6月 6日 面接3:三重陽子「組み合わせたらどうなるの?」
日向肇
体育館1階の学食にある自販機コーナーで二人でお茶のペットボトルを飲みながら話をしていたら古城から俺たち二人宛にメッセが入った。陽子ちゃんが速攻でリプライを返した。
古城:ラブラブ中の所、悪いけど『事務所』に戻ってきてくれないかな。加美さんがチームに入ってくれるって言ってくれました。
陽子:了解。別にラブラブなんかしてないけどな。真面目に選挙の話をしていたのに。冬ちゃんのいけず。
俺はホッとした。
「二人の話がどうなるかってちょっと気が気でなかったけど、思った以上に気が合ったのかな。加美が敵に回らずにこちらについてくれる事で1年生に働きかけが出来るというのは大変意義がある。うん」
「肇くん、冬ちゃんの事を焦土戦術上等な奴ってよく言うけど、強権上等な猛犬な加美さんと組み合わせたらどうなるの?」
「陽子ちゃん。それは言わないで。心配してない訳じゃないからさ。俺たちの仕事の一つはそうならないように手加減させる事だとは思ってるよ」
この日、下校前に選挙管理委員会に行くと加美さんを古城ミフユ陣営の選挙運動員として登録する届け出をした。本当は隠したい所だけど1年生のクラスで選挙に関わる活動をするにはこの運動員届は規則上義務になっていた。
そしてこの届け出により学校側と吉良小夜子陣営がこちらの動きを知る事になった。
水野がふらりと職員室にやって来た。
「何か動きがあったのか?」
「はい。古城さんの方で1年の加美さんを選挙運動員に登録してきたので先生の耳に入れておこうと思いまして」
「あいつか。中学時代の噂は聞いている。分かった。ありがとう」
生徒自治会長の大村にも確認したら事実だった。以前、吉良陣営に紹介するか迷って見送ったのはこの子の事だった。
今、教頭先生に言えば何故そんな人材を向こう側に取られたのだと言われるのが見えていたので教頭先生への報告はせずにおいた。もし教頭先生が独自に知って聞かれたら、その時初めて知ったと言えば良い。
宮本先生のアドバイスで1年生攻略のための選挙スタッフを探していた。加美さんの名前は彼女の同中だった水野くんから名前は出ていたけど「乗っ取られるよ?」という警告で入れるなという意味だった。
この情報が入った時、改めて吉良さんが水野くんを問いただした。
「加美さんってどんな子なの?」
「日向も同中なんだけど、あいつが生徒会の副会長を1〜2年生の任期の時にやっていて2年生の時に1年生の加美さんがしきりにアタックしていたよ」
「ん?恋愛話?」
「違う。俺と日向が2年の時の会長選に出て欲しいって話だったらしい。結局日向は断り続けていて口も聞かないように見える関係になってたから驚いた」
「加美さんってそれだけ?」
「加美さんは2年生になった時の生徒会選挙で会長に立候補して学校側に近い秀才を蹴落としたよ。きれいさっぱりね。立ち会い演説会を要求して中身のない公約を叩きつぶして泣かせた。そして加美さんは規則見直しを公約にして実際風紀関係はシンプルになったよ。そのせいで生活指導の先生はどっか飛ばされたとか噂もある」
多分小夜子ちゃんは水野くんに加美さんの話を聞いた時にもっと問いただすべきだったと後悔していたと思う。別に加美さんが参加しなくても向こうの陣営に入らないように話を出来たかも知れない。水野くんのこういう情報の解釈の仕方には気をつけた方が良さそうだ。
こちらの1年生対策は私の同中の後輩の1年生で生徒会長をやっていた麻野龍也くんにお願いする事になった。人は良いんだけど加美さんの辣腕ぶりを聞くとこれでは足りないかも知れない。
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