当らないという事は明らかですよね。生徒自治会での振興というのは適切ではないんじゃないでしょうか?」

「それは当らないと思います。地域のボランティアとの橋渡し、学校で組織して保険など掛けた上で取り組む災害ボランティアなどあくまでも志願する学生を助ける事が目的です。強制には当りません」


ここで肇くんが手を挙げた。

「姫岡、今の回答は向こうが想定している活動だよな?」

「そうだよ。日向」

「じゃあ、こう言ってくれ」と姫岡くんに何か入れ知恵した。そして姫岡くん側から再開になった。


「付け加えるとボランティア・センターを特別委員会かクラブ活動として立ち上げるという事も考えています」

 私は容赦せず止めの一撃を狙った質問を浴びせた。

「ではもしボランティア・センターを新組織として立ち上げた場合、その陣容はどうするのですか?」

「トップは私が務めます」

「でも、生徒自治会長との兼務は無理がありませんか?」


 姫岡くんが手を挙げた。

「松平さんをここに入れてくる可能性はあるかな?」

加美さんが答えた。

「ないと思います。あの人は副会長か監査委員をやったら生徒自治会の本務の中心になるのは見えてますから」

「じゃあ、水野?」

これは私が答えた。

「水野くんはもっとないと思うよ」

加美さんが頷いた

「私も古城先輩の意見に同感です。想定があるなら名前は出すでしょうけど、なかったら『私が責任を持ってやる』と言って話を打ち切るはずです」

「そうきたら『結局人員構想はないんですね。ありがとうございました』って言って質疑終了に追い込むかなあ」

「古城先輩、結構怖いですね」

「中身のない提案はダメだと思うよ。その事ははっきりさせたいな」

「あまり相手の退路立たないようにはして下さい。恨まれたら後々祟ります」

「気をつけるわ。加美さん」

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