6月10日 決起集会:ミアキ「妹のミアキです。お姉ちゃんがお世話になってます」
古城ミフユ
今日は家で決起集会をやる事になった。
事の起こりは選挙立候補届を出した1日の夜だったかな。お母さんから選挙終わったら頃で良いから選挙に協力してもらった子達を家に呼んでご馳走したいんだけどと言われた事に遡る。
「ありがたいけど、それなら投票日の前の週末に決起集会兼ねてやるのってダメ?」って聞いたらそれは私が決めたらいいと言われたので10日の土曜日お昼に集まってもらう事にした。
家は朝から準備でてんてこ舞い。料理の下拵えは主にお父さんとお母さんが作っている。女子の方が多いので量は?と思ったけど人数がいるから必要かな。そのせいでキャベツの千切りとか結構な大事になっていた。
「お酒飲める年齢の子達なら餃子しこたま用意すればいいから簡単なんだけどね」とはお母さん。ゼミの子を招いてやる時はそんな感じなので割と慣れてる。
問題は食べ盛りの高校生相手だって事でお父さんとお母さん、妹がこの日のために作戦を立ててくれていた。
古城ミアキ
「今日はお姉ちゃんの立候補を応援してくれている人たちを呼んで美味しいもの食べてもらうからミアキも手伝って」とお父さん、お母さんに言われたので、お買い物とか色々と手伝った。
今日はお好み焼き大会という事になった。ホットプレートで焼くのは私の役割だ。2年生に上がった時、ホットプレートでの料理はやっていいよって言われた。こう見えてもお祖母ちゃんには広島お好み焼きを教わったし、関西お好み焼きもお父さんから伝授してもらっているんだから。焼くのは任せて……と言いながらお昼代わりに焼いた試作品を家族みんなで食べた。
「ミアキ、上手くなったなあ。関西も広島も問題ないよ」とお父さん。
「これならパンケーキも大丈夫かな」とお母さん。
「ミアキ、ありがと。これならみんな喜んで美味しいって言うよ」
お姉ちゃんからもお墨付きが出た。
日向肇
12時前に古城ミフユ陣営の面々は駅前に集合した。俺と陽子ちゃん、加美さん、秋山さんと姫岡の5名。良い天気で誰も遅刻なし。俺と陽子ちゃんが案内して古城家に向かった。ご馳走になるんだから何か持っていこうねと申し合わせはしていた。みんなの性格が出そうでちょっと気になる。
秋山さんが去年のことを思い出しながら言った。
「古城さんの家って、妹さんが小学2年生で歳が離れてるんだよね。一度文化祭で学校に来てたよね?」
「うん。来てた。とっても元気な子だよね」と陽子ちゃん。
古城の家に着いた。玄関でベルを鳴らすと「はーい」という小さな女の子の元気な声が聞こえて廊下をパタパタと走ってくる音がしてドアがえいやと開いてエプロン姿のショートパンツ姿の女の子が私達の顔ぶれをさっと確認してきた。気のせいか去年より身長は高くなっている感じ。
「いらっしゃいませ!妹のミアキです。お姉ちゃんがお世話になってます。靴を持って2階に上がって下さい」
キョトンとする面々。ミアキちゃんはその様子にすぐ気がついた。
「あっ、今日は2階のベランダ、お外で食べるから靴を持って上がってくれますか」
という事で俺たちは靴を持って2階へと案内された。廊下のつきあたりにドアがあってそこからベランダというかテラスに出られるようになっていた。
古城がテラスで待っていた。
「いらっしゃい!」
「冬ちゃん、これはお土産。お家の人と食べてね」
と陽子ちゃん。みんな、持ってきたお土産を古城に渡した。
「いいのに、そんな」
って訳にはいかないよ、やっぱり。
みんなのお土産。陽子ちゃんはハンドメイドのビスケット、秋山さんはアイスクリームの詰め合わせ、姫岡は夏みかん、加美さんは追分饅頭、俺はハンドメイドのカップケーキだった。
俺と陽子ちゃんはクリスマスに呼ばれていて様子を知っているから気合い入れてきた。
秋山さんは暑くなってきたからか冷たい物(冷凍庫が空いている事をお祈るばかり)、姫岡は季節物、加美さんは日持ちがそこそこするものって感じでそれぞれの性格による配慮とか入っていて面白い。
秋山菜乃佳
古城さんの家って凄いなあ。テラスがあってそこで食事会出来るってちょっと憧れちゃう。パラソル机や組み立て式のテーブルが出ていて、椅子も出ていた。
そしてご両親とミアキちゃんが出してくれた料理はなんと関西&広島お好み焼き。ミアキちゃんがホットプレートで広島お好み焼きを、ご両親がガスコンロで関西お好み焼きを焼いてくれた。これがどちらも美味しい。両方ともお代わりもお願いしてしまった。お好み焼きを合計4枚も食べるだなんて。
「お代わりいる人は言ってね」と古城さんのお父さん。
『はーい』をみんな食べるのに熱中しつつもなんとか返事していた。
「ほんと秋山の胃袋の大きさは謎」と姫岡が言ってきたのでとりあえず蹴っておいた。
「美味しいし私は朝練とか出てるんだから、あんたといっしょにするな」
「それは悪かった」
と言いながら姫岡も結局お代わり頼んでるし。
加美洋子
古城先輩の料理の上手さ、美味さは家の環境の賜なんだろう。妹さんの焼く広島お好み焼きも美味しい。私もついついお代わりの広島お好み焼きを頼んでしまった。お腹がはち切れそう。お好み焼きが合計3枚も食べるなんて計算外だ。
「加美さん、美味しい?」
古城先輩に聞かれたので思わず首を縦に二回も振ってしまった。美味しいです、美味しいです。
周りを見たら結局みんな3枚〜4枚ものお好み焼きを頂いていた。
三重陽子
食後に冬ちゃんのお母さん謹製のコーヒーを頂いた。そしてミアキちゃんはホットプレートをさっと拭くとミニパンケーキを焼き始めた。
「冷えても美味しいと思うから、コーヒーと一緒にどうぞ。アイスクリーム、フルーツトッピングして食べて下さい」
デザートも完備。古城家の恐るべきおもてなし。がんばらなきゃ。
「ミフユ、これから会議だよね。私達は下に戻ってるわ。皆さんゆっくりしてね」
「皆さん、美味しかったですか?」ってミアキちゃん。
『美味しかったよ。ごちそうさまでした』とみんなが口々に返した。
そういうとご両親とうれしそうなミアキちゃんは階下に降りていった。
みんな、まったりしている中でミアキちゃんのミニパンケーキにアイスとフルーツを盛って少し食べながら明日以降の最後の追い込みに向けた話し合いが始まった。最初に報告があったのは冬ちゃんだった。
「金曜日、無事大村会長と話が出来たよ。中立維持って言われた。ただ3年生はイーブンだし、こちらが若干欠点が少ないから少し優位ぐらいじゃないかって言われた。だから討論会が天王山になる」
しっかりミニパンケーキにアイスとフルーツをのせて食べようとしていた加美さんが手を止めて分析した。
「3年生がイーブンないし若干有利なら討論会の結果で勝負はつくと思いますから文化祭実行委員会構想をもう少し詰めた方がいいかもです」
「誰か吉良さんの役をやってシミュレーション兼ねた練習するってどう?」
このアイデアは秋山さんが出してきた。バレーボールの練習とか仮想敵を設定する事があるんだという。誰がいいかな?となったけど結局全員試してみる事になった。5人組み手になるから実は大変なのは冬ちゃんだった。
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